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2023/10/5 11:15

実は欧米で少ない「フィルター付き洗濯機」、これから大変なことが起きるかも

ドラム式洗濯乾燥機を使っていると、「フィルターが目詰まりしています」というメッセージを目にすることがあります。「昨日も掃除したはずだけど……」と思いながら乾燥フィルターを取り出してみると、ほこりや糸くず、毛などがもっさりと付着しているということも。

↑新しいフィルターを付けましょう

 

それぐらいごみを捕まえるのがうまいフィルター。縦型洗濯機には糸くずフィルターが、ドラム式には換装フィルターと排水フィルターが搭載されていますが、日本ではそんなことは当たり前。でも、海外では必ずしもそうではありません。

 

米国の家庭やコインランドリーでは、フィルターの付いていない洗濯機が多いようです。乾燥機の糸くずフィルター(lint trap)の存在は広く知られているようですが、洗濯機の中にはフィルターが付いていない物もあり、フィルター付きの洗濯機を見たことがない人さえいる模様。20世紀初頭に動力(水力)を利用した洗濯機や電動式を初めて開発した国だけに、意外な感じもします。

 

しかし、これからはそんな状況が変わっていくかもしれません。最近、カリフォルニア州議会が洗濯機にフィルターの取り付けを義務付ける法案を審査しています。どうして今なのでしょう?

 

主な理由とされているのは、マイクロファイバーによる海洋汚染や水質汚染を食い止めるため。多くの洋服にはポリエステルやナイロンといったプラスチック素材が使われていて、洗濯機で洗うとマイクロファイバーを大量に排出するとされています。微小なプラスチックの破片は水処理施設を経て海や河川に流れているようで(先進国の場合、マイクロファイバーは下水処理施設で7割以上回収されているという見方もあります)、これを防ぐために洗濯機を変える必要があると考えた民主党の議員が立案したそう。まだカリフォルニア州知事(民主党)は承認していないようですが、似たような動きは欧州でも2023年5月に起きていました。

 

法案が成立した場合、2029年1月1日までに販売される家庭用と商業用の洗濯機は全てフィルターを備え付けなければならなくなります(フィルターを搭載していない古いモデルでも、同日までに購入されたものであれば使用し続けても良いとされています)。フィルターの穴の大きさは100マイクロメートルとされており、洗濯機はラベルでフィルターの搭載を表示しなければなりません。違反した場合には罰金が科されます。

 

この法案にはコインランドリー業界が反対。商業用の洗濯機で使用する水の量は家庭用と比べてはるかに多いため、フィルターはすぐに目詰まりしてしまうというのが反対根拠の1つです。また、商業用の洗濯機でフィルターを機能させるためには機械を根本的に作りかえなければならないとも。このような理由により、この法案で大きな打撃を受けるのは小規模のコインランドリー業者だと主張しています。そうだとすれば、大変です。

 

日本にも影響はあるのでしょうか? 環境という視点で洗濯機を見ると、使う電気や水の量を抑えるエコモードがあります。また、ドラム式洗濯機の排水フィルターは「排水時に出たゴミがたまる」(パナソニック)という機能を担っていて、住環境(排水管や排水溝)を汚さないようにしているとも解釈できます。それらに加えて、マイクロファイバーフィルターを導入するというのは、日本人にとっても新しい機能かもしれません。

 

家を見渡せば、すでにたくさんのフィルターがあります。洗濯機、掃除機、エアコン、換気扇、空気清浄機、レンジフード、ウォーターサーバー、コーヒー……。家電だけではありません。インターネットの世界にもフィルターは存在しますが、これらは全く無関係とも言えません。家電とインターネットは「IoT」でつながり、IoTによって家庭のエネルギーは管理しやすくなり、その結果、環境の改善につながると論じるITの専門家もいます。

 

米国でも日本でも洗濯機の「スマート化」が進んでいますが、マイクロファイバーフィルターが洗濯機に導入されると、ユーザーやその家族のプラスチック排出量を自動的に計測することが可能になるのではないかとも考えられます。さらにその先を想像すれば、適切な排出量を守る人にはメーカーなどから特典がもらえたりして……。フィルターのお手入れがもっと大事になるかもしれません。

 

【主な参考記事】

Forbes. California May Crack Down On Washing Machines Without Filters—Here’s Why. September 27 2023