ワールド
2022/3/18 15:00

相次ぐ自然災害から地球を守るのは……なんと人工衛星!? 中米グアテマラに見た「宇宙開発」と「防災」の最前線!

「宇宙開発」「防災」。一見まったく関係なさそうに見える両者が、実は非常に深い関係にあることをご存知でしょうか?

前澤友作氏の国際宇宙ステーションへの“宇宙旅行”も記憶に新しいですが、現在、民間企業による宇宙開発事業が大きな注目を集めています。イーロン・マスク氏のスペースXやジェフ・ベゾス氏のブルーオリジンといった宇宙企業の名前は、皆さんも聞いたことがあるのではないでしょうか。

宇宙は旅行するだけのものではなく、今や地球のさまざまな課題を解決する場所になっています。今回ご紹介するのは、夜間でも悪天候でも地表の変化を観測できる「SAR衛星」(※1)を開発する、日本のベンチャー企業Synspectiveの取り組み。

気候変動の影響もあり、地球全体の課題となっている近年の自然災害に対し、人工衛星が一体どんな風に活躍するのか?

本記事では、Synspectiveの白坂成功氏と、災害に強い社会を実現するためにさまざまな研究に取り組む防災科学技術研究所・理事長の林春男氏、開発途上国への国際協力を行うJICA中南米部長・吉田憲氏の3人が、それぞれの視点から「衛星による災害リスクマネージメント」について考えてみました。

※1:SAR……Synthetic Aperture Radar=合成開口レーダーのこと。SAR衛星は、主流である“光学式”の地球観測衛星とは異なり、たとえ夜間でも、雲が出ていても地上の様子を捉えることができる。特に、SARを使って複数回地表を観測し、それぞれの「位相差」から変化を捉える技術をInterferometric SAR(干渉SAR、またはInSAR)と呼ぶ。

<この方々にお話をうかがいました!>

白坂成功(しらさか・せいこう)さん
株式会社Synspectiveファウンダー。慶應義塾⼤学⼤学院 SDM 研究科教授。東京大学大学院で航空宇宙工学修士課程を修了後、一貫して宇宙開発の道を歩む。2015~2019年、内閣府革新的研究開発プログラム「ImPACT」のプログラムマネージャーとしてオンデマンド型小型合成開口レーダー(SAR)衛星開発に従事。

 


林 春男(はやし・はるお)さん
国立研究開発法人防災科学技術研究所理事長。京都大学防災研究所名誉教授。1983年カリフォルニア大学ロスアンジェルス校Ph.D.。専門は社会心理学、危機管理。2013年、防災功労者内閣総理大臣表彰受賞。日本学術会議連携会員、内閣府・防災教育チャレンジプラン実行委員長、宇宙政策委員会・基本政策部会委員、外務省・科学技術外交推進会議委員等。「いのちを守る地震防災学」「しなやかな社会の挑戦」など著書多数。

 


吉田 憲(よしだ・さとし)さん
独立行政法人国際協力機構(JICA)中南米部部長。銀行員から青年海外協力隊員となり、中米のドミニカ共和国で2年活動したのち、帰国して1994年からJICA職員に。初の海外赴任となったブラジルで、不毛の大地だった熱帯サバンナ地帯セラードを南半球最大の農地に変えたプロジェクトなど、さまざまな国際協力に関わる。

 

「宇宙データ」がなぜ防災に役立つの? 国際協力×防災×宇宙の最前線!

JICA・吉田 憲さん(以下敬称略、吉田):防災と宇宙がどう結びつくのか、不思議に思われる人も多いと思いますが、実は今、世界中で人工衛星による“宇宙データ”の活用が盛んになっていて、中でも防災分野における人工衛星の活用が大変注目されています。

その一例がこのたび、白坂さんのSynspectiveと私たちJICAがグアテマラ共和国で行った、人工衛星で地表変化を分析し、災害対応に役立てるというプロジェクトです。

Synspective・白坂成功さん(以下敬称略、白坂):Synspectiveは「SAR衛星」を用いた課題解決ソリューションを提供する会社です。後ほどお話しますが、「人工衛星と防災」は、確かに一般的には結びつきにくいかと思いますが、これは私の長年取り組んできたテーマで、Synspectiveを作った理由でもあるんです。

