スペインやポルトガルに行くと、夕食はBARで済ませてしまうことが多い。夕食の時間が遅い彼の地ではレストランが開くのが早くて21時。開いたばかりは客がほとんどいないので注文を取りにくるのが22時、料理が並んで食べ始めると23時近くになってしまうこともある。
で、この時間になってやっとレストランは現地の人々で賑わい始め人々は深夜まで飲み食いしているのだ。日本人の夕食時間の平均が19時ごろだから、とても彼らの習慣には合わせられない。だから早くから開いているBARに行き、ビールを飲みながら、カウンターに並んでいるおつまみを何品か注文するのだが、それらはどれもこれもめちゃめちゃ美味しいのだ。その国の風土から生まれた気取らない、けれども絶品の料理は居酒屋にこそあるのかもしれない。
『世界のおつまみレシピ』(本山尚義・著/主婦と生活社・刊)は、料理レシピ本大賞で、特別選考委員賞を受賞した本山シェフが、世界を旅しながら味わい、覚えた選りすぐりのおつまみを紹介した一冊だ。
あなたの家が世界の酒場に!
本書はお酒に合う世界の料理レシピだが、難しいものはない。また食材も普段から家庭にあるもの、近所のスーパーで揃うものだけで作れるように工夫してある。
世界中のお酒好きが飛びつく”すぐでき”おつまみ12
ヨーロッパのおつまみ
アメリカのおつまみ
オセアニアのおつまみ
アフリカのおつまみ
アジアのおつまみ
という構成で、それぞれの地域のおつまみに合う簡単に作れるカクテルも紹介している。
これから年末にかけて、いつもとちょっと違う志向のホームパーティを開いてみたい考えている方にこのレシピ本は大いに役立つはずだ。本山さんもこう記している。
旅行で訪れた国のことを思い出しながら、テレビでスポーツ観戦しながら、各国のユニークな食文化の話をネタにしながら、おつまみと、お酒を大いに楽しんでもらえればと思います。
(『世界のおつまみレシピ』から引用)
世界64か国、約100品ものおつまみが紹介されていて、あれも食べたい、これも作りたいと迷うばかりだ。では、何品かを抜粋してみよう。
”すぐでき”のお手軽カナッペ4種
パンやクラッカーに好み食材をのっけるだけのカナッペはパーティの前菜として人気だ。本書では4か国のカナッペ&ディップを紹介している。
*メキシコ/ワカモーレ
アボカドにレモン汁、トマト、玉ねぎ、カイエンヌペッパー、塩を加え、パクチーを飾ったディップをトルティーヤチップスにつけて食べる。ねっとりさっぱりで、ちょいピリ辛の味が病みつきになりそう。
*スペイン/パン コン トマテ
オーブントースターで焼いたバケットにミニトマトの切り口をこすってしみ込ませ、塩を振ってオリーブオイルをたらすだけの超簡単レシピ。噛むとトマトのじゅわっ!がたまらない。
*ルーマニア/サラダ ダ ヴィネテ
焼きなすをミンチ状にし、玉ねぎ、マヨネーズ、レモン汁、オリーブオイル、塩こしょうで味付けし、焼いたバゲットにのせ、ミニトマトとチャービルを飾る。焼きなすの新感覚の味は、絶対にウケる!
*イギリス/スコッチ ウッドコック
サンドイッチ用のパンを4等分してトーストし、無塩バターと刻んだアンチョビを塗る。この上にスクランブルエッグをのせ、パセリをふる。ひと口食べれば気分はイギリス紳士に。
みんな大好き、世界のコロッケ
コロッケはどこの国でも大人気だそう。国が変われば中身が変わるのがおもしろい。
*アルバニア/チフチ(ミント入りチーズコロッケ)
ご飯にミント、パルメザンチーズ、塩を混ぜて丸め、衣をつけて揚げたもの。ご飯とミントの意外なマッチングがくせになりそう。
*イギリス/スコッチエッグ
合いびき肉を使ったミートローフ生地で、ゆで卵を包んで衣をつけて揚げ、ウスターソースで食べる。懐かし味にホッとする。
*イタリア/アランチー二(ライスコロッケ)
トマトリゾットにモッツァレラチーズ入れて丸め、衣をつけて揚げる。とろ~りチーズのおいしさがたまらない。
*オランダ/ビターバレン(牛肉のコロッケ)
牛ひき肉、玉ねぎ、にんじん、にんにくをバターで炒め、市販のホワイトソースを加えたものを冷蔵庫で冷やしてから丸め、衣をつけて揚げる。こっくり、トロトロが美味!
*エジプト/ターメーヤ(そら豆のコロッケ)
ゆでてマッシュしたそら豆に、炒めた玉ねぎとニラ、コリアンダーパウダー、溶き卵、強力粉、塩こしょうを混ぜて丸め、黒ごまをまぶして揚げる。中身はそら豆色で、ほろ甘な新食感。
*ポルトガル/パステル デ バカリャウ(たらのコロッケ)
本来は干しだらを使った料理だが、本書ではたらの切り身で代用。ゆでて身をほぐしたたらに、ゆでてつぶしたじゃがいも、玉ねぎ、パセリ、溶き卵、塩こしょうを混ぜ、丸めて揚げる。たらの風味をしっかり感じるので、魚好きにおすすめのコロッケ。
おつまみに合うオリジナルカクテル
この本では世界のおつまみに合うお酒として、オリジナルカクテルのレシピもたくさん紹介されている。各地域のカクテルをひとつずつあげておこう。
*ヨーロッパ/ホット リモンチェッロ
イタリアの伝統的なリキュール、リモンチェッロにお湯を注いで、レモンスライスを飾る。冬にぴったりで、体が温まるカクテルだ。
*アメリカ/ディーゼル
黒ビールとコーラを1:1で合わせるビアカクテル。黒ビール苦味とコーラの刺激が互いをひきたて合う。
*オセアニア/エスプレッソマティーニ
シェーカーに氷、ウォッカ、シュガーシロップ、コーヒーを入れて泡立てる。ビターでリッチな飲み心地。
*アフリカ/サバンナの風
アフリカを代表するクリームリキュール・ワイルドアフリカをソーダで割る。ひと口飲めば、サバンナの情景が目に浮かぶ。
*アジア/ガネーシュの祈り
氷を入れたグラスに紅茶リキュールを入れ、牛乳を満たしてステアする。インドのミルク紅茶のやさしい味がするお酒に。
この他にも”うち飲み”を楽しくするアイディアが満載なので、ぜひ参考に。
【書籍紹介】
世界のおつまみレシピ
著者:本山尚義
発行:主婦と生活社
2018年に料理レシピ本大賞で、料理部門の特別選考委員賞を受賞した旅するシェフ・本山尚義さんの初のおつまみ本ができました。日本でフレンチを学んだあと、世界中を旅しながら現地の人に料理を教えてもらってきた本山さん。帰国してからも、日本にいる外国人や大使館の方から料理を学び、世界の料理を日本で紹介しています。本書では、ヨーロッパ、アメリカ、オセアニア、アフリカ、アジアと、エリア毎に分け、世界各地の地域色豊かなおつまみレシピを100以上も紹介。各エリアのおつまみに合うカクテルやビアカクテルも30レシピを掲載しています。
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