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2020/5/28 18:30

いま世界が欲しがる「イスラエルテック」の注目企業3社とは?

イスラエルのスタートアップ企業が持つ大きな強みは、グローバル企業の新たなサービスに不可欠な「核」となる技術の開発に特化していることです。国内にマーケットを持っていないことが、大手に先駆けて技術開発にフォーカスできる力を生み出すのかもしれません。AIはもちろん、モビリティやサイバーセキュリティなどの各分野で、グローバル企業が進める新規事業に必須な“川上”部分に当たるテクノロジーを武器に躍進しています。

↑イスラエルテックが世界を支配する?

 

本記事では、イスラエルで日本企業との橋渡しやコンサルティングを手がける(株)イスラテックの加藤清司氏に取材した内容をもとに、イスラエルの現状や注目されているテック分野、新たなテクノロジーを持つスタートアップ企業などについて3回にわたりレポートしています。最終回の今回は「新たなテクノロジーを開発したスタートアップ企業」をテーマに、現在注目を集めている企業を紹介します。

 

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1: 自動運転車の重要なチップを作る「Mobileye」

モビリティ分野のスタートアップが開発する新たな技術も、多くのグローバル企業から注目を集めています。なかでもインテルが買収したMobileye (モービルアイ)は、アルゴリズムを発展させ、自動運転の核となる画像認識関連技術を開発しました。衝突事故の防止や軽減につながる技術であり、関連する特許もしっかりと手中に収めています。

 

自動運転がメジャーになる2000年代頃から大手に先駆けて必要な特許を取得していたため、いわば自動運転技術の川上となる部分をしっかり押さえていることになります。大手自動車メーカーはMobileyeが開発したチップがないと自動運転車を製造できないことから、インテルは2017年に特許も含めて153億ドル(1.7兆円)という巨額を投じてMobileyeを買収しました。

 

インテルはこのチップの製作などのためにイスラエルにおよそ1万人を配置しており、世界の80%以上の自動運転車にこの技術が搭載されています。Mobileyeを買収したことで、インテルは自動運転車の分野で重要なプレーヤーとなりました。

 

2: Amazonのドローン配送に欠かせない「Annapurna Labs」

モビリティ関連の技術開発は自動車に限ったことではありません。2015年にAmazonが買収したAnnapurna Labs(アンナプルナ・ラブズ)というイスラエルの半導体企業も、モビリティ関連の注目企業です。

 

Amazonが開発した機械学習のための専門チップなどにもAnnapurna Labsの技術が使われているようですが、Amazonの次の狙いはドローン配送とみられます。世界各地で本格的なドローン配送を実現させるために、Annapurna Labsが新たに開発したチップを搭載しようとしているのです。

 

クルマの自動運転とは異なり、ドローンにはさほど高精度なスペックは求められません。ある程度のスペックのチップセットを効率的に製造することが、Amazonの大きな目的といえるでしょう。例えば、100万台クラスのドローンを一定のレベルでリモート制御でき、顧客の手元へ荷物をきちんと届けることが考えられます。

 

3: サイバー攻撃から国を守る「Illusive Networks」

イスラエルはその地政学上の問題から、常にサイバー攻撃を受けているため、セキュリティに関する意識が世界一高いといわれています。イスラエル国籍以外の人はすべて“クロ”と判断する性悪説に基づいていて、仮に新型コロナウイルス感染者が1人でも出たら、その国からの入国を全面禁止にするというような厳しいリスク対応が当たり前になっているのです。

 

このような背景のもと、注目されているセキュリティ企業の1つに、新しいタイプのサイバー攻撃対策ソリューションを開発したIllusive Networks(イリューシブネットワークス)があります。

 

Illusive Networksが提供するソリューションは、偽IP情報の埋め込みなどでネットワークを巨大な迷宮にすることにより、重要情報の漏えいを防ぐ仕組み。膨大な罠を張り巡らせることでハッカーを騙して時間を稼ぎ、侵入を検知・分析して進入路を素早く塞ぎ、攻撃対象を隔離するという対策を迅速に行うことができます。

 

イスラエルでは攻撃されることが大前提にあるため、セキュリティに対する企業の考え方やアプローチが他国とは大きく違います。1か所だけでなく国全体をトータルで敵からどう守るかという強い意識が、特徴的なセキュリティのスタートアップ企業を生み出す土壌になっているようでしょう。

日系企業の関心度も最高レベル

↑イスラエルには日本企業も熱い視線を送る

 

イスラエルにはこれだけの最先端技術が集結しているものの、それらを活用できるマーケットが存在していません。そのため、例えばサンフランシスコに本社を置くUberのようなサービス領域ではなく、チップなど川上領域の技術開発が核となっています。ここを押さえておくことは大きな強みであり、AI、モビリティ、セキュリティなどの各分野において、世界に市場を持つグローバル企業による買収は今後も加速しそうです。

 

最後に、グローバル企業が求めるほとんどの技術が集まるイスラエルへの進出については、まずは足を運びイスラエルという国を理解することが大切といえます。危険なイメージを抱いているかもしれませんが、外国人への性悪説が翻りいったん信用してもらえれば、意外に親しみやすい国民性が特徴です。

 

現在、イスラエルへの日系企業の関心度は過去最高レベルに達しています。現地では、さまざまなカンファレンスが開かれているので、興味がある分野のイベントに参加してみるといいでしょう。イスラエルでは物事を決めるスピードが日本とは比較にならないほど速いため、スピード感を持って対応することは必須ですが、その後の継続関係は保ちやすいといいます。

 

また、イスラエルの人々は交渉がとても上手なので、失敗を恐れず交渉を重ねながら経験値を積んでいくことが必要。まずは現地の空気を吸い、イスラエルのよさを知ることから始めてみてはいかがでしょうか?

 

kato

加藤 清司 Kato Seiji

(株)イスラテック創業者・代表取締役。2009年にイスラテックを設立し、イスラエルのハイテクベンチャー企業と日本企業の橋渡しに従事。現地への進出を探る日本企業に向けて情報提供やコンサルティング、調査レポート作成、研修・セミナーなどを行う。現地視察同行や契約・交渉代行も実施し、現地企業の選定支援やマッチングも手がける。約15年にわたる経験を生かした目利き力や幅広い現地ネットワークを通じた交渉力などを有する。
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