昨日、2月23日は「ふろしきの日」でした。「包み」の語呂合わせで、「2(つ)2(つ)3(み)」として制定された記念日だそうです。
「ふろしき」と聞くとこれまでは年配の方、女性の方が持つ先入観がありましたが、近年では男性の間でも愛好家が増え、ビジネスシーンはもちろん、スポーツの場面でも使われる方もいるのだそうです。これに伴ってか男性が使いやすいような紺地のふろしき、デニム地のふろしきなども販売されており、ふろしき文化の裾野は静かに広がりつつあります。
ふろしきは日本古来の文化であり、「1枚の正方形に近い布」というシンプルな構造でありながら、使い勝手は豊富です。手提げにも、リュックにも、ボディバッグ的にもなり、使い方はシームレス。今風ですね。
今回はふろしきのなんたるかと包み方について、男性目線で迫ります。案内してもらったのは東京都・原宿にあるふろしき専門店「むす美東京店」の古結 希さん。それではさっそくいってみましょう!
ふろしき文化は、少なくとも1300年前から存在した!
ーーまず「ふろしき」の定義から教えてください。
古結 希さん(以下、古結) もともとふろしきは、着物の反物を裁断し、その端を巻き上げて縫い上げるものでした。ほぼ正方形ですが、天地・左右のうち、天地のほうは若干長く作られていました。また、大きさは着物の反物の幅が約36cmであることから、これまでは、おおむね36cmの倍数の商品が多くありました。しかし、むす美ではより使っていただきやすいよう、必ずしもこういった定義にこだわらず、現代の暮らしにあったサイズをご用意しています。
ーーふろしきには、どれくらいの歴史があるのですか?
古結 1300年前の奈良時代にはすでにあったようです。奈良の正倉院には、その当時の大切な宝物(ほうもつ)を包んで保管していた四角い布がそのまま残っています。このことから推測すると、もともとは宝物(ほうもつ)を包むためのものだったのではないかと思いますが、それがやがて庶民の文化として定着し、今日に至っていると考えて良いと思います。
ーーふろしきは日本だけの文化でしょうか。
古結 「ふろしき」という名称は日本固有ですが、ふろしきに似たような「1枚布で包む」文化は世界各地にあり、きっと同じようなことを世界中の人が考え、各地の文化として広まっています。ただ産業として今日も続いているのは日本のふろしきだけだと思います。
近年のふろしきには自由で様々な柄が用いられている!
ーー長い歴史を持つふろしきですが、これまでは年配の方、女性の方が持つ先入観がありました。柄や素材も極めて和風のものを目にすることが多かったように思います。
古結 ふろしき=包み布として考えれば、年齢や性別には差がなく、男女ともに使い始めたものと考えていただいて良いと思います。ただ、もともとは着物の反物が素材でしたので、綿や絹といった天然繊維が中心でした。普段は木綿のふろしきを、ハレの日には絹を使い分けていたようです。
しかし、近年化学繊維が誕生し、高価な絹の代用としてレーヨンやポリエステル製のふろしきが増えてきました。さらに今日はオーガニックコットンやデニム素材のふろしき、撥水加工や刺繍が施された生地など様々なふろしきが販売されるようになりました。
ーーバラエティに富んでいる今のふろしきですが、例えば扱う柄などで「この柄はこういったシチュエーションで使っちゃいけない」といったルールはありますか?
古結 ふろしきの絵柄にはもともとおめでたい意味を持つ吉祥文様が好まれていました。また、花鳥風月を表した四季を感じる柄や、図案を単純化し連続させた小紋柄などにも意味や願いが込められています。
ただ、今日では「和」の概念からもっと自由になり、様々なライフスタイルやファッションとのマッチによって洋風の柄やポップな柄のふろしきも増えています。ですので、「これを使っちゃダメ」といったルールは特にないと思っていただいて良いと思います。
ーー最近はふろしきを扱う男性が秘かに増えているともお聞きしました。本当でしょうか。
古結 当店では特に若い男性の方がお見えになる機会が増えています。それまでのふろしきの定義を飛び越え、自由に使い、楽しまれているようにお見受けしています。
ーー現代の男性がふろしきを使う場合、どんな柄がおすすめですか?
