雑貨・日用品
2018/7/2 17:30

「今治タオル」の躍進と「5秒ルール」――銀座進出の最古参メーカー「藤高」にブランディングについて聞いてみた

日本が誇る地域産業の1つ、愛媛県の今治タオル。この地域には100を超えるタオルメーカーがありますが、その今治タオルの最古参であり、細やかな製品によって世界各国の有名ブランドの製品も手掛けてきた藤高が、この6月より東京・銀座に直営店を構えました。今回は、その経緯と、今治タオル、そして藤高の新たな試みについて、FUJITAKA TOWEL GINZAのマネージャー、藤高小夜子さんにお話をうかがいました。

↑FUJITAKA TOWEL GINZAのマネージャー、藤高小夜子さん。タオルの製造工程からビジネスの分野にまで幅広く解説していただきました

 

↑GINZA SIXにほど近い銀座7丁目にオープンしたFUJITAKA TOWEL GINZA。同社のタオル製品同様、店内の細部までこだわりぬいて設計されたそうです。設計を手掛けたのは建築家の中村好文氏。改めて作られたロゴは、同社が大正15年に使用していた商標をアートディレクターの柿木原 政広氏が再構築したもの

 

今治タオルが、近年再評価されていった経緯

――いまでは世界的に評価を得ることになった今治タオル。数多くあるメーカーのなかで、藤高はどういった存在なのでしょうか?

藤高小夜子さん(以下:藤高):今治(愛媛)にはだいたい100社前後のメーカーがありますが、そのなかで「今治タオル」ブランドのマークを使える企業は約80社。そのなかで、藤高は現存する最も古いメーカーです(1919年創業)。

 

もともと日本でのタオル産業は泉州(大阪)と今治が盛んでした。今治は温暖な地域で降雨量も少なく、また「名水100選」に選ばれるなど水にも恵まれており、タオルを作るのに適していたんですね。

 

ところが、年々今治のタオルは受注が減っていき、廃業する会社も数多くありました。

 

この流れのなかで、弊社の代表取締役社長、藤高豊文が四国タオル工業組合(現:今治タオル工業組合)の理事長だったころに、産地を再生するためにさまざまな試みを行いました。そのなかで、アートディレクターの佐藤 可士和先生と出会い、そのお力添えがあって実現したのが今治タオルのブランディングプロジェクトだったんです。

↑今治タオルと藤高のタグ双方がつけられたタオル。どちらのロゴもどこか誇らしく映ります

 

地域ブランディングに必要だったのは? 「5秒ルール」という試み

――そのブランディングにおいては、どういった試みを行ったのですか?

藤高:先ほど申し上げたとおり、今治には数多くのタオルメーカーがありますが、その品質基準をまず設けました。代表的なもので言いますと、「5秒ルール」です。タオルは買ったばかりだと、なかなか水を吸わないものが多かったんです。これを改善するために、「1cm四方のタオルで、水の上に浮かべて5秒以内に沈降を開始しないと今治タオルとは名乗ってはならない」といった基準を作りました。

 

――つまり、フワッとしたことではなく、具体的な品質基準を設け、様々なルールを明文化していったということですね。

藤高:そうです。その旗振りをしたのは弊社の藤高豊文でしたが、様々な方々のお力添え、ご協力によって今治タオルはブランド化し、今日に至った次第です。いまでは日本人の約70%が「今治タオル」を知っていただいているというデータもありますし、すごく良い試みだったと考えています。

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