筆記具メーカー5社から発売され、いまだ乱世の感が続く「折れないシャープペンシル」業界。各メーカーともそれぞれ「折れない」だけではない特徴的な製品を展開しており、ユーザーは自分の使い方にマッチしたものを選んで購入できるようになってきた。
そのなかで先日、「世界最細芯で折れない」を謳っているぺんてる「オレンズ」シリーズから、技術の粋を集めたフラグシップモデル「orenznero(オレンズネロ)」が発表され、文房具ファンの注目を集めている。
ぺんてる orenznero 3240円
orenzneroは、従来のorenzシリーズと同じく現在世界最細芯である0.2mmと0.3mmをラインナップ。さらに、この細さで世界初の「自動芯送り機能」を搭載している。この自動芯送り機能……通称「ワンノックシステム」は、その名のとおり筆記時にまず1ノックするだけ。あとは書き終わるまで、もしくは芯がなくなるまでノックする必要がない。
orenzシリーズは、0.2mmの芯をガードするためパイプから出さない(先端からコンマ数mmだけ芯が露出している)状態で筆記。芯が減るに従ってパイプも軸内に収納されていくパイプスライド方式を取っている。自動芯送り機能は、芯先端が紙から離れるたびにスライド収納されたパイプがバネで元の長さに戻り、それに伴って芯も引き出されるという構造。つまり、字を一画書くごとに減った分だけ芯が出るというものだ。
このパイプスライド+自動芯送りは、0.5mm以上の芯径シャープペンシルでは以前より複数の製品で採用されていた機能だが、同じことを0.2mmの極細芯で行うには複雑な機構が必要となり、非常に難しい技術とされていた。
また、0.5mm芯の自動芯送り機構は、芯先が減ってパイプが紙に接地したタイミングで芯が送られるため、その都度にパイプが紙に当たる違和感があった。対して、orenzneroは最初からパイプが紙に触れ続けているため、その違和感もない。書いてる間に筆記感の変化が少なく、途中のノックの必要も不要。そのため、筆記時の集中力が削がれず、最後まで継続できるようになっているのだ。
軸のデザインは、世界最初の0.3mmシャープ「メカニカ0.3」をはじめ、ぺんてるの歴代シャープで多用されてきた12角柱軸とオレンズの円柱軸を統合したイメージ。ローレット加工のグリップ部は樹脂に金属粉を混ぜた重量感のある新素材を採用し、ほどよく前方荷重になるようバランスが取られている。このおかげで、握ったときに「グリップがしっとりと指に吸い付く」ような感覚があり、また筆圧の弱いユーザーでも極細芯で快適な筆記感を得ることができる。
定価3000円(+税)とシャープペンシルとしては一見高額なように感じるが、この使いやすさ・書きやすさはシンプルに快適の一言。一度使ってしまうと、“もうこれじゃないとダメだな”とハマってしまう人も多いのではないだろうか。
極細芯だから……と、これまでorenzシリーズを避けていた人も店頭で試筆できる機会があればまずは試してみて欲しい。デザイン・機構の面では、ぺんてる製図用シャープの系譜に連なるorenzneroだが、むしろ日常的な筆記具として使う人を選ばない万人向けの快適シャープに仕上がっていると感じた。
今回、渋谷で開催されたorenzneroの製品発表会では、ぺんてるのシャープ企画開発部部長の丸山氏をはじめとするシャープ開発技術者3人+開発部のプロダクトデザイナー柴田氏が登壇。
これまで世界初のノック式シャープ(1960年)や0.3mmシャープ(1968年)を開発してきたぺんてるが、シャープペンシル技術の蓄積をorenzneroにどのように集約させたか……といった話に始まり、自動芯送り機構のメカニズムや軸用の新素材の説明など、とにかく「俺たちのこの技術がすごいからみんな見てくれ!」という熱のこもったトークが開発陣から展開された。
また、会場内からの「どの世代の、どういった人をターゲットにしているのか」という質問に対して、丸山開発部長は「まずはフラグシップモデルとしてぺんてるの技術の粋を発揮するために作った製品であり、特定のターゲットを想定して作ったわけではない」と自信をあらわに応えていたのが印象的だった。
ぺんてるのorenzneroは、2月16日に出荷開始となり、週末には全国で発売される見通し。ただし、初回の販売店舗は全国で600店ほどと少ないため、もし店頭で見つけたら即ゲットをオススメする。