吉田:JICAによる国際協力も、昔は途上国で井戸を掘るみたいなイメージもありましたが、今は「防災協力」が非常に増えています。中でもグアテマラを含む中米・カリブ地域は、洪水、地震、地滑り、干ばつなどの災害で、多くの被害が出ています。私はかつて青年海外協力隊の一員としてドミニカ共和国にいましたが、当時よりも明らかに災害の規模や頻度が増しているんですね。

中米コスタリカで起きた地滑りの様子。

防災科研・林 春男さん(以下敬称略、林):防災という言葉の意味も時代によって変遷していますが、私たち防災科学技術研究所(以下、防災科研)では「SICENCE FOR RESILIENCE(サイエンス・フォー・レジリエンス)」、日本語では「生きる、を支える科学技術」というテーマを掲げています。このレジリエンス(※2)という言葉は、最近いろんなところで聞くようになりましたね。

※2:レジリエンス=「予防力」に加え、「回復力」「弾力性」「しなやかさ」といった意味を持つ英単語。困難に際した人や組織、集団が苦難を乗りこえる力として捉えられ、近年さまざまな領域でキーワードになっている。

吉田:最近は災害が起こった後の「より良い復興(Build Back Better)」という概念が注目を集めていますね。

:まさに、そこなんですね。「防災」とは、被害を出さないことにフォーカスした言葉ですが、現実にそれは難しい。世界の災害発生件数はうなぎのぼりで、そのほとんどは風水害です。一生懸命、防災の研究をしているのに、気候変動や人口増といった複合的な理由により、災害による被害は増えている。

そんな時代にあって、防災分野では「災害リスクの低減」が世界共通のテーマです。防災科研では「自然災害の被害を抑止する」「被害の拡大を防止する」「速やかな復旧・復興を実現する」、この三つに関わる科学技術を研究しています。

災害リスクの低減には、何がいつ、どこで、どのように起こるのかを予測する「予測力」と、被害が起こらないようにする「予防力」、そして現代ではレジリエンスの観点から「対応力」、つまり起こってしまった災害をどう乗り越えていくのかが重視されているわけです。

白坂:さて、今回のグアテマラでのプロジェクトを説明する前に、Synspectiveが開発している衛星を紹介させてください。SARとは、Synthetic Aperture Radarの略で、日本語で言うと「合成開口レーダー」というものです。仕組みのことは置いておいて、SAR衛星の最大の特徴を一言でいえば、「夜間でも悪天候でも、常に地表の変化を観測できる」ということですね。

時間、天候を問わず撮像できる小型SAR衛星。通常の地球観測衛星に搭載されるカメラでは撮像できない地表の様子を観測できるのが特長。

観測衛星にもいろいろありますが、圧倒的に数が多いのが光学衛星、つまりカメラを載せた衛星です。しかし、カメラだとどうしても昼間しか見えないし、昼間でも雲があると見えないという弱点がある。これに対して、カメラではなくレーダーを使うのがSAR衛星です。衛星に搭載したアンテナから地球に向けて電波(マイクロ波)を放射し、反射して戻ってきた電波を測定します。電波なら雲も透過できますし、太陽光も必要ない。

:衛星やドローンを使って、「触れずに調べる技術」はリモートセンシングといって、防災の世界ではもはや欠かせない概念ですね。それに加えて夜間でも、雲の多い悪天候でも地表を観測できるSAR衛星の特性は、防災活用において非常に有効性があります。

白坂:はい。私はいわゆる“宇宙村 ”にずっといた人間です。それで宇宙開発って長年、国のお金でやってきたんですね。災害に対応するためという名目で技術開発をしてきた。ところが、2011年の東日本大震災のとき、日本の宇宙開発で作ったものの多くが使えなかったんです。

「災害対応のため」といってお金を使ってきたのに、いざ大きな災害が起きたときに活用しきれなかった。そのことに対して、私たち宇宙開発に携わる人間は大変強い課題感を持ちました。そこで2014年にImPACT(※3)が始まったとき、「災害時に本当に使えるもの」を作ろうという強い意志を持って始めたのが、私がプログラムマネージャーをつとめた合成開口レーダー、つまりSARの技術開発です。

※3:ImPACT=正式名称は「革新的研究開発推進プログラム ImPACT」。実現すれば産業や社会のあり方に大きな変革をもたらす科学技術イノベーションの創出を目指し、内閣府によって創設された。

