雑貨・日用品
2024/5/10 21:00

万バズ連発の「ありそうでないプロダクト」はどう生まれた?超人気クリエイターに学ぶ発想のアプローチ

わずか10分で完売となった「きのこの山ワイヤレスイヤホン」、ハンドソープをカニの泡に見立てた「カニのハンドソープ」、本に挟むといろんなシーンが現れる「透明しおり」――独創的なアイデアで万バズを飛ばしまくっているのが、クリエイターのミチルさんです。

 

SNSで公開しているプロダクトの数々は、どれもユニークでクスっと笑えて、なおかつ実際に使いたくなるものばかり。企業からのオファーも絶えないといいます。どんな発想からアイデアが生まれてくるのでしょう? いろいろと話を伺ってみると、ビジネスパーソンにとっても仕事に役立つヒントが見つかりました。

 

【この人を取材しました!】

ミチル
架空のプロダクトを創作するクリエイター。2020年よりSNSをメインに活動中。@mitiruxxx

最も大事にしているのは「形状」

唯一無二のプロダクトを日々生み出しているミチルさんですが、子どもの頃からモノづくりがお好きだったのですか?

 

「昔から図工が好きで、結構手先が器用な方だったので、モノを作る関係の仕事がしたいなとは思っていました。大学時代に専攻したのは建築です。建築家になりたいと思った時期もあったんですが、授業でプロトタイプのようなもの、いわゆるミニチュアみたいなものを作っているうちに、小さくても手に取って作れるものに興味が移ってきた感じです。

 

クリエイターとしての活動は趣味というか遊び的に楽しんでやっています。ただ、本業で商品開発に携わっているので、SNSで公開している作品づくりにも影響しているのだとは思います」

 

思わず「かわいい!」「欲しい!」と叫んでしまうユニークなプロダクトのアイデアは、どんなときに生まれるのでしょうか。

 

「近所を散歩したり、雑貨屋やスーパー、コンビニなどに行ったりしていろいろなプロダクトを見て、あれこれと思いを巡らせながらインスピレーションを膨らませています。美術館や植物園も好きです。

 

注目しているのは、形状ですね。とにかく形をよく見ます。たとえば、植物園に行ったら、『この植物の形状は何かに似ているんじゃないか?』って考えるんですよ。そうすると、ハエトリソウという食虫植物が『財布のがま口に似てるな』と思ったり。

 

以前、お好み焼き屋に行ったときに見たかつお節が、なんだか鉛筆の削りカスに見えてきてしまって(笑)。そこから、『お好み焼き鉛筆削り』が誕生しました。

↑SNS公開後、オタフクソースから声がかかって商品化した「お好み焼き鉛筆削り

 

その瞬間は思いつかなくても、普段から見たもの聞いたものをインプットして頭の中で寝かせておくと、後で『あれとこれ、組み合わせたら面白いかも?』みたいなひらめきになったりもしますね」

 

ミチルさん流メソッド①「モノの形状までよく観察する」

→いつもと違った角度や目線で細部まで物事を観察、インプットしておくと、新しい発見やひらめきにつながる。

 

アイデアのストックはオーソドックス

いろいろな場所を巡って得た情報からアイデアがひらめいたとき、どのようにストックしているのですか?

 

「基本は、スマホのメモに残します。思いついたこととか、アイデアのヒントみたいなものを箇条書きにがーっとメモしておく。それを後で見返していると、その中でこれとこれをミックスしたら面白いかも! と思いつくことがあります。

 

あとは、イラストを結構描きますね。かなり崩すというかシンプルに、そしてデフォルメして描くんです。

↑幾何学的に描いたワニのイラストと「ワニの単語帳」

 

たとえば、動物や食べ物をかなりラフに描くと、別のものに見えてきたりするんですよ。そこから、新しいアイデアが生まれることは結構ありますね。これもアイデアが生まれるひとつのフローみたいなものかもしれません」

 

ミチルさん流メソッド②「イラストで極限までシンプルにする」

→余分な情報を削ぎ落し、できるだけシンプルに物事を見ることで、アイデアが生まれる。

 

「空気」が変わると良い循環が生まれる

SNSの投稿を見るたびに、本当に天才の発想だと感激しているのですが……ミチルさんでもアイデアがひらめかないときや、息詰まることはありますか?

