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2020/11/6 6:09

「ペット可」の物件検索数が140%も増えたけど……。イギリス「ペットブーム」のオモテとウラ

イギリスでは多くの家庭がペットを飼っていて、ペット数も年々増える傾向にあります。ロックダウン期間中はこのペットブームにさらに火がつき、新しいペットを求める人たちが続出。ペットに適した住環境を求め、引っ越しを考える人も急増しました。本稿では、そんなイギリスのペット動向についてレポートします。

 

子犬の価格が急騰

↑聞いて、聞いて! ぼくの価値が急上昇しているんだって

 

イギリス人は動物好きで、約40%の家庭がペットを飼っているといわれています。1番多く飼われているのは犬で、次は猫。イギリスにはペットを家族の一員として考える習慣があり、ペット数は年々増える一方でしたが、ロックダウンによって前代未聞のペットブームが起こりました。ペットケア・ブランドのボブ・マーティン社は、ペットの需要が普段の約10倍も増え、オンラインによる検索数が急増したと述べています。なかでも子犬を求める人が目立ちます。

 

動物レスキューセンターのケンネルクラブによると、犬を購入することができる有名なサイトのひとつである同クラブのホームページへのアクセスが、今年4月時点で昨年度の2倍以上にのぼったとのこと。アドプション(保護譲渡)コーナーへのアクセス数が6倍も増えたという動物慈善団体もあるなど、アドプションが盛んなイギリスならではの現象も見られます。

 

その一方で、ペット業界はこうした需要の高まりに追いつけず、子犬価格が急騰しました。現在、子犬の平均価格は1900ポンド(約26万6000円)で、この数字は、ロックダウン開始前の約2倍です。

 

さらに人気の種類になると、3000ポンド(約42万円)を下りません。最近、BBCが発表した「子犬の価格上昇率トップ10」によれば、たとえばコッカースパニエルが184%増えて2200ポンド(約30万8000円)、コッカプーが168%増えて2800ポンド(約39万2000円)、ボーダーコリーが163%増えて1000ポンド(約14万円)となっています。

 

特に注目したいのは、キャバリアーキングチャールズスパニエルとプードルの雑種であるカバプーの人気です。育てやすい犬種といわれていることもあり、今年になって需要が一気に高まりました。価格は従来の900ポンド(約12万6000円)から2800ポンド(約39万2000円)へと、3倍以上に跳ね上っています。高額ではありますが、購入の順番待ちをする人たちが通常の4倍へと増えており、登録者は約400人もいるそうです。

↑一躍人気者のカバプー

 

ペットを飼える家がほしい!

急激なペットブームの背景には、やはり外出自粛に起因したストレスや寂しさなどがあるようです。

 

ペットはストレスや寂しさを軽減してくれるとして、イギリスでは心理セラピーにも長年使われてきました。特にステイホーム時間が増えた自粛期間中ともなれば、ペットとの触れ合いを望むのは当然といえるかもしれません。そのほか、この期間にペットを飼う理由として、「ペットオーナーになるという夢を実現するチャンスが到来した」「ペットのトレーニングに注力できる」などの声が挙がっています。

 

ペットの世話をしたり、触れ合ったりすることは、動物との絆を強め、飼い主自身も充実感や幸福感を味わうことができます。ペットフードや訓練時に与えるご褒美フードの販売数も伸びていて、なかでもミレニアム世代と呼ばれる20~30代の若者たちはご褒美やペット用アクセサリーの購入に熱心だといわれています。

↑ハイタッチ!

 

地元メディアによれば、ロックダウン中にペットが飼える物件を探したイギリス人は数え切れないほど多くいたそう。ロックダウン開始から5月4日までの約2か月間で、ペット可の物件検索数は140%も増え、賃貸物件に住む人の3分の2以上がペット可の物件を検索したといわれています。特に、犬や猫を飼いつつ、広いワーキングスペースを確保できる物件に人気が集中。このトレンドはロンドンやマンチェスターといった都会で顕著に見られます。また、ペットのスペースを確保できる庭付き1軒家の検索数もロックダウン前と比べて200%上昇。この需要に応じ、イギリスにおけるペット可の物件数は3月以降38%も増えました。

 

動物を飼うということは?

しかしその一方、加熱するペットブームの裏側では不法行為や犯罪が増えています。国内における子犬の供給が追いつかず、外国からの不法輸入や複数回の妊娠を強要する悪質なブリーダーが増加。購入の際には販売主のところを実際に訪問することが推奨されていますが、コロナ禍のため消費者はオンラインを好み、そこで悪質な販売が目立つようになりました。

 

別の問題は、ペットの飼い主がオーナーシップを勝手に放棄してしまうこと。これについて、大手慈善団体のRSPCAはペットの衝動買いなどについてメディアを通じて注意を呼び掛けています。オーナーシップの途中放棄により動物がストレス状態に陥ることを心配し、アドプションを一時的に停止するときもありました。

 

途中放棄の防止策として、ペットを購入する前にペットレンタルを勧める慈善団体もあります。レンタル期間を設けることで、ペットとの相性や飼い主としてのルーティン作業、オーナーとしての意志を確かめることができるという利点が挙がっています。

 

外出自粛が続き、テレワークが増えているなか、動物や自然との触れ合いは私たちに活力を与えてくれ、不安やストレスを和らげてくれます。ペットの購入を検討している人は、イギリスのペットブームがどんな問題をもたらしたのかも真剣に考えるべきかもしれません。

 

執筆者/ラッド順子