吉田:震災がきっかけで、ImPACTの研究開発対象にSAR衛星を選ばれたのですね。震災時に「活用しきれなかった」というのは、どういった理由なのでしょうか。

白坂:東日本大震災のような広域災害では、飛行機やドローンでは観測できるエリアが限定的になるため、やはり人工衛星が必要です。ところが光学式だと、衛星がそのとき日本の上空にいないと日本の様子を写せないので、災害に対応する方たちが「見たいタイミング」で確認できなかったのです。

技術者の言葉で「分解能」といって、衛星がどの程度細かく地球上のある地点を観測できるか、という度合いですね。観測する物理的な範囲をどのくらい細かく見られるかということを「空間分解能」、どれくらいの頻度、サイクルで見られるかということを「時間分解能」といいます。

人工衛星で得た地上の情報を、いかに早く必要な人たちに届けるか。この「即応性」をターゲットに研究したのが、ImPACTでのSAR衛星のプログラムです。

:白坂さんの「災害時に本当に使えるもの」への強い思い、大変共感しました。防災に関わる現場の人間が求めるのは、災害規模や被災状況の把握です。被災状況の全容が把握できなければ的確な対応はできませんが、一方で迅速な対応が求められる。そこで早期に広域の被災状況把握に衛星を活用しようということですね。

白坂:そうなんです。その後、ImPACTでの研究成果を社会実装しようというときに、国でやるのは何事も時間がかかるから民間企業の方がよいだろうということで、Synspectiveを作りました。社名は「Synthetic Data for Perspective on Sustainable Development」の略で、持続可能な未来のために合成データを活用する、という意味を込めました。

ちなみにSARが何を「合成」しているのかというと、レーダーはアンテナの開口面が大きいほど空間分解能が高くなります。しかし、ロケット打ち上げのコスト等を考えると、衛星はできる限り小型軽量化したい。そこでSARでは、衛星が移動しながら電波を送受信し、得られた測定結果を「合成」することで、仮想的に大きな開口面を構成します。これにより、小型衛星の小さなアンテナでも高い空間分解能を得られます。

深刻な災害に見舞われるグアテマラ。SAR衛星で「地滑りが起きる場所」を察知!

吉田:中米・カリブの国々はサイクロン、台風で毎年大きな被害を受けています。さらに、地震や地滑りもあります。グアテマラのかつての首都アンティグアは、大昔に大地震に見舞われて壊滅してしまい、その街並みが残っていることから世界遺産になっている、昔からそういう災害があるんですね。

しかも入り組んだ山がちな国土で、地域ごとが分断されています。災害時のコミュニケーションに課題があり、どこに何を届ければいいのかも分からない。そこで今回、Synspectiveと一緒に、SAR衛星でさまざまな情報を取得する実証事業を実施しました。白坂さん、ここで改めて防災にSAR衛星を使うメリットを整理できますでしょうか。

グアテマラシティでは地盤変動により、塀や道路にひび割れが見られる。

白坂:光学衛星も含め、人工衛星で地表をモニターするメリットは4つあります。

【人工衛星でモニターする四つの利点】
1.人が見に行けないところを見に行ける
2.広域で見ることができる
3.点ではなく面で見ることができる
4.継続的にモニターできる

特に定点観測、つまり継続的にモニターできること。これについては、複数の衛星を連携させて一つのシステムを構築する「コンステレーション(衛星群)」というやり方で、モニターの分解能を高めることができます。

今回のプロジェクトでは、Synspectiveの提供する地盤変動モニターソリューション「LDM(Land Displacement Monitoring)」で、地盤沈下、地滑りなどの“地盤変動”を観測しました。ここでは「干渉SAR」というテクノロジーを使っています。

*対象地域(背景地図:OpenStreetMap (and) contributors, CC-BY-SA)
SynspectiveとJICAが連携して実施したグアテマラシティおよび郊外での実証実験の対象地域(上)。観測により、局所的に深刻な地盤沈下現象の全体傾向と、陥没・地すべりリスクを示す箇所を確認することができた(下)
©Synspective inc.

