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2020/12/14 16:00

「天空の鏡」といわれるボリビアのウユニ塩湖で、日本の知見を活かし持続的な観光開発を進める【JICA通信】

日本の政府開発援助(ODA)を実施する機関として、開発途上国への国際協力を行っているJICA(独立行政法人国際協力機構)の活動をシリーズで紹介していく「JICA通信」。今回は、ボリビアを代表する観光地ウユニ塩湖で進む、日本の廃棄物管理の知見を活かした持続的な観光開発について取り上げます。

 

この活動に中心となって取り組むのは、JICAの課題別研修でコンポスト(堆肥化)と廃棄物管理を学んだ帰国研修員たちです。ボリビア各地に点在する彼らはグループ「ECO TOMODACHI」を結成し、現地の行政機関、民間企業やNPOなどと協力して、ごみの削減や衛生環境の改善などを図っています。

↑空と塩湖が一体となるボリビアの観光名所ウユニ塩湖

 

↑ボリビアの帰国研修員グループ「ECO TOMODACHI」のロゴマーク

 

現地の観光事業者とペットボトルごみの削減を目指す

ボリビア有数の観光地であるウユニ塩湖周辺は、標高3000メートルを超える高地にあり、ごみ処理能力に大きな課題を抱えています。ほとんどのごみは分別も熱処理もされないまま集積所に投棄されており、悪臭や土壌汚染を招くのはもちろんのこと、ビニール袋やペットボトルといった土中で分解されないプラスチックごみが周囲に散乱している状況です。

↑ラパス県観光地でのごみ拾いを実践するECO TOMODACHIのメンバー

 

そのようなウユニ塩湖周辺の環境改善に向けて、ECO TOMODACHIは現地で観光業を展開するキンバヤ・ツアーと協働し、ペットボトルごみの削減のために始めたのが、観光客へのタンブラー配布です。

 

ウユニ塩湖は標高が高く紫外線が強い場所なので、ツアー参加者にはペットボトル入りの水が渡されていました。タンブラーを無料配布し、ツアーバス内で飲料水の提供サービスを実施することで、ペットボトルを観光エリアに持ち込む必要がなくなり、ペットボトルごみの発生を抑えることができます。

 

キンバヤ・ツアーボリビア代表のロマイ・ウェンディ—さんは、2019年にECOTIOMODACHIメンバーから「観光地をよくする3R」研修を受けました。「ウユニ塩湖周辺の環境改善に向けてできることを模索したとき、ECO TOMODACHIに相談を持ちかけました。ラパス県観光ガイド協会やJICAも含めた意見交換会など重ねて、2019年に観光客が持ち込むペットボトルごみの削減という目標を設定し、タンブラーのプロジェクトを開始しました」と語ります。

 

タンブラー配布後の観光客の反応や使用状況などをみながら、改善を加え、5か月間のパイロット期間で1,080本相当のペットボトルごみを削減することができました。

↑配布したタンブラーを手に、セミナーでキンバヤ・ツアーの3Rを紹介するロマイ・ウェンディ—さん(写真左)とウユニで観光客に配布されたタンブラー(写真右)

 

キンバヤ・ツアーではこのウユニ塩湖の成功例をもとに、ボリビアのみならず、メキシコからチリに至るツアーにもタンブラー配布を導入していく予定です。コロナが収まり、観光事業が再開されれば、1年間で12,000本相当のペットボトルごみ削減を目標に掲げます。

 

ウユニ塩湖の衛生状況改善に向けて

ウユニ塩湖周辺の経済は、観光業を中心に成り立っています。しかし、下水処理施設が不十分なため、観光地でありながらトイレは慢性的に不足しており、このままでは観光客の増加が現地の生活環境の悪化につながりかねない状況です。持続的な観光開発のため、トイレ設備の改善は、喫緊の課題です。

 

「通常であれば、簡易トイレなどを設置し、タンクを定期的に最終処分場に運んで処理する方法が取られますが、この地域での実施は難しいです。そのため、トイレを設置した場所で、排泄物の最終処分までを行う方法を考えなければいけません」と語るのは、ECO TOMODACHIのヴィア・ホルヘさん(2010年JICA帰国研修員)です。

 

「富士山のトイレ問題を解決する日本企業の活動をインターネットの記事で読んだことをきっかけに、排泄物を悪臭なく固化できる携帯トイレ技術を使って、堆肥化を検討できないかと考えました。ウユニでは、観光業の次に重要な経済活動に、キヌア生産があります。トイレ問題の解決と同時に、キヌア生産も発展させられることができれば、極めて効率的な循環が実現できます」

 

そこで目を付けたのが、災害用・介護用の携帯トイレなどを開発販売する日本企業エクセルシアの開発した処理剤。無臭効果と排泄物を固める効果があり、使用の際の安心感を高め、排泄物の安全な取り出しを可能にします。「この技術を、ウユニの未来に活かしていきたい」とヴィアさんは語ります。

 

エクセルシアは、JICAが開催する中南米セミナーをきっかけにボリビアの現状を知り、この取り組みに大きな可能性を感じています。エクセルシアの足立寛一社長は「トイレ状況の改善は、生活の安全や質の向上に直接的に関わります。当社の技術が、世界的な観光地の持続的な発展に貢献できると考えています。先進的なエコ事業にしていきたいですね」と抱負を語ります。JICA事業としての展開を視野に入れ、ECO TOMODACHIとエクセルシアの協働作業が始まっています。

↑女性登山家サンヒネスさんに携帯トイレを渡してテスト使用の協力を依頼(写真左)。ECO TOMODACHIのセミナーで携帯トイレの使い方を紹介するエクセルシア足立社長(写真右)

 

多岐にわたるECO TOMODACHIプロジェクトの成果

ECO TOMODACHIは、ウユニ観光地域以外でも、JICAで学んだ日本のコンポスト(堆肥化)技術を活かしています。サカバ市(コチャバンバ県)、サマイパタ市(サンタクルス県)、ラパス市(ラパス県)では、高倉方式のコンポストを生産。2019年には、JICAと日系企業ER/Ikigaiとともに高倉式コンポストが学べるアプリ「COMPOCCHI」を開発し、ボリビアの廃棄物処理技術の発展を支えています。

 

JICAボリビア事務所の渡辺磨理子職員は、「ECO TOMODACHIのメンバーとして活動する帰国研修員たちは、ボリビア全国に点在していますが、SNSなどを通じて日常的に情報交換を行っています。日本で得た知見を持ち帰り、それぞれがそれぞれの場所でネットワークを広げています。こうした自発的なネットワークの輪に、民間企業や行政も含めていければ」と今後の活動に期待を込めます。

↑1年に1回程度、各地のECOTOMOメンバーが集まり、コンポスト技術を共有し意見交換の場を持っています

 

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