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スタートアップ
2017/4/14 11:00

AIが可能にする新時代の営業スタイル――営業支援ツール・Sensesは「いつメールを送るべきか?」まで教えてくれる

五反田スタートアップ第9回「マツリカ」

企業の営業スタッフは単独で行動することが多い。それゆえに、顧客とやり取りした履歴や蓄積されるべきノウハウは、属人性の高いものとなってしまいがちだ。その結果、次のステップでどう動けばいいのかアドバイスを求め(与え)づらい、新人教育に時間がかかるといった課題が生じてくる。

 

五反田スタートアップ第9回目は、それらの課題を解決する営業支援ツール「Senses(センシーズ)」を提供するマツリカの代表取締役Co-CEO・黒佐英司氏に話をうかがった。

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↑マツリカ代表取締役Co-CEOの黒佐英司氏

 

過去を記録するだけでなく未来を予測して気づきを与える

――:まず、御社が提供されている「Senses」について概要を教えていただけますか?

 

黒佐英司氏(以下 黒佐):ひとことでいえば、Sensesは営業向け業務支援ツールです。具体的には、営業スタッフが入力した訪問企業、提案商品、現状データや営業先企業に送ったメールなどを、案件ごとに整理できるというもの。Sensesに入力しておけば、現在の売上だけでなく今月・来月の見込みまでグラフ表示されるため、上司も営業スタッフも、着地点の把握がしやすくなります。

従来のSFA(Sales Force Automation)との大きな違いは、入力されたデータをAIが分析して未来を予測する、という点です。具体的には、入力されたデータにもとづいて、次はどう動けばいいのか、どのタイミングでどのようなメールを送ればいいのか、といったことをサジェストします。いわば営業スタッフの秘書のようなツールですね。

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↑アクションデータを入力すれば、次に何をすればよいのかサジェストしてくれます

 

――:「どんなメールを送ればいいか」といったことまで教えてくれるのはすごいですね! それはいくつかのメールテンプレートがあって、そのなかからベストなものをチョイスしてくれる、というイメージでしょうか?

 

黒佐:いえ、テンプレートではありません。SensesはG Suite(旧Google Apps)やOffice 365のカレンダーやメールと連動していて、チーム全体のスケジュールや送受信メールを共有できるようになっています。そして、チーム内の先輩などが同様の場面で過去に送ったメールを紐付けて表示する、というわけです。

このようにチーム全体でメールや提案資料などのデータを共有することにより、仕事の属人化を防ぐことができます。また各人のナレッジがデータベースに蓄積されるうえ、前述のように次に何をすればいいのかを教えてくれるので、新人の教育にかける時間を減らすこともできます。

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↑導入済みのクラウドアプリ(G SuiteやOffice 365)と連携し、送信メールを企業と案件に紐付け自動的に分類、管理可能。メールは共有されるため、似たような状況でベテランスタッフが送ったメールの文面も閲覧できます

 

――:チームにとってはいいこと尽くめですね。

 

黒佐:そうですね。もちろん、個人にとっても顧客に送るメールの文面などで悩む必要がなくなるというメリットがあります。

これまでの営業向け業務支援ツールは、どちらかといえば上司が部下の活動を管理するためのもので、営業スタッフとしては「やらされている感」が否めなかった。そのため帰社後の入力は面倒なものと感じてしまっていたかもしれません。でも、Sensesであれば、マメに入力すれば次の行動が見えてくる、気づきが得られる――だから進んでデータを入力したくなる、そのようなものに仕上げてあります。ブラウザからアクセス可能なためスマホでも入力でき、出先から戻る電車内の空き時間にささっと作業できるのも魅力のひとつだと考えています。

 

――:このように革新的なツールを作られたきっかけはどのようなものなのでしょうか?

 

黒佐:わたし自身、営業経験者なんです。個人同士が売上を競うなか、組織にとって本当に大切なことは何か、時間のかかるメンバーの教育に何が有効か、ロジックをシステム化できないか、といったことをずっと考えていました。とはいえ、管理者のためのシステムは作りたくなかった。たまたま自分のいたところが情報分析や整理をする会社だったので、そこでの知見を生かすことができました。

 

――:創業されてから大変だったことなどはありますか?

 

黒佐:SFA市場は、グローバルでは約3兆円、国内でも400億円。非常に大規模なんです。そしてライバルも多い。そのなかで自分たちの良さを出しつつ、マーケットが求めているものにフィットさせるのに苦労しました。「管理者のためのものにしたくない」とはいっても、導入を決定するのは管理者ですからね。どのように管理できるのかを見せるのが一苦労でした。

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↑「管理者のために作ると、現場スタッフが入力したくないものになってしまう」と黒佐氏。営業を経験しているため、その言葉には説得力があります

 

――:料金はどのようになっているのでしょうか?

 

黒佐:これはSaaSなのでシンプルで、1アカウントあたり月額料金5000円で運用していただけます。

 

――:ところで社名は「マツリカ」でミッションとして「世界を祭り化する」を掲げていらっしゃいます。この「祭り化」とはどんな状態を指しているのでしょうか?

