米国では最近、日本製の軽トラをよく見かけるようになりました。軽トラ以外の日本製の軽自動車も中古車販売店や個人売買のウェブページで販売されていますが、筆者が実際に走っているのを見たことがあるのは軽トラのみです。日本製軽トラはなぜ米国で人気があるのでしょうか?
人気の背景に「25年ルール」
米国では原則として右ハンドル車の輸入を認めていません。しかし、製造から25年以上経ったクルマは趣味性が高く国内自動車メーカーとは競合しないとの考えから、緩和措置として1988年から輸入が認められました。
この「25年ルール」のおかげで、1990年代に規格改定で性能が大幅にアップした軽トラが輸入できるようになりました。現在、日本製の軽トラが米国で活躍しているのは、そのような背景があるからです。
コンパクトでありながら機能性が優れた軽トラは、大型車が中心の米国では新鮮な存在に映るのかもしれません。実際に軽トラ専門店がオープンし、自動車イベントでも軽トラが注目を集めるなど、米国でも確かな存在として認められつつあります。
農作業で頼りになる存在
米国中西部で農業を営む筆者の友人夫婦も日本製の軽トラを所有しているため、話を聞いてみました。日本製の軽トラを選んだ理由は、農場内で使用するのに小回りが利き、積載力が大きく、操縦性が良く、舗装されていない道路や雪道などの悪条件下でも頼りになるからだと言います。米国では珍しい右ハンドルという点については、「クール!」という答えが返ってきました。
土や肥料、剪定した木々または作業道具など農業資材を運搬するのは日本でも同様ですが、米国の広大な農地での移動はさらに大変で、軽トラは農家の必需品と言えます。女性でも扱いやすく、燃費の良さやコンパクトさからも人気を集めています。
ゴルフ場のカートのようなバギーを農場で使用しているのも見かけますが、軽トラのように荷物を積むスペースがないため、主に人の移動にのみ使われているようです。
メンテナンスにはやや苦労も
デメリットについては、製造から25年以上経った旧車であり、さらに輸入車のため、修理が必要になった場合が大変とのこと。一般のパーツ店では部品が入手できず、オンラインでの注文が必要なものの値段も高く、維持メンテナンスにちょっと苦労するとのことでした。
また、農場内であれば使い勝手がよく実用的ですが、米国のハイウェイや大きな道路は制限速度が65mph(時速104km)~75mph(時速120km)と高く設定されていて、軽トラでの移動は厳しそう。ただ、友人は米国らしい大型のピックアップトラックも所有しており、軽トラとうまく使い分けができているようです。
部品調達などの課題はありますが、小回りが利く軽トラは農場以外にも牧場や狩猟、釣り、レジャーなど、米国の大自然のさまざまな場面で大活躍しそうです。
円安の影響によりドルで買い物をするには圧倒的に有利な昨今、日本の軽トラ人気はますます高まるのではないでしょうか?
執筆・撮影/RYPO