干渉SARでは、衛星から時間差で2回、地表に向けて電波を放射します。このとき、地盤変動があると波長が少しズレます。1回目と2回目のズレを見ることで、地表のミリ単位の変動も測定できるというものです。今回はグアテマラの街中で沈下しているところがないか、あるいは山間で地滑りが起こりそうなところはないのかなどを見ていきました。

吉田:干渉SAR自体は既存の技術ですが、Synspectiveのユニークな点に「縦の動き」「横の動き」を分割できるということがありますよね。

白坂:簡単に言うと地面に穴が開くとき、縦に沈む動きをしますが、このとき横から見ると、中心部に向かって地盤が内側に寄っていっているんですね。つまり縦と横を両方見ることで、どの辺りが沈下しそうかを予測できるんです。逆に、山になるときも、山が盛り上がる縦の動きと、周囲から地盤が集まってくる横の動きを合わせて見ることで予測できます。

そしてLDMですが、SAR衛星で得られたデータを、防災の担当者が読み取れる画面で提供するものです。いわゆるSaaS(※4)の形式で提供し、一般的なパソコンなどネット端末からアクセスできます。

※4:SaaS=Software as a Service、つまり買い切り型ではなく、利用した分だけ料金が発生するタイプのプロダクト。

 

衛星データを用いて広域の地盤変動を解析し、その結果を提供するソリューションサービス「Land Displacement monitoring(LDM)」を実証導入。継続して利用することにより、測量業務の効率化と潜在的な地盤変動リスクの早期発見が期待される。

吉田:今回のプロジェクトでは、SAR衛星により広域でデータを収集することで、グアテマラの機関が把握していなかった危険個所を3か所特定することができましたね。地表面の変動量を含めた定量的な情報に基づいて、ハザードマップを更新できるようになり、さらに従来行っていた、人による測量などの負担も、LDMの導入で大きく軽減できる見込みが立ちました。

白坂:今回行った「予測」「予防」に加え、さらに今後は災害後の「対応」にもSAR衛星が役立てばと思います。林さんには、ImPACTでまだ衛星が何もできていない頃から防災の専門家の視点でアドバイスをいただいてきましたが、現時点でのSAR衛星の評価と課題を教えていただけますか?

:今世界的に増えているのは風水害です。衛星から地表を見ようとしても雲がいっぱいあるので、光学カメラでは見えない。雲を透過して、地表の人間社会で何が起こっているのかを見ようと思うと、やはりSAR衛星が必要です。SynspectiveはSAR衛星に取り組みつつ、さらに小型衛星のコンステレーションを企画しているという意味でも大きな成果を挙げています。

そしてSynspectiveのプロダクトはとにかくわかりやすい。LDMは、衛星の専門家じゃなくても、ヒートマップなどの形で、地盤がどう動いたのか、差分がわかるように見せてくれている。やっぱり上手だなと思います。

ただ、まだまだ衛星の数は足りていないですね。SAR衛星も1基では時間分解能が低くて、災害対応では使えません。コンステレーションを組んで時間分解能を高めることが、防災分野での活用につながると思います。

吉田:実は私たちJICAでも人工衛星に注目しており、2008年から、ブラジルのアマゾン地帯における違法伐採を衛星で監視するというプロジェクトを行っています。

アマゾンは川と言ってもほぼ海みたいなもので、常に蒸気が出て、雲に覆われています。そのため日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)が開発した「ALOS」(エイロス)というSAR衛星を使いました。ブラジル環境省傘下の団体とデータ共有し、連邦警察に伝えて違法伐採者を取り締まる仕組みをつくり、一定の成果を得ています。

今回のプロジェクトで一定の手応えを得ましたので、今後の国際協力事業でも、継続的な衛星データの活用が期待できますね。

衛星ビジネスも国際協力も、点でなく「面」で捉えると大きく育つ!

白坂:我々は防災の専門家ではないので、例えば地震があったとして、どこを撮ればいいか判断がつかないんですね。そこはやはり専門性に応じた役割分担が必要なんです。そこで現在、防災科研との連携を進めています。

:僕らが衛星の専門家からデータをもらうと、いつも肝心なところが映っていない(笑)。災害を撮るなら、撮るべきタイミングで撮るべき場所を撮らなければ意味がないんですね。この「撮るべきタイミング」「撮るべき場所」をトリガリング情報と言い、それを提供できることが、防災科研が貢献できるところだと思います。

今後はコンステレーション(衛星群)の拡充で、発災時の素早い応急対応にもSAR衛星が使えるとなれば、これは非常に役立つと思いますね。

白坂:30基の衛星でコンステレーションを実現できれば、世界中どこでも2時間以内、日本国内なら平均1時間以内で撮像できます。目標はダウンロードも含めて2時間以内に、情報処理をした状態で、現場の方にお渡しすることです。

吉田:民間企業としては持続性も必要ですが、ビジネスとしてのSAR衛星事業の戦略をお聞かせいただけますか?

