バッグの中に何十枚も紙の資料を詰めて打ち合わせに向かい、手帳や資料に会議の内容を書き込んで次の会議へと出発する。ビジネスマンによくある日常です。手書きなら文字や図が自由にサッと書けて便利ですよね。ただ、「あの日のメモはどこに行ったっけ?」「急に必要になった資料を置いてきてしまった!」……なんて事態も起こりがちです。
その不便を解決するデバイスが、富士通クライアントコンピューティングから発売されました。その名も「電子ペーパー」。パソコンやスマホ、タブレットとは異なり、まるで紙に記すようなサラサラとした書き心地を体験できます。大学ノートや方眼紙のテンプレートへの書き込み、PCで作成した文書をPDFに変換して手書きのメモを追記することなども可能。おまけに、重さは約251g(A5サイズ)、薄さ約5.9mmと非常に軽量で持ち歩きやすく、バッテリーは約3週間近く持つという長寿命です。
とはいえ、電子のメモ帳をどのように活用したらいいのか、イメージが湧きにくくもありますね。12月18日に行われた製品発表会の模様から、電子ペーパーの機能やコンセプトは本サイトで紹介しましたが、今回は、発表会で行われた高橋晋平さん(株式会社ウサギ取締役)と菅未里さん(文具ソムリエール)の対談から、お二人が考える電子ペーパーの魅力を伺ってみました。お二人は事前に電子ペーパーを数日間使い倒してみたそうです。
おもちゃクリエーター
高橋晋平さん
株式会社ウサギ 代表取締役。2004年に株式会社バンダイに入社、約10年間、キャラクターを使用しないバラエティ玩具の開発を担当する。国内累計335万個を発売、第1回おもちゃ大賞を受賞した「∞(むげん)プチプチ」や「∞エダマメ」、自分の名前を冠した「瞬間決着ゲーム シンペイ」を初め、「Human Player」「5秒スタジアム」「3億円」「ほじれるんです。」など、50点以上のおもちゃの企画開発、マーケティングに携わる。「一生仕事で困らない 企画のメモ技」「プレゼンをキメる30秒の作り方」など、ビジネス関連書籍も出版。
文具ソムリエール
菅 未里さん
大学卒業後、文具好きが高じて雑貨店に就職し、ステーショナリー担当に。現在は文具ソムリエールとして、商品企画、『マツコの知らない世界』をはじめとするテレビなど、メディアでの文房具の紹介、コラム執筆など目覚ましい活躍を続ける。著書に『毎日が楽しくなる きらめき文房具』(KADOKAWA)など。
企画はデジタルとアナログで発想する
――高橋さんはおもちゃの開発を手がけていらっしゃいますが、アイデアを書き留める作業はどのようにしていますか?
高橋 僕は15年くらいおもちゃ開発という仕事をしていますが、仕事のツールとしてアナログ、デジタル、ボイスレコーダーなど、試行錯誤を繰り返していました。そして現在は、デジタルとアナログを兼用しています。
情報をインプットするのは、完全にデジタルツールです。何か思いついたときは、スマホやPCでクラウドサービスに保存できるメモツールを使って箇条書きをしていきます。僕は性格がずぼらで色々書いているとなくしてしまうんですが、クラウドなら一カ所に保存されるので安心です。
高橋 そして企画を考えるときは、そのデータをExcelでアレンジしていきます。普段からまとめている情報をExcelにコピー&ペーストしていって、そこから連想したことをバーって書いていきます。アイディアを考える前半戦はテキストでコンセプトを作っていくんです。
その後はアナログになります。愛用しているのはルーズリーフですね。手書きのメモで、先ほど書いたコンセプトに果たしてニーズがあるのか、どういう風に具体化したら喜ばれるのかなどを、思考しながら整理します。今回、この部分を電子ペーパーで行いました。
――最後にアナログにするというのは、何か理由があるのでしょうか?
高橋 100%デジタルでモノを考えている時代もありました。ExcelやPowerPointなどの企画書のテンプレートを使って、それに当てはめて企画を考えていたのです。その結果、思いついた企画が色んなものの模倣になってしまいました。こういうものないかなと検索した時点で似通ったものになってしまうので、検索できる道具から離れる必要があると感じました。そこで、紙に書きながら、お客だったら欲しいだろうか、いくらだったら買いたいのか、などをまとめるようになりました。
――手書きの作業をルーズリーフから電子ペーパーに変えてみて、いかがでしたか?
高橋 貯めておいたデジタルデータを電子ペーパーで書いてみました。試してみたところ、自分の中で発見がありましたね。僕はずぼらですし、字や絵が汚いので、今までは思考した段階で書いたメモは捨てていたんです。そのためにノートではなく、ルーズリーフを使っていました。ところが、電子ペーパーで書いていくと、永遠に書き続けられるし、自動で保存されます。以前のメモも前に戻れば見られますし、捨てる必要はありません。ある日、数日前に書いたメモを遡っていたら、違う印象を受けて新たなひらめきもありました。電子ペーパーによって、自分の企画の作り方にも劇的な進化があるかもしれないと感じましたね。
絵とイラストですばやくメモが取れる
――菅さんは取材のシーンで電子ペーパーを活用したいとおっしゃっていましたが。
菅 今日発表された製品なので、まだ実際に取材先には持ち出せていませんが、活用できると思っています。文具メーカーに取材に行って、紙で資料をいただくことがとても多いのですが、念のためにと以前の資料も持つと、とんでもない量になってしまいます。でも電子ペーパーなら、すべてPDF化して持っていくことができます。実際にいろいろな資料を取り込んだので、準備は万端です。今回は取材先に電子ペーパーを持ち込んだときを想定してメモを書いてみました。
私は文字だけではなく、イラストを描いてメモを取ります。内容が合っているかどうか、その場で取材先の方に見ていただいて確認してもらうこともあります。タブレットでも画面に書き込めたりしますが、画面が滑りすぎるのもあって私はあまり相性がよくないのですね。でもこの電子ペーパーは紙のような摩擦感があり、とても書きやすいです。
――紙のような書き心地というお話が出ましたが、お二人は実際に使ってみていかがでしたか?
菅 文具業界だと「筆欲」という言葉があって、何かを書くために書くというよりも、書きたいから書くという楽しみがあるんです。この電子ペーパーにはそれがありますね。
高橋 僕も書くことが楽しくて、絵の練習をしました。タブレットでペイントソフトを起動して描くとなるとデジタル機器を使っている感じになりますが、電子ペーパーならお絵かきをする気分で描くことができます。
――最後に、菅さんは女性ならではの視点からおすすめポイントがあるそうですが
菅 はい、この電子ペーパーはとても薄くて軽いんです。封を開けて箱に入っている状態で見たとき、あまりの薄さに本体ではなく緩衝材なのかと思ったほどです。仕事ではA4サイズの資料を使うことが多いので、これまでA4サイズが入る仕事用バッグとプライベート用の小さめのバッグは分けていたんですね。でも、電子ペーパーならプライベート用バッグにも入るし、とても持ち歩きやすい。すでに手放せない気分になってますね!
筆者も発表会で電子ペーパーを試用しましたが、まずその軽さに驚きました。そしてその書き味は、タブレットでは感じられない、まさに「紙に書いているのに近い」感触でした。PCやスマホなどのように光が画面に反射することもほとんどないため、おそらく屋外でも見えやすいのではないでしょうか。容量は10GBですから、手書きメモならほぼ無限に書き込めると言っても過言ではありません。この電子ペーパーは、デジタルとアナログ双方の良さをうまく活かした製品と言えそうです!
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