古結 男性は藍色などの青系で、無地や縞、格子などのシンプルでモダンな柄が良いのではないでしょうか。対して女性は朱色などの赤系で、花柄などのかわいらしい柄を好まれることが多いように思います。
古結 ただし、これらもあくまでも傾向であって、前述の通り、「男性は絶対に朱色のふろしきを使ってはいけない」ということではありません。特に今はユニセックスな傾向が高まっているため、その人が好むものを、自由に選んで使っていただければと思っています。
ふろしきで包むべきもの・包んではいけないもの
ーーふろしきで包むべきもの・包んではいけないものといった作法はあるのでしょうか。
古結 「包むべきもの」をあえて言うのでしたら「大切なものを包む」のが良いと思います。さきほどもご紹介したように、古くは宝物を大切に包む用途で使われていたふろしきですので。
日本人の心情として例えば、尊敬する人、目上の人に何かをお届けする際「裸で持って行っては失礼」と考える場合が多いです。こういった場合にふろしきは特に活用されてきており、やはり「大切なものを包む」ということになります。
また、「包んではいけないもの」は作法としては特にないですが、鋭利なものなど、ふろしき自体を傷つけてしまいそうなものはお控えいただいたほうが良いでしょう。ただし、これらも「絶対そうでなければいけない」というものではありません。使われる方が自由にアレンジしてふろしきに親しんでいただければと思います。
慣れればわずか1分以内で包むことができる!
ーーただし、ふろしきというと、包み方が難しいようにも思います。特に手先が器用ではない男性にはハードルが高いようにも思います。
古結 ふろしきを使う場合、まず包み方を覚えないといけませんが、一度覚えてしまえば簡単です。包み方にもよりますが、シンプルな包み方でしたら数10秒から1分以内で包めますよ。
ーーぜひ、その包み方を教えてください!
古結 わかりました。2パターンの包み方をご紹介いたします。
【ふろしきの包み方①】お使い包み
古結 お弁当箱を包むようなシンプルな包み方で、中身もしっかり安定させることができます。リバーシブルのふろしきでしたら、結び目に裏面を出してアクセントにすることもできます。
①ふろしきを広げ、包みたい箱を中央に置く
②手前の角を持ち中身にふろしきをかぶせる
③さらに奥の対角を持ち、手前にかぶせる
④中身を押さえながら、ふろしきの左右の端をバランス良く持つ
⑤左右の端を中央に持ち上げる
⑥左右の端を中央で真結び(端と端を中央で交差させる結び方)する
⑦完成
【ふろしきの包み方②】2本のボトル包み
古結 ワインなどを贈答する際に使われる包み方です。綺麗に包む際は2本のボトルの形状や高さが、できるだけ似たものであるのが理想です。
①ふろしきを広げ、ボトル2本を中央に置く
②ふろしきの対角線上にボトルの底を合わせるように倒す。この際、ボトルの間を、指3本分ほど間を空ける
③手前からボトルをくるむように包む
④巻き終えたら、巻き終わりの角を二本のボトルの底でしっかり挟み込むようにして立ち上げる
⑤中央で真結びする
⑥完成
サイズ感だけ注意すれば、ふろしきの用途は無限に!
ーーご紹介いただいた包み方をさらにアレンジすれば、様々なものに転じられそうですね。
古結 はい。「お使い包み」は、お土産などを贈答する際だけでなく、カバンの中に大事なものを入れておく際にも応用できると思います。また「2本のボトル包み」をアレンジして、スポーツシューズを包んで持ち歩く男性の方もいらっしゃるようです。このほかにも様々な包み方がありますので、さらにご興味がある方は店頭でご質問いただければ幸いです。
ーー丸いもの、四角いものなど、どのようなモノでも包めますか?
古結 はい。ただ、ご注意いただきたいのは、包むものによってふろしきのサイズも変わってきます。目安となるのは、ふろしきを広げた際、包みたいものが対角線の3分の1くらいのボリュームが望ましいということです。包みたいものに対してふろしきのほうが大きすぎては布がダブついてしまいますし、小さすぎては布が足りなくなります。この点はご注意いただきながらお選びいただくと良いでしょう。むす美では、ふろしきをもっと現代の生活の中に溶け込んでほしいと考えています。どんな場面でも活用できるふろしき。ぜひ多くの男性の方にもご活用していただければと思っています。
実用性の幅広さと使いやすさだけでなく、カバンと違って使わないときは畳んでしまっておけるのもふろしきの利点だと思いました。余談ですが、取材帰りについ2枚ほど自分用ふろしきを購入した筆者でしたが、価格は1枚1000円(税別)と、取り立てて高いものではありませんでした。1枚持っていれば何通りもの使い道を発揮してくれるふろしき。これを機に1枚お持ちになってみてはいかがでしょうか。
【SHOP DATA】
むす美・東京店(原宿)
■住所:東京都渋谷区神宮前2丁目31-8
■TEL:03-5414-5678
■営業時間:11時~19時
■定休日:水曜日
撮影/我妻慶一
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