土井善晴さんというと「おかずのクッキング」(テレビ朝日)「きょうの料理」(NHK Eテレ)などでおなじみの、はんなりとした親しみやすい口調の料理研究家だ。土井さんがテレビで料理をしている姿を見ると私にとっては作っている料理より、その独特の話し方が俳優の大泉洋氏が披露している「土井さんのモノマネ」と似ているのか否かが、つい気になってしまう。
なので、今回はテレビでの土井さんではなく、本で土井さんの料理とキチンと向かい合ってみたい。『土井善晴のレシピ100』(土井善晴・著/学研プラス・刊)から気になる料理を見つけたので実際に作ってみた。
自由カレーとは?
その料理名は「自由カレー」。なんでも冷やご飯で雑炊を作るように、自由に作ってできたので自由カレーと呼んでいるそう。そんな自由カレーの材料は下記の通り。
材料2人分
冷やご飯:200g
鶏もも肉:100g
しょうが:15g
にんにく:1片
玉ねぎ:1個
トマト:1/2個
にら:1/2束
カレー粉:大さじ2/3
レッドペッパー:小さじ1/3
熱湯:3/4カップ
卵黄:2個分(『土井善晴のレシピ100』から引用)
「まず、鶏もも肉を1cm角に切り、しょうが・にんにくはおろす」と、作り方冒頭を読みながら冷蔵庫を開けて愕然。しょうがが無い…。仕方ないのでチューブのしょうがで代用しようと思ったら、残量残りわずかな上に、賞味期限が切れている…。
土井さんには申し訳ないが、今回は「しょうが無し」の強行突破で作ることにした。美味しくてもイマイチでも「これが私の自由カレーなんだ!」と、よく分からない意気込みを抱きつつ、せめて野菜の切り方ぐらいはレシピ通りにしようと思い、玉ねぎを粗みじん切りし、トマトは1cm角に、にらを5mm幅に切った。
次にフライパンにオリーブオイル(大さじ1)を入れ、しょうがとにんにくを加え、火にかける。とあるが、今回の私の場合はご存知の通りにんにくだけ火にかけた。香りが出たら鶏肉を入れ、焼き色がつくように炒め、塩小さじ1をふる。
そして、玉ねぎを加え、強火でこんがり焼き炒めをする。この時点で、美味しそうな匂いが我が家のキッチンに充満した。空腹感と格闘が始まる。
さらに、カレー粉とレッドペッパーを入れ全体をなじませ、冷やご飯を入れる。冷やご飯を入れたら、上記の熱湯を入れてなじませてからトマトを加える。そして「水分を飛ばしながら焼き色をつける。混ぜてまた焼き色をつける」これが、この料理の最大のポイントで美味しくするコツなのだと、土井さんは語っている。
「分かります。料理下手でも、この混ぜて焼いてを繰り返すことによって香ばしさと同時に美味しさが増していっている感じ分かりますとも。でもね、土井さん。私、もう空腹感に負けそうですわ。」そんな心の声が、土井さんの口調で出てきそうなのを抑えながら、自由カレーの水分を飛ばすことに集中した。
最後ににらを加えてなじませ、味をみて塩を加え、皿に盛って卵黄をのせたら完成!
いざ、実食!
完成した自由カレーは、実は上のメイン写真だ。ぜひスクロールして今一度ご覧いただきたい。
しょうがが無いという痛恨のミスが味に響いてしまっているのか…?
自由カレーの味を確かめるために、まずは卵黄を崩さずに一口。
う、うまい…!!!!!
しょうがを入れなかったせいで物足りない味になってしまっているのではないか…。と心配していたが、その心配を蹴散らすとても奥行きのある味わいだ。そして、嬉しいのは卵黄を崩して食べるとまた格別の美味しさが味わえる点。カレーと玉ねぎや鶏肉の香ばしさに、卵黄のまろやかさがプラスされ悶えるウマさだった。
土井さんのレシピは難しいと勝手に思い込んでいたが、作り出してみたら思いのほか簡単で、この自由カレーに関していうと「冷やご飯」を利用してフライパンでチャッチャッと、肩肘張らずに作れるのでズボラな人にもオススメだ。
自由カレーという名前に甘えて自由に作ってみたが、レシピ通りにしょうがを加えていたら今以上の美味しさを味わえたのだろう。今度は自由を封印して、この自由カレーを再度作りたいと心底思った。
(文:凧家キクエ)
【文献紹介】
土井善晴のレシピ100
著者:土井善晴
出版社:学研プラス
テレビ朝日系「おかずのクッキング」でもおなじみ、家庭料理研究家・土井善晴先生が厳選した現代の家庭料理100品。土井先生ならではの理論で、絶対においしく作れるレシピ、ムダを省いた作りやすいレシピです。家族みんなが笑顔になる、大好きな味ばかり!