 

黒佐:「祭り化」は、何かに没頭している、集中している、スポーツでいえばゾーンに入っている、そんな状態を指す造語です。学生時代の体育祭や文化祭の準備をしているときって、時間が経つのも忘れて没頭していますよね。ああいうお祭り前の夢中になっている状態を作り出すためにAIテクノロジーを組み込んだツールでお手伝いができたら、と考えています。

 

【五反田編】「スタートアップなら五反田」といわれるようになりたい

――:それでは、ここからは五反田についてお話をうかがえればと思います。まず、オフィスを五反田に決めた理由を教えていただけますか?

 

黒佐:渋谷のほうが「ああ、スタートアップ企業ね」というアイコンとしてわかりやすかったのは確かです。でも、最近は五反田で起業する人も増えてきた。そのおかげか以前に比べて五反田にもスタートアップのイメージが定着してきている、ということがひとつ。それと遊びの雰囲気がありつつ、混雑しすぎていないところが気に入りました。

あと何より3線も通っていてアクセスがよく、しかも賃料が安い、というのが大きかったですね。うちの場合、リモートワークで働いている社員もけっこういますし、大阪で働く人もいます。ときどきここに来てもらうことがあるんですが、オフィスが駅から離れていたら呼びづらいですし、そういった意味でも「駅から徒歩一分」というこの立地は重要なんです。

とはいえ、まだまだ「なんで五反田に?」ときかれることもあるので、「スタートアップなら五反田だよね」といわれるくらい五反田とスタートアップ企業の相性の良さが認知されればと思っています。

 

――:五反田への愛があふれたコメントをありがとうございます。以前から五反田への愛着があったのですか?

 

黒佐:実はプライベートで来たことはなかったんです。ここにオフィスを構えてからですね。

 

――:そうだったんですね(笑)。五反田周辺でお気に入りのお店はありますか?

 

黒佐:まだここにきてから半年ということもあり開拓中なんですが、ランチでは「小林食堂」がお気に入りですね。店名は定食屋さんぽいのに、実はフレンチなんです。ひとりでも行きますが人と会うときにも利用しています。

また、ハヤシライスがどうしても食べたくなって「グリルエフ」に行くこともありますね。ここも利用するのはほとんどランチです。

夜だと、「うしごろバンビーナ」や、あと最近ハマっているのが「炭火焼ホルモン ぐう 五反田」。特に浅漬けのキムチがほんのり甘くて、いくらでも食べられる美味しさですよ。若いスタッフとよく一緒に行きます。

 

――:これは……お腹が空いてきました。今後、五反田でコラボしたいと思う企業はありますか?

 

黒佐:たくさんありすぎて……。FreeeさんやTORETAさんとはぜひ一緒に何かしらの形でコラボしたいですね。B to B、SaaS業界というくくりで共催セミナー企画などがいろいろ考えられそうです。あと、この地域のスタートアップのイメージをさらに確かなものにするために「五反田のスタートアップ企業に就職しよう!」というような採用イベントもできたらいいな、と思います。

 

個人個人を“祭り化”し、もっと楽しく、もっと素晴らしい世の中に

――:最後になりますが、今後の展開についてお聞かせください。

 

黒佐:今だと、「SFAツール、どこ入れようか?」と企業が検討する際、SalesforceやMicrosoftがまず候補に上がると思いますが、その候補にに含めてもらえるほど認知を拡大させたい、というのが短期的な展望です。

そして、できるだけ早い段階で3兆円という世界市場でも販売していきたいと考えています。SFA市場を振り返ってみると、最初にトップだったオンプレミスソフトのSAPが、世の中的にクラウドに切り替わるタイミングでSalesforceにその座を奪われました。そしてAIを組み込んでツールが気づきを与えるという次の段階がもう目の前まできています。つまり、わたしたちの提供するツールがグローバル市場でトップシェアを取れるかもしれない。

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↑今後のビジョンについて語る黒佐氏

 

本来、営業という仕事は楽しいものなんです。それが「管理されている」という気持ちや「追いかけねばならない数字」のために縛られてストレスフルな仕事になってしまっている。また、先輩たちの積み上げてきたナレッジにアクセスすることもできず、いつまでも不安を抱えた新人状態が続くこともあります。

でも、Sensesは入力しておけばおくだけ自分が楽になれるツール。共有されたベテランスタッフのナレッジからAIが適切な情報を探し出し、次の行動を教えてくれるし気づきも与えてくれる。それによって、もっと自由に、創造的に、楽しく営業ができればいい。仕事に夢中になって、充実感や達成感が得られればいい。そのように“祭り化”した人の見る世界は、学生時代のあの没頭していた時期のように、もっと素晴らしいものになると思います。

今はまだ営業向けツールのみの提供ですが、今後は祭り化状態をより多くの人に経験していただけるよう開発を進め、もっと生き生きとした彩りのある社会の実現に貢献できれば、と考えています。

 

【参考】
Sensesサービスサイト
URL:http://product-senses.mazrica.com/