キヤノンのミラーレスカメラであるEOS Mシリーズは、小型・軽量で低価格な「EOS M100」を中心に人気を博している。そこに、この3月から“EOS Kissシリーズ初”のミラーレスカメラ「EOS Kiss M」が加わったことで、これまで以上に注目を集めている。
しかも、このEOS Kiss MはEOS M100同様にエントリーモデルという位置づけながら、スペック上は上位モデルの「EOS M5」に勝るとも劣らない性能を持っており、初級~中級のユーザーにとっては、Kiss M、M100、M5のどれを選ぶのがベストなのか悩んでしまう点も多いだろう。そこで本稿では、新登場のEOS Kiss Mを軸に上位モデルのEOS M5やEOS M100と比較。それぞれの機種の特徴などを探ってみた。
EOS Kiss M(中央)とEOS M5(右)はEVFを搭載し、一眼レフに似たデザイン。EOS M100(左)はEVFを非搭載としたことで小型・軽量化されただけでなく、スッキリとしたスクエアボディとなっている。センサーサイズや画素数はほぼ横並びだが、後発のKiss Mは映像エンジンが新型の「DIGIC8」となっており、そのパフォーマンスや画像の仕上がりの違いが気になるところ。
【基本スペック比較】
数値上では最新の映像エンジンを搭載するEOS Kiss Mに注目
3機種の基本スペックを比較してみると、センサーサイズや画素数はほぼ同じで、AFに像面位相差AFの「デュアルピクセルCMOS AF」を採用している点も同様。目立つところではEOS M100のみEVFが非搭載という違いはあるものの、いずれも可動式(可動方向に違いはある)のタッチパネル液晶モニターが採用されているなど、あまり差を感じさせない部分が多い。
EOS Kiss Mには最新の映像エンジンが採用されていることもあり、連写速度が最高約10コマ/秒(サーボAF時は約7.4コマ/秒)と高速でAF測距点が最大143点、最高ISO感度が51200(感度拡張時)と、ほかのモデルに比べて数値上ではEOS Kiss Mが優れている点が多い。
では、上位モデルのEOS M5の利点はというと、連続撮影可能枚数がRAW+JPEGで約16枚(Kiss Mは約10枚)と多い点が目を引く。またEOS M100に関しては、やはり約302gと軽量で小型な点がポイントだろう。
このほか、動画撮影機能にも違いがあり、EOS M100とEOS M5がフルHD(1080/60p)対応なのに対し、EOS Kiss Mは4K/24p撮影にも対応している。しかも、ボディ内の電子式手ブレ補正とレンズ側の光学式手ブレ補正の協調制御が可能な「コンビネーションIS」採用(対応レンズとの組み合わせで機能)で高精細な4K動画の手持ち撮影なども行いやすくなっているほか、4K動画からの静止画切り出しも可能だ。ちなみに、コンビネーションISについては、EOS M5やEOS M100にも採用されている。
【操作性比較】
操作性には明確なクラス分けが! 撮影スタイルに合わせて選ぶべし
数字上でのスペックでは最新モデルであるEOS Kiss Mがやや優位という程度で、3機種間に格別大きな差はなかったが、その操作性を見てみるとクラス分けが明確に行われているのがわかる。
まず、最初級モデルといえるEOS M100は、撮影モードダイヤルに絞り優先やシャッター速度優先などのモードがなく、モニター上で設定する方式。そのため、撮影モードを撮影条件に合わせて頻繁に変える撮り方よりも、フルオートでの撮影をメインにして、背景をぼかしたり、動体を止めて写したりといった効果を狙うときのみ撮影モードを変えるといった使い方が向いている。その意味で、かなりコンデジに近い使い方ができるミラーレスカメラといった印象だ。
一方、最上位機であるEOS M5は、各撮影モードがダイヤルに配置されているのはもちろん、メイン電子ダイヤルやサブ電子ダイヤル、コントローラーホイールなどのダイヤル類を備え、各種の設定を撮影意図に合わせて変えながら撮るといった撮り方に向く。同社のミドルクラス以上の一眼レフカメラユーザーであれば、操作性が似ているためサブ機としても扱いやすいだろう。
EOS Kiss Mは、どちらかというとEOS M5に近い操作性となっているが、サブ電子ダイヤルやコントローラーホイールが省略され、ボタン類とメイン電子ダイヤルや十字キーとの組み合わせで設定変更を行う方式で、M5とM100の中間的な操作性といえる。
背面モニターに関しては、3機種共通の特徴としてタッチパネル液晶が採用され、各種の設定もタッチ操作で行える。これは、ダイヤル数の少ないEOS M100やEOS Kiss Mでは、特に有効な機能だと感じる。また、EOS M5やEOS Kiss MでのEVF使用時には、液晶モニターに触れることでAF測距点の変更が行える「タッチ&ドラッグAF」にも対応し、EVF使用時の操作性向上に一役かっている。