パンにホップやイースト加えてビールを醸造するプロジェクトが、イギリスやベルギーで行われています。食品廃棄物を減らす運動の一環として始まったこの活動ですが、地ビールの人気が高いベルギーでは大きな広がりを見せています。
パンの廃棄をなくしたい
パンを材料としたビール作りが始まったのは、2013年のベルギー、ブリュッセル。捨てられてしまうパンからビールを醸造してしまうというアイデアが、地ビール王国であるベルギーで生まれたのは、実に自然なことだったのかもしれません。
「ブリュッセル・ビア・プロジェクト」はクラウドファンディングで支援を募りながら、年間30もの新しいレシピを作り出し、いまではブリュッセル市内のバーやレストランなど250か所以上で販売されているそうです。
そんなブリュッセルでの取り組みに刺激され、イギリスでも「トースト」という団体が、「トースト・エール」と呼ばれるビール作りを15年にスタートしました。このビール醸造で得た利益は100%、食品廃棄物をなくす活動を行う団体へ寄付されています。
麦芽の一部をパンで代替
トーストでは、当初ロンドン中のパン屋から廃棄されるパンを集めて原料として使っていました。そしてプロジェクトが大きくなるにつれ、現在ではサンドイッチ工場で廃棄されるパンの耳を使用しています。パンにホップやイースト、水などが加えられ、ビール作りが行われるわけですが、パンは麦芽の一部として使われ、できあがったビールにパンの味はまったくしないそうです(イギリスの有名シェフも「とてつもなくおいしいビールだ」と絶賛)。
【パンからビールを作るレシピ】
トーストがウェブサイトで公開しているレシピを簡単にご紹介しましょう(詳細は下記の関連リンクをクリック)。
- 乾燥したパンにモルト、オーツ麦、水を加え、67℃で60分蓋をして混ぜる。
- 1の水を排出、78℃の湯で洗いながら、麦汁が25Lになるように調整する。これにホップを加え、90分煮る。
- 2を20℃まで冷まし、イーストを加える。18℃前後で保ちながら7日間発酵。さらにビンに注ぎ、12℃前後の冷暗所で2週間保管し、瓶内発酵を行ったら完成。
先進国を中心に問題となっている食品廃棄物。捨てられてしまうものから新しい飲み物を生み出す取り組みは、「もったいない」という言葉がある日本で始まってもおかしくないかもしれません。
しかし、日本では、アルコール1度(1%)以上の飲み物の製造には酒類製造免許が必要となりますので、ビールキットなどを利用して自宅でビール作りを行いたい方は、1度未満になるように調整してくださいね。