雑貨・日用品
2018/7/26 18:00

「ブランドのシェア」が意外にいいぞ! 世界が認めたデザイナーが示す日本の伝統産業「成長のヒント」

家電ブランドcado(カドー)の空気清浄機「LEAF (リーフ)120」が、国際的に権威のあるドイツ「iF デザイン アワード」の最高位のデザイン賞「iF ゴールド アワード 2018」を受賞しました。なぜ受賞することができたのか、今回、本機のデザイナーである鈴木 健氏にインタビューを行い、その理由をうかがうとともに、自身が主導する「デザインとブランドをシェアする」という画期的なビジネスモデル「双円(そうえん)」について、詳しく聞いてみました。

 

Profile

鈴木 健(すずき・けん)さん

1973年生まれ。1996年に東芝に入社し、デザインマネージメントを担当。amadana(アマダナ)のデザイナーを経て、2011年にcado(カドー)を設立。現在は株式会社カドー取締役副社長兼クリエイティブディレクター、アエテ株式会社代表取締役社長を務める。

 

「継ぎ目がない空気清浄機」でドイツの権威あるデザイン賞を受賞

――3月に空気清浄機「LEAF(リーフ) 120」が国際的に権威のあるデザイン賞のひとつ、ドイツの「IFデザインアワード」で最も優秀なデザインに与えられる「iFゴールドアワード2018」を受賞しました。受賞の理由を、ご自身ではどのように分析されますか?

↑「iFゴールドアワード2018」を受賞したカドーの空気清浄機「LEAF 120」

 

鈴木 選ばれた理由としては、外観の美しさと機能を両立してることに尽きると思います。このサイズ(直径240×高さ315mm)で15畳対応のパワーを持ちながら、金属の一枚板で作った継ぎ目がないボディなどのデザイン面が評価されたのかと。

 

――ボディに継ぎ目がない? それは一体どのように作られているんですか。

 

鈴木 そもそもこの機種の初代のときに、「深絞り加工」という作り方を採用したんですね。お釜などと同じで、平らな金属をポンポンと何回も叩いて袋状にしていくんです。お釜の場合はそうしたうえで、上の部分をスパンと切るんですが、この空気清浄機の場合は上下を切って真ん中のキレイな部分だけを使ったのが始まりです。それを踏襲して、いまのモデルは一枚板から筒状に加工していて、継ぎ目がわからないほどキレイに加工されています。

 

外側の柱をすべて取り除くマイナーチェンジで「深化」を果たす

――家電に深絞り加工の金属を使うという発想は、どこから生まれたのでしょうか。

 

鈴木 LEAFに関しては「継ぎ目のない状態」という言葉から始めています。空気清浄機はファンを使うので、音ができるだけしないように、継ぎ目のないものを模索したのが始まりですね。この「LEAF 120」は3代目で、2代目からマイナーチェンジを行いました。例えばボディは2代目まではアルマイト処理だったのが、今回は時代に合わせて塗装に変えています。ほかにも本体下にある空気の出口にあった柱をすべて取り除いたのもポイント。これで、よりデザイン性が向上しました。

 

――あっ、確かに、外側にあった柱が全部なくなっていますね!

 

鈴木  8年前にもこの柱は取りたくて努力したんですけど、当時は不可能だったんです。技術的な部分と設計的な部分で、真ん中の太い支柱だけでは強度が保てなかった。今回、構造をイチから見直すことで取ることができました。だからパッと見はほぼ同じ形なのですが、実は、金型から作り直していて。性能も向上していますし、細かい部分も変わっています。大きく変える「進化」よりも、同じものを突き詰めていく「深化」を選んだというイメージですね。

↑「LEAF 120」(奥の白いモデル)は、スリットから見える中央の太い柱で上部を支える構造

 

ブランドイメージの構築には「統一感」と「継続」が重要

――ちなみに、カドーは2011年の創業からわずかな年月で、家電業界で確かな地位を築いています。そのなかで鈴木さんは、カドーのブランディングに関わるすべての制作物の指揮を執っているとうかがいました。ブランドイメージの構築に苦労するメーカーも多いと思いますが、鈴木さんが考えるブランディングの秘訣とは何でしょうか?

 

鈴木 大切なのは「統一感」と「継続」ですね。PCでやスマホで当社を知る方、出版物で目にした方、公式サイトや広告で見る方、ユーザーには色々な導線がありますが、どんな媒体で見ても同じ印象、同じトーンであることが必要。そこにズレがあると、イメージがうまく伝わらないので。これが「統一感」ですね。そして、それを長く続けて「継続」することで、イメージができていくんです。ただし、イメージが古くなって、「変える」となったら中途半端に変えてはダメ。すべてをガラッと刷新することも必要です。

 

――とはいえ、「統一感」を出すには、一定のルールがないと難しいですよね。ということは、カドーの立ち上げの際、かなりブランドイメージを練りこんだということでしょうか?

 

鈴木 そうですね。キーワードとしたのが「革新性」「デザイン性」「こだわり」の3つです。ブランドを伝える制作物は、必ずこれらが感じられるようにしました。例えばそちらにあるモノクロの写真(下写真)。発表会で展示したものなんですが、なんとなく伝わってきませんか?

――あ、これ見たことがあります! 確かに、これを見ると、「カドーっぽい」と思いますね。なるほど、「統一感」を持って「継続」してやってきたからこそ、カドーは短期間でブランドイメージを確立できたんですね。

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