富士フイルムのミラーレスカメラ「Xシリーズ」の最新モデル「X-T30」。小型軽量モデルながら、その性能は上位機に迫る勢いだ。今回はそんな小さなボディに詰め込まれた最新機能を徹底レビュー!
小型軽量で日常ユースに最適。それでいて機能も盛りだくさん
X-T30は、まず持った瞬間にとにかく驚く。重量が383gしかないのだ。ズームキットは2種類あり、そのうち今回のレビューでメインとして使用した沈胴式電動ズームのXC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZも135gと極めて軽い。X-T30と合わせてもペットボトル飲料と変わらない518gにしかならないのだ。
首から下げていても疲れにくく、握ったときの収まりもいい。そんな日常ユースに最適なX-T30だが、実は機能面ではこれでもかというほど機能を詰め込んだ高性能モデルとなっているのだ。
<作例①>
満開の桜。桜の淡いトーンをとても良く再現している。富士フイルムのXシリーズは、フィルムの発色を再現した「フィルムシミュレーション」機能により、カメラ内で極めて美しい色を作り出してくれる。桜には階調のやわらかいアスティアモードがおすすめだ。
X-T30はカメラ上面にダイヤルがたくさん付いている。一見すると複雑そうに見えるかもしれないが実際はとてもわかりやすく、直感的に使いやすい配置になっている。電子ビューファインダー(EVF)はボディのセンターに設けられ、一眼レフと同じスタイルで撮影が可能。このEVFには約236万ドットの有機ELパネルが採用されている。有機ELは彩度とコントラストが高く、黒がしっかりとしまって見えるのが特徴で、野外でもとても見やすい。
<作例②>
古民家の美しい窓枠。新緑の色味を見せて窓枠はシルエットで描くため露出補正は-1.7EVにした。露出補正ダイヤルが独立しているので扱いやすい。カリカリと回すダイヤルの感触も指先に心地よい。
一見すると内蔵フラッシュはないように見えるX-T30だが、ファインダー部分がパカっと開く。標準的な光量に加え、富士フイルム独自のフラッシュの制御「スーパーiフラッシュ」が搭載されているため背景などにも光が回りやすく、自然な仕上がりを得ることができる。
上面左肩にあるドライブダイヤルは中級機のX-T30だからこその仕様となっている。それはブラケット(BKT)とアドバンストフィルター(Adv)がそれぞれ2個用意されているのだ。
ブラケットはワンシャッターで露出の違う写真を連続で3枚撮影したり、3枚の色味を変えた写真を記録するなど、1回の撮影で失敗しないための保険的なドライブモードだ。アドバンストフィルターはその名の通り、画像に特殊な加工を施すモード。トイカメラやミニチュア、ソフトフォーカスなど多くのモードが用意されている。こうしたドライブは他機種ではそれぞれ1個しかないので、この点はX-T30がとても使いやすい。
<作例③>
テーブルの上に忘れられた木製の飛行機と桜の周りを歩く親子。こうした偶然性のある撮影では撮り直しができないため細かく設定変更するのも難しい。そんなときにはブラケット撮影して後からお気に入りの1枚をセレクトするのがいいだろう。またキットズームのXC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZは広角側での最短撮影距離が13cmと非常に短く、マクロ的な撮影も得意だ。
ボディの見た目は前モデルのX-T20を踏襲しており、よく見ない限りはX-T20なのかX-T30なのかわからないと思う。ただ一箇所だけ大きく違うところがあり、X-T30にはX-T3など上位機種と同じ「フォーカスレバー」が新たに採用されているのだ。フォーカスレバーはフォーカス位置を変更するためのレバーで、これまでの十字ボタンと違って8方向にダイレクトに移動できるため操作性ははるかに良くなった。
ローアングルやハイアングルを撮影する際に重宝するチルトモニターも搭載。子どもやペットの撮影では目線に合わせてカメラアングルも下げたいがなかなか被写体は止まってくれるものではない。そうした際にはチルトモニターを上に向けてカメラを下げるだけで対応できるため、動きにも対応しやすくなる。