近年、宇宙開発はビジネスとして広がりつつあり、NASAは宇宙研究の一部を民間企業に委託するようになりました。このトレンドの新しい事例が、2024年までに月への有人飛行を目指す「アルテミス計画」での民間企業の参入です。このなかでNASAは月の石を買い取ることを発表しました。
先日NASAが発表したのは、月の表面にある石などの採取を民間企業に依頼するミッション。月の表面は、砂のような細かい粒子や岩の破片などで覆われています。その粒子や岩の破片などを採取し、採取場所のデータと一緒にNASAに提供するという内容です。採取する量はわずか1.8~18オンス(51~510グラム)。さらにミッションは2024年までに行うことが求められ、採取した岩の破片などの所有権はNASAが有することになります。
約500gの採取で150~260万円
このミッションを請け負う企業は、全世界から少なくとも2社が選ばれる予定。NASAは報酬として1万5000~2万5000ドル(約157~262万円)を用意しています。契約企業に選ばれると10%、機器の打ち上げ時点で10%、残りの80%は採取データを提供したときに支払われるとのこと。
月の粒子などを採取して解析を行えば、先日明らかになった「月が地球の影響でサビているかもしれない」という研究に結びつくなど、さまざまな宇宙の解明につながるものと考えられます。そして宇宙ビジネスを進める民間企業のなかには、月面の粒子や岩を採取し、それをビジネスにつなげようと考えている企業もあるかもしれません。
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今回のNASAのプロジェクトには、そんな宇宙ビジネスを活性化させる狙いがあります。NASAのジム・ブライデンスタイン長官は「企業のなかには、NASAに提供する18オンス以上の量を採取して、NASA以外に売るかもしれない」と述べたそう。人類初の有人月面飛行となった、1969年~1972年のアポロ計画では、およそ382キログラムもの粒子や岩などが採取されたとか。それだけ、月の岩は貴重な研究材料になるものということ。だからこそ、NASA以外に宇宙ビジネスに参入する企業が月の表面を採取し、それを販売するビジネスがこれから盛んになっていくのかもしれません。