現在ドローンを活用した「空飛ぶタクシー」が、新しい交通手段として世界各国で開発されていますが、そのほとんどの乗車定員数は少数にとどまっています。しかし、そんな前提条件を乗り越えようと国家で挑み、この分野のリーダーになろうとしている国がありました。それがイギリスで、この国では最大50人もの乗客を乗せる「空飛ぶバス」構想が持ち上がっています。
イギリス式空飛ぶバス
イギリス政府が助成する戦略的政策研究機関のUKリサーチ・イノベーションは、これからの社会を大きく変えそうな課題に取り組むために「Industrial Strategy Challenge Fund」を立ち上げ、税金や民間からの資金を使って、低炭素社会における経済成長や高齢化、AIなどの研究を行っています。
モビリティ革命も課題のひとつであり、同ファンドは4年間で1億2500万ポンド(約186億円)という予算をかけて「The Future Flight Challenge」というプロジェクトを行っています。新しい空の交通手段の開発だけでなく、無人飛行システムやサステナブルな航空ネットワークの構築という3つのプログラムから構成されるこの企画には15社が参加し、コラボレーションしていますが、そのなかでリーダー的な役割を担っているのが、イギリスの大手航空機製造メーカーのGKNエアロスペース。世界14か国に48の工場を展開し、従業員は1万7000人にのぼります。
最近、同社は新しい交通手段を発表。「スカイバス(SkyBus)」と名付けられたこの乗り物は、ドローンのように電力で垂直に離着陸が可能な電動垂直離着陸機(eVTOL)です。小型飛行機のように空を飛ぶため、クルマ、電車、バスのように地上を走る交通機関よりも、移動時間を大幅に短縮し、渋滞の心配もありません。
また世界の都市で開発が進められている空飛ぶタクシーは、乗客の目的地に合わせてさまざまなルートを飛びますが、このスカイバスは地上を走るバスと同じように、決まったルートを運航する想定で計画されています。つまり、名前の通り「空飛ぶバス」のような存在になるわけです。
環境に優しく、しかも現状の交通手段よりも便利になるかもしれないスカイバスは将来の乗り物として理想的かもしれません。しかし、このスカイバスはまだ計画の初期段階。30~50人を乗せる大型機となると、巨大なバッテリーや充電設備が必要になるのは明らか。さらに大型化によって、充電効率の悪化などが課題として持ち上がると考えられます。しかし、Co2排出量の削減は地球全体が抱える大きな問題。このような問題をどのように解決するのかをチームUKは考えなくてはなりません。はたしてGKNエアロスペースは、航空機製造のスキルやリソースを活用することができるのでしょうか?