白坂:今はとにかくフィードバックが欲しいです。現場で使ってもらううちに、だんだんプロダクトが良くなり、他の場所で使う人たちにとっても使いやすいものになります。当社では衛星開発のチームのほかに、サービスのチームを置いています。

災害って、普通は「国」というレベル感で扱うもので、民間企業が直接売り込むのは難しい。そこで、防災科研やJICAといった公的機関に入ってもらうのですが、世界中で防災協力をしているJICAは心強いパートナーですね。

SynspectiveとJICAによるグアテマラでの実証実験の様子。

:ビジネスとしての継続性で言うと、アメリカだとこういうベンチャーのプロダクトを国がたくさん発注して買い上げるんですよ。すると企業は安心してどんどん作る。そういう循環を作ることで、アメリカでは民間企業が育ちながら、衛星技術を高度化しています。

例えばですが、日本で言うとJICA、ひいては外務省が、リアルかつ定期的にアップデートされる衛星情報を自前で持つことのメリットは大きいですよね。そういう形ができれば、日本の小型衛星コンステレーションのビジネスはグッと安定して、大きくなっていくのではないでしょうか。

吉田:ちなみに林さんに伺いたいのですが、JICAが国際協力をしているような国々は必ずしも予算が潤沢にあるわけではなく、自前の衛星を持っていない国も多いです。そうした国が予測力、予防力、対応力を強化するには、どうしたら良いと思われますか?

:実は地方自治体レベルでは、日本でも全く同じ状態なんですよ。それでも日本が防災で世界一だと言われているのは、地方自治体よりももっと大きな国や都道府県というユニットで情報を集めて、みんなに提供する仕組みがあるから。

そういう意味では日本の技術や知見を日本のためだけに行使するのではなくて、世界全体という大きな枠の中に日本の未来も位置付けるような、そんな視点が必要だと思いますね。

吉田:たしかに仰る通りですね。JICAでも、個別の課題は点としてやっていきつつ、面として俯瞰的に捉える方向にシフトしつつあります。ある国が困っているから何とかしなきゃいけないだけだと広がらず、ある意味マニアックになってしまうんですね。

白坂:ところでビジネスの話でもう一つ。今後、小型で軽量な人工衛星が増えて、安く衛星データを入手できるようになると、ユーザーのすそ野が広がり、みんながいろんな利用方法を考え付くようになります。

昔コンピュータが大きくて、スパコン(スーパーコンピュータ)しかない時代に、スパコンで家計簿をつけようと思った人はいなかったでしょう。でも、パソコンやスマホが安く入手できるようになると、家計簿に使う人たちが出てきた。衛星データが安くなれば、同じ現象が起こると思います。だからもっともっと世界中の人たちに衛星を打ち上げてほしいですね。

ビジネス的には自分たちの衛星データを独占的に使う方が良さそうですが、それって今のやり方ではない。みんながデータを使えるようにして市場を大きくしつつ、その中の一部のシェアを取る。その方が結果的に利益も増えて、自分たちのビジネスが回りやすくなるし、宇宙業界の発展にもつながると思っています。

吉田:お二人の「独占しないことで、結果的にいろいろ広がっていく」という話を聞いて、まさに我が意を得たりという気がします。

例えばチリで津波や地震があると、日本にも津波や地震が来るように、世界は全てつながっています。JICAではチリを中心に「防災人材」を2000人以上育てて、もっと増やそうと計画していますが、これはチリのためでもあり、日本のためでもあり、世界のためでもあります。点ではなく、グローバルアジェンダとして、面的に課題を解決する、あるいは多くの人に関心を持ってもらえる形にする。それが最終的にはJICAの目標である、「信頼で世界をつなぐ」ことになるのかなと思っています。

今回の、防災と宇宙という取り組みでは、特にこの考え方がしっくりきていて、今後もぜひこういった協力をやっていければと思っています。今日はありがとうございました!

 

株式会社Synspective
https://synspective.com/jp

防災科研(国立研究開発法人防災科学技術研究所)
https://www.bosai.go.jp/

JICA(独立行政法人国際協力機構)
https://www.jica.go.jp/index.html