 

「もちろんです。基本、SNSは自分の好きなタイミングで好きなものを作ることにしているんですが、オファーをいただいたものは〇月〇日までにアイデアを提出する、といった締切があるので。思うようにアイデアが浮かばないこともあります。

 

そういうときは、『空気』を変えるようにしています。ずっと家の中にいたなら外に出る。場所を変える。特にアイデアがひらめきやすいのは、渋谷みたいなたくさんの情報が飛び交っているところへ行った後に、静かな場所に行ってぼーっとしているときで、インプットを大量にした後に頭の中で思いを巡らせる環境を作るのがいいみたいです。

 

息詰まったとき以外でも、普段から1時間くらい作業したら違うことに意識を切り替えたり、少し外を歩いたりして空気を変えるようにしています」

 

緩急をつけると、アイデアが降りてきやすいということでしょうか?

 

「そうですね。脳科学的なことはわからないんですが、環境のふり幅が大きいほど脳に刺激が行くような気がしています。ひとつの作業にものすごく集中した後、一気にリラックスした状態のときにふっとアイデアが浮かんだりもしますね。

 

昔は、ひとつの題材に対して分析をして言葉で書きだす、みたいな左脳的な作業も試したりしたんですけど、それだと着地点として、私の場合あまり面白みのないアイデアになってしまうことがありまして。

 

真面目な商品開発をする場合はそのフローは有効だと思うんですが、クスっと笑えるようなプロダクトを作る場合はあまり効かなく、結果、空気を変えて脳に刺激を与える……という今の方法に落ち着きました。とにかく、もがかないようにしています」

 

ミチルさん流メソッド③

「行き詰まったら別の場所に移動し、空気を変える。緩急が大切」

→同じ作業を続けないように意識的に場所や環境を変えることで、脳に良い刺激が与えられる。

 

構想期間は長くて3日?

ミチルさんは、思いついたアイデアをどのくらいで作品として形にしているのですか?

 

「思いついたらすぐ作っちゃいますね。何かアイデアが湧いたら、その日の夜には作ってます。まあ、時間がかかるものだと、3日くらいはかかりますが……」

 

長くて3日ですか!?

 

「寝かせておくと、だんだんと自分の中で新鮮味がなくなる気がしまして、時間が経つと、気持ち的にもプロダクトとして公開に踏み切れなくなったりもするので。もちろん、長期間かけて試行錯誤を繰り返したものもありますし、公開のタイミングを四季の行事のタイミングに合わせたものもありますが、基本は思いついたら即実行!です」

↑こちらの『氷山になるティッシュケース』は例外。一度作ったけれど未完成なままだったので、最近改めて作り直したのだそう

 

なにかひとつ、アイデアが生まれてから作品になるまでの過程を教えてもらえますか?

 

「『カニのハンドソープ』は、去年の7月に海に行ったのですが、その近くの水族館みたいなところでカニを見まして。そのときに『カニって泡を吹くよなぁ』『あれ、これってハンドソープに見えるかも?』と思いつきました。で、すぐにプロトタイプを作っちゃいました。

↑アイデアを思いついてすぐに作ったのがこちら。7月4日にXに投稿している!

 

SNSで公開後、商品開発の会社の方からお声がけをいただき、半年の開発期間を経て、今年の2月に商品化されました」

実際に商品化された「カニ泡ソープディスペンサー

 

ミチルさん流メソッド④「鉄は熱いうちに打て。新鮮味がなくなる前に即実行」

→思いついた企画やアイデアは温めず、すぐに実行に移すべし。

 

今後の夢は異業種間コラボ。アーティストと一緒に何かを作ってみたい

すでにいろいろな挑戦をされていますが、今後やってみたいことはありますか?

 

「企業の方との案件みたいなことは今後もやっていきたいですね。あとは、まったく異業種のクリエイターの方とコラボしてみたいという想いがあります。たとえば、アーティストの方とか。一緒にお話をして、なにかグッズを作ったりできたらいいなと思っています」

 

ミチルさんが生み出すユニークなプロダクトの数々、これからも目が離せません!