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2020/9/1 18:45

今、日本からできることを! 一時帰国中の海外協力隊員が活躍――赴任国に向け、リモートで支援【JICA通信】

日本の政府開発援助(ODA)を実施する機関として、開発途上国への国際協力を行っているJICA(独立行政法人国際協力機構)に協力いただき、その活動の一端をシリーズで紹介していく「JICA通信」。今回は、新型コロナウイルスの影響により一時帰国を余儀なくされているJICA海外協力隊の隊員の活動について紹介します。

 

中断された活動への無念さ、赴任国への思いなどから、多くの一時帰国中隊員が「今、できることから取り組もう!」と日本から現地に向け活動を始めています。本稿では、日本から赴任国に向け、インターネットを通じて支援を始めた隊員の姿を追います。

 

カンボジア:「手洗いダンス動画」で感染症対策

「病院職員だけでなく、患者さんにも広く公衆衛生の意識が高まってきたタイミングでの帰国で、文字どおり後ろ髪を引かれる思いでした」

 

残念そうに語るのは、看護師隊員としてカンボジアへ派遣された近藤幸恵隊員です。看護師歴13年の近藤隊員は、カンボジア南部のシハヌーク州立病院で、おもに感染症対策と病院経営の5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)・KAIZEN活動の協力に携わりました。

↑赴任先の病院で、患者さんやその家族に紙芝居を使うなどして手洗いの重要性を説明する近藤隊員

 

↑同任地の教育隊員の協力も得て、小学校での出前授業も行なっていました

 

そんな近藤隊員が一時帰国後、取り組んだのは、手洗い啓発ダンス動画の作成です。同時期にカンボジアに派遣されていた看護師隊員と小学校教育隊員の3人で制作にあたりました。

 

「この動画は新型コロナウイルス感染症COVID-19対策も含めた公衆衛生改善支援WASH(=Water, Sanitation, and Hygiene) の一環です。カンボジアの人々に馴染みのあるダンスをアレンジすることで、気軽に手洗いの必要性やタイミング、具体的な手洗い法などを知ってもらい、楽しみながら習慣にしてもらうことを目指しています」

 

まず、看護師隊員が手洗いダンスの見本動画を作成。その後、カンボジアに派遣されていた一時帰国中の隊員やJICAカンボジア事務所職員、現地カンボジアの方々など、たくさんの人々に出演協力を依頼しました。日本に戻っても、カンボジアとのつながりを大切にして、動画の制作を進めました。

 

完成した動画は、FacebookやTwitterなどに投稿し、JICAカンボジア事務所や隊員、配属先の人々などに積極的にシェアしていく予定です。

↑手洗いダンス動画の一場面。動画編集は、同じカンボジアの小学校で体育教員として活動していた隊員が担当。カンボジアの皆さんの目に留まるよう、カンボジア国旗の色のイメージで画面レイアウトを工夫しています

 

↑手洗い動画の制作は、同僚隊員やJICAカンボジア事務所とオンライン会議で進めています(画面左下が近藤隊員)

 

「一時帰国後も現地病院スタッフと連絡を取っています。今回、インターネットを活用してリモートでも支援ができることに気づきましたが、オンラインだけでは現地の文化・習慣を肌で感じることは難しいと思います。やはり、相互理解は現地に住むことでより深まり、現場での体験が自分の視野を広げ、考え方も豊かにしてくれると改めて感じました。機会があれば、また海外で活動できればと考えています」と、近藤隊員は語ります。

■完成した動画はこちら↓

手洗い啓発ダンス動画

手洗いの大切さを説明

 

メキシコ:現地食品メーカー向けに品質管理のセミナー動画を作成

「NPO法人メキシコ小集団活動協会(AMTE)のホームページに掲載するオンラインセミナー動画を制作しています。食品の安全・安心を担保するHACCP(注)に基づいた食品の品質と衛生管理に関する内容です。昨年10月、メキシコの全国小集団活動大会で特別講演をした際、知り合ったAMTE事務局のリカルド・ヒラタ氏にいろいろアドバイスをいただきながら作っています。メキシコの皆さんに活用してもらえると嬉しいです」

 

こう話すのは、食品メーカーを定年退職後にJICA海外協力隊に応募し、2018年10月から2020年3月までメキシコの職業技術高校(CONALEP)ケレタロ州事務所で、日本式の5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)の導入と定着に向けた活動を行っていた入佐豊隊員です。

(注)Hazard Analysis and Critical Control point:「危害分析重要管理点」=世界中で採用されつつある衛生管理の手法。最終段階の抜き取り検査ではなく、全工程を管理する。日本でも食品関連事業者は2020年6月から義務化となった

↑セミナー動画のリハーサルの様子。入佐隊員(写真左)が作成した食品安全の資料を画面に写し、日本語で講義。スペイン語訳をボイスオーバーで入れます

 

「同じメキシコ派遣のシニア海外協力隊2人とともに、オンライン会議を行いながら、それぞれの職務経験を活かしてセミナー動画を作成しています。いつもながら、スペイン語によるコミュニケーションには苦労しています」と苦笑いを隠さない入佐隊員。「でも、メキシコの方々の人懐っこさや陽気さにはいつも助けられます」と微笑みます。

 

陽気でポジティブな人々に囲まれ、入佐隊員はCONALEPケレタロ州事務所での活動に取り組み、5S活動の現地推進メンバーを募り、いよいよ本格的に実施内容や改善点などを出し合おうとする矢先に、まさかの一時帰国でした。

↑CONALEPケレタロ州事務所が管轄する職業技術高校で、5Sの講義を行っていた入佐豊隊員

 

↑5S委員会の普及活動の様子(サンファンデルリオ校)

 

「軌道にのりかけた5S活動がストップしただけでなく、職業技術学校も休校となってしまい残念です。でも、ケレタロ州事務所が管轄する4つの職業技術高校のうち3校には私の専門である食品科があるので、AMTE向けのセミナー動画が完成したら、それを高校生向けにアレンジできないか、あれこれ検討しています」

↑毎週1回オンライン会議でセミナー動画の進捗を相談するメンバー(写真左下が入佐隊員)

 

初めてのセミナー動画作りに戸惑いながらも、任国メキシコに思いを向ける入佐隊員。道半ばで一時帰国せざるを得なかったシニア海外協力隊たちの新しいチャレンジは、これからも続きます。

 

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