日本が誇る地域産業の1つ、愛媛県の今治タオル。この地域には100を超えるタオルメーカーがありますが、その今治タオルの最古参であり、細やかな製品によって世界各国の有名ブランドの製品も手掛けてきた藤高が、この6月より東京・銀座に直営店を構えました。今回は、その経緯と、今治タオル、そして藤高の新たな試みについて、FUJITAKA TOWEL GINZAのマネージャー、藤高小夜子さんにお話をうかがいました。
今治タオルが、近年再評価されていった経緯
――いまでは世界的に評価を得ることになった今治タオル。数多くあるメーカーのなかで、藤高はどういった存在なのでしょうか?
藤高小夜子さん(以下:藤高):今治(愛媛)にはだいたい100社前後のメーカーがありますが、そのなかで「今治タオル」ブランドのマークを使える企業は約80社。そのなかで、藤高は現存する最も古いメーカーです(1919年創業)。
もともと日本でのタオル産業は泉州(大阪)と今治が盛んでした。今治は温暖な地域で降雨量も少なく、また「名水100選」に選ばれるなど水にも恵まれており、タオルを作るのに適していたんですね。
ところが、年々今治のタオルは受注が減っていき、廃業する会社も数多くありました。
この流れのなかで、弊社の代表取締役社長、藤高豊文が四国タオル工業組合(現:今治タオル工業組合)の理事長だったころに、産地を再生するためにさまざまな試みを行いました。そのなかで、アートディレクターの佐藤 可士和先生と出会い、そのお力添えがあって実現したのが今治タオルのブランディングプロジェクトだったんです。
地域ブランディングに必要だったのは? 「5秒ルール」という試み
――そのブランディングにおいては、どういった試みを行ったのですか?
藤高:先ほど申し上げたとおり、今治には数多くのタオルメーカーがありますが、その品質基準をまず設けました。代表的なもので言いますと、「5秒ルール」です。タオルは買ったばかりだと、なかなか水を吸わないものが多かったんです。これを改善するために、「1cm四方のタオルで、水の上に浮かべて5秒以内に沈降を開始しないと今治タオルとは名乗ってはならない」といった基準を作りました。
――つまり、フワッとしたことではなく、具体的な品質基準を設け、様々なルールを明文化していったということですね。
藤高:そうです。その旗振りをしたのは弊社の藤高豊文でしたが、様々な方々のお力添え、ご協力によって今治タオルはブランド化し、今日に至った次第です。いまでは日本人の約70%が「今治タオル」を知っていただいているというデータもありますし、すごく良い試みだったと考えています。
藤高が満を持して銀座に直営店を開店! その理由は?
――今治タオルのなかでも、それだけ重要な位置にいる藤高が今回、東京・銀座に進出した経緯をお聞かせください。
藤高:これまで今治タオルのブランディングに注力してきましたが、それに頼らない弊社としてのブランド力を高めたいという思いがありました。
確かに今治タオルはブランディングとして成功しましたが、ただ今治にいるだけでは新しいお客さま、特に一般のお客さまはなかなか来ていただけません。
こういったなかでより多くの一般のお客さまに直接弊社の商品を手にとっていただくために、また、法人のお客さまであっても、気軽にお知り合いになるための場所として、東京・銀座に直営店を開店しました。
――まだ開店して間もないですが、評判はいかがですか?
藤高:工事をしている段階から、外を歩かれている方から「何ができるの?」「タオルのお店? じゃあオープンしたら遊びに来るね」とお声がけをいただくなど、期待通り、お客さまと近いお店ができたと思っています。実際に弊社の商品を手にとっていただく機会も増え、開店して良かったと思っています。
――実際にお店で売られている商品はどれもステキですが、いくつかのラインによって製品特徴が異なるので、そういった質問などもその場で可能なのは便利ですね。
藤高:そうですね。常に新しい開発をしており、新商品はいち早く発信していきたいと思っていますので、こういった場はとても有意義だと考えています。
タオルの正しい洗い方と寿命とは?
――素朴な疑問なのですが、タオルの寿命というのが実はよくわかっていません(笑)。タオルはどのように洗い、どうなったら買い替えるべきなのかを教えてください。
藤高:どれくらいの頻度で使われるか、どういった環境で使うかにもよりますね。
弊社でまず推奨しているのは「縦型の洗濯機で洗うこと」です。やはりたくさんの水でゆったり泳がせながらタオルを洗うことで、寿命は延びます。ドラム式の洗濯機は、少ない水量で叩きつけるように洗うので、どうしてもタオル個々についているパイルがひしゃげてしまいがちになります。ひしゃげたパイルというのは、なかなか元に戻りにくく、寿命を短くしてしまいます。
また、洗い終えたタオルは日陰で干すほうが良いです。天日で干すと、パイルに含まれた水分を早く奪い過ぎてしまい、カチカチに固まりやすくなります。ですので、日陰で優しく乾かしていただければと思います。それでも硬くなってしまい、吸水力も弱ってきたと感じたら、お取り替えの時期と思っていただいて問題ありません。
――ちなみにですが、藤高のタオルの寿命はどれくらいですか?
藤高:私個人ですと、弊社製品で10年以上使っているものもありますし、先ほど申し上げたようなきちんとした洗い方をすれば長い期間、お使いいただけると思います。
これからもタオルを「究めて」いきたい!
――最後に、東京に進出した藤高のこれからと、まだ使ったことのない方へのメッセージをお願いします。
藤高:弊社のコンセプトは「究める(きわめる)」というもので、タオルの製品開発にはこれからも注力していきたいと思っています。近いところでは夏向けに「すぐ乾くタオル」というものをもうすぐご紹介できると思いますので、ぜひお店にお越しいただきたいです。
また、今回の東京出店での販売スタイルとして、さまざまな色のタオルをご用意させていただいております。たとえばご家族でタオルを揃えられる際、お父さん、お母さん、お子さん……と色で使い分けられるようにしています。さらにこれらの商品はいずれも箱入りで販売していますので、ギフトとしてお買い求めいただく際にもすぐにご対応可能です。
これからもタオルの製品開発はもちろん、お店での販売方法などにおいても、細かくこだわりをもって発信していきたいと思っています。
余談ですが筆者は、年配の方、目利きの方へのプレゼントにいつも困ってしまいます。特にタオルをあげたいと思っても、デパートに行っても、海外の有名ブランドの妙にシブいタオルが多く、いつも頭を抱えていました。しかし、こういったときに藤高のシンプルで高品質なタオルなら、どんな方でも大満足されるのではないでしょうか。銀座に行かれた際は、ぜひ一度同店を覗いてみてください!
【SHOP情報】
FUJITAKA TOWEL GINZA
■住所……東京都中央区銀座7-21-1 藤高ビル1階
■電話……03-6278-8852
■営業時間……11時~20時
https://fujitakatowel.jp/