米国では新型コロナウイルス関連の規制が撤廃された州があるなど、新型コロナウイルスが収束した後の生活に目を向ける人が増えています。周辺機器メーカーのPlugable社は2021年4月に、同国の企業経営者と幹部クラス2000名を対象にコロナ後の働き方に関するアンケート調査を行いました。その結果が公開されているので、アフターコロナの働き方がどうなっていくかを探ってみましょう。
日本でもコロナ禍でリモートワークが推奨され、実際に自宅で仕事をしている人からは、問題点はあるものの、この新しい働き方を肯定的に評価する声が多く報じられています。そんなリモートワークを歓迎するのは米国も同じ。TwitterやGoogleなど大手IT企業は恒久的なリモートワークやハイブリット型ワークを導入していますが、それらの動きを受けて、ほかの企業でも同じような取り組みが見られます。
しかし、このトレンドは経営者や幹部にとって脅威でもあります。Plugable社のアンケートで「柔軟な働き方を提供する他企業がいないかどうかプレッシャーを感じている」と答えた人の割合は87%に上りました。競合他社が新しい働き方を提供すれば、そちらに良い人材が集まる可能性があり、経営陣は他社の新しい働き方の動向に敏感になっている様子。良い人材を確保するために、セキュリティソフトやパソコンといった従業員のハード面への投資は今後、一層強化されていくと見られます。
週5日も出社する必要なし
リモートワークが進むと、社員同士のコミュニケーションや協調性が薄れることが懸念されています。そんなリモートワークの短所を補うため、社員はどのくらいの頻度で出社するべきでしょうか?「社内のコミュニケ―ションや協調性を健全に維持するために、必要な出社日数は?」という質問に対する答えは以下のようになりました。
週2~3日:46%
週1日:30%
月2~3日:15%
週5日:5%
月1日:2%
出社の必要はない:1%
従来の典型的な働き方である「週5日」と答えた人はわずか5%で、大半が「週に1〜3日程度」で良いと考えているようです。また「出社の必要はない」と答えた人は1%だったことから、リモートワークを採用しつつも、ある程度の頻度で社員が出社する必要があると考えている人がほとんどであることがわかります。
リモートワークが継続されると、オフィスの形も変わるでしょう。例えば、「リモートの社員と出社する社員の協業のために、導入予定のものは?」という質問では、回答者の50%が「ホットデスク」を挙げています。ホットデスクは、社員が共用で使えるデスクのことで、社員1人ひとりに特定のデスクスペースを決めず、その日に出社した人が自由に使えるシステムのこと。毎日全社員が出社することがないなら、企業側は全員分のデスクスペースを確保する必要はありません。米国ではテクノロジー企業の多くがサンフランシスコ周辺に集まっていますが、そこから離れる動きが加速するだろうという見方もあります。
社長と社員の心配事
経営者や幹部から見ると、リモートワークの社員がきちんと仕事をしているかどうか心配になるかもしれません。在宅勤務の社員に対する心配事として経営者は次のようなことを挙げています。
テレビ:64%
ゲーム:52%
昼寝:43%
就業開始時間に仕事を始めない:33%
不必要な外出:30%
オンラインショッピング:26%
友達や家族との長電話:26%
飲酒:24%
育児や家事がありませんが、この結果は概ねその通りかもしれません。しかし別の見方をすれば、この問題は在宅で働く人が自分自身にどの程度「完璧」を求めるのかという問題にもつながります。仕事も家庭も常に完璧を目指すことは悪いことではありませんが、精神的にツラい部分もあるでしょう。そういうときにテレビを見たり、ゲームや昼寝をしたりするのは良い気晴らしです。
リモートワークの普及により、完璧主義を見直して、仕事や生活にゆとりを持つ人は増えたそうですが、結局それは「一時的な現象だった」と論じている精神分析家もいます。むしろ、リモートで働く人の中には「これまで以上に結果が求められる」と考えている人もいるかもしれませんが、自分を追い込み過ぎるのは危険。経営者にはこの辺のマネジメントが求められるでしょう。
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