11月2日。「ラグビーワールドカップ2019日本大会」が終わりました。とうとう終わってしまったと言ってもいいかもしれません。台風のなか熱戦が続いた素晴らしい大会でした。声をからして応援していた方も多いでしょう。
日本でワールドカップだなんて夢のまた夢
ラグビー・ファンだった伯父の影響で、私は学生のころからラグビーが好きでした。神戸に引っ越した1985年からは、特に地元である神戸製鋼コベルコスティーラーズのファンになりました。ただし、そのころは日本でラグビーのワールドカップが行われるなんて夢のような話でした。まして日本代表チームが勝つなどということは考えにくい状態でした。
そして2019年。待った甲斐があり、ついに日本でのワールドカップが実現しました。おまけに日本代表チームは快進撃。
夢中で応援しながらも、この勝利は本当に長い間、日本のラグビーの質を高めてきた人たちがいたからだと感じていました。もちろん、勝利を勝ち取ったのは現在の代表選手とジェイミー・ジョセフヘッドコーチなどの大会関係者です。けれども、これまで続いてきた長い長い努力が日本をまさかの8強に前進させたに違いありません。
日本チームは準々決勝で南アフリカに負けてしまいましたが、試合前、私は日本が勝つと思っていました。4年前のイングランド大会で、日本は勝利をおさめていたからです。「ブライトンの奇跡」と呼ばれるこの勝利は、「ブライトン ミラクル」というタイトルの映画にもなりました。
主人公はラグビー元日本代表で、現在はイングランドのヘッドコーチをつとめるエディ・ジョーンズです。
エディ・ジョーンズの手腕
『ハードワーク 勝つためのマインド・セッティング』(エディ・ジョーンズ・著/講談社・刊)には、エディ・ジョーンズががいかにして日本のラグビーを強くしたのかが書かれています。と言っても、それはラグビーに限った話ではありません。
ビジネスにも、教育にも、おそらく芸術分野にも、すべての仕事にあてはまる珠玉の知恵が満載です。自分の人生を成功に導くにはいったい何をすればいいのかを知りたいのなら、この本を読むと答えが見つかると思います。
準備を怠るな
紹介したい知恵はたくさんありますが、とくに印象に残ったことがらをいくつか紹介します。
私はどんな事でも、成功は、準備がすべてだと思います。
勝つためには、準備をしなければなりません。
スポーツはもとより、ビジネスでも競争相手がいます。どんな事でも、成功とは、相手に勝つことにほかなりません。勝ちたいなら、相手を上回る準備をするしかないのです(『ハードワーク 勝つためのマインド・セッティング』より抜粋)
まったくもって、耳に痛い言葉です。準備というのは、地味な作業でついさぼりたくなります。準備不足が結局は不安感をあおり、持てる力を発揮できないまま、成功に至らないとわかっていながら、つい準備をさぼる自分にトゲのように刺さる教えでした。
鬼になれ
エディ・ジョーンズというと、何事もはっきり意見する方だという印象がありました。どちらかと言えば、他人の意見になど耳をかさない感じがしていました。けれども、彼は他の分野で活躍する人の意見に耳を傾ける一面も持っているのです。
たとえば、彼は読売ジャイアンツの原辰徳監督を尊敬しています。侍ジャパンを率いて2009年のワールド・ベースボール・クラシックで優勝し、世界一になったその力を評価しているのです。
エディ・ジョーンズに頼まれて話をした原監督は、ラグビー選手を前にこう言ったそうです。
フィールドでは「鬼になれ」
(『ハードワーク 勝つためのマインド・セッティング』より抜粋)
運命のスコットランド戦を前にリーチ・マイケルが言った言葉は、原監督からの教えだったのです。
欠点は誰にでもある
エディ・ジョーンズは女子サッカー日本代表の元監督、佐々木則夫もすぐれたリーダーとして尊敬しているそうです。世界を基準にした時、身体的にはどうしても不利な立場ながら、そこを起点にして戦術を考えているからです。
欠点は、誰にでもあります。
しかし、それをネガティブにとらえると、そこで負けは確定してしまいます。要は欠点とは、一つの条件に過ぎないということです。
欠点を欠点ととらえるか、ただの条件と考えるかが、勝利や成功への大きな分かれ目になるのです(『ハードワーク 勝つためのマインド・セッティング』より抜粋)
確かに……。体格を言い訳にしていたらいつまでたっても前進できません。それを克服するために何をすべきかを考えるべきだということなのでしょう。
正直な力
ラグビーのコーチ術は、ラグビー選手にだけ有効なわけではありません。「準備を怠るな」「鬼になれ」「欠点は誰にでもある」は、スポーツ選手だけではなく多くの分野で通用するマインド・セッティングでしょう。
さらに、エディ・ジョーンズがすごいのは自分の過ちも包み隠さず明かすところです。
たとえば、南アフリカの逆転勝利のとき、彼は引き分けでいいと思い、「テイキング・スリー!テイキング・スリー(3点で言い、3点でいい)」と指示しました。それなのに、選手達は自分たちで考えトライで5点をもぎとったのです。
コーチの言葉に従わなかったことを、彼はわざわざあとがきで告白し、部下がリーダーを越えたと賞賛しています。
ラグビー・コーチとゴールドマン・サックス証券会社社長の関係は?
強気の言動と、細やかな配慮、そして自分の過ちを隠さない正直さ。これがエディ・ジョーンズをエディ・ジョーンズたらしめていると言えましょう。
そして、この態度は日本の財界人の心をとらえてはなしません。ゴールドマン・サックス証券株式会社社長の持田昌典が解説を書いていることにも、それが示されているといえるでしょう。二人は『勝つための準備』という共著があるほど、信頼しあった仲なのだそうです。
【書籍紹介】
ハードワーク 勝つためのマインド・セッティング
著者:エディ・ジョーンズ
発行:講談社
ワールドカップで日本に歴史的な勝利をもたらし、日本中を熱狂させたラグビー元日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズが、チームを勝利に導くための方法論を自らの言葉で語った。「マイナス思考を捨てれば、誰でも成功できる」「向上心のない努力は無意味」「“完璧”にとらわれるな」「戦いに興奮はいらない」など、彼のメッセージはビジネスにも役に立つものばかり。これを読めば、エディー流「成功するための心構え」が必ず身につく!
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