米ラスベガスでは1月7日からエレクトロニクスの祭典「CES 2020」が開催されています。毎年CESに出展するパナソニックは現在開発を進めているVRグラスを出展。HDR高画質を実現した初のVRデバイスを体験してきました。
装着の負担が少ないメガネタイプのVRグラス
今回パナソニックが初披露したVRグラスは頭にかぶるゴーグルタイプではなく、より一般的な眼鏡に近く軽快に身に着けられる装着性能を実現しています。開発途中の製品なので形状や質量は確定していませんが、筆者が身に着けてみた感覚としては、まったく違和感がなく、装着した状態で頭を上下左右方向にスムーズに動かしながらコンテンツが視聴できました。
本機が搭載する超小型のマイクロ有機ELパネルの開発は、米国に拠点を置いてウェアラブルヘッドセット向けのキーデバイスを開発・販売するKopin(コピン)とパナソニックが共同で行っています。表示はフルHD対応ですが、今回はパナソニックが用意した8K/HDR画質の実写映像をパソコンで再生して、本機で再生できるフォーマットに変換したデータをUSB Type-C経由で入力して視聴しました。
今回体験できた試作機の形状も最終形ではなく、PCやスマホとの接続を必要としないスタンドアローンタイプにすることも検討されているそうです。
画質に真っ向勝負でこだわった
本機を体験して、何より驚いたのは本機がシアター品質の高画質を実現していたことです。これまで筆者が体験してきた多くのVRグラス、VRヘッドセットはディスプレイ表示のドットの粗さがわかるものばかりでした。このパナソニックの試作機はリビングで見る有機ELテレビの映像に迫るほど明るく色鮮やかで、画素密度もわからないぐらい滑らかで臨場感あふれる映像を実現していました。
本機の開発に携わるパナソニック アプライアンス社 技術本部の柏木吉一郎氏は「VRデバイスも、改めて映像エンターテインメントの基本に立ち返って“画質”を追求することで、理想とする没入体験が実現できることを証明したかった」として、本機が高画質を“真っ向勝負”で突き詰めたエンターテインメント向けデバイスであると話していました。
画質がいいとVRが楽しい!ようやく期待がわいてきた
VR映像がストレスなく見られると、映画やゲームを楽しむ用途だけでなく、自宅にいながら海外の街に出かけたり、博物館や美術館を巡る“バーチャルトリップ”の用途が現実味を帯びてきます。
筆者がこの日の2本目のデモンストレーションとして体験させてもらった、京都の仁和寺・金堂の映像は圧巻でした。金堂内部を3Dスキャンでデータ化した立体情報の上に写真を合成したCGデータは、金色に輝く仏像の鮮やかな色彩と立体感が、HDR映像によって思わず息を吞んでしまうほどリアルに再現されます。ふだん一般公開されていない場所を、自分のペースでゆっくりと歩きながら観覧したり、本機のような高画質VRデバイスが現実のものになることで、観光名所や美術館の楽しみ方が一変しそうな実感がわいてきました。
今回の試作機ではコンテンツの音を着脱可能なカナル型イヤホンで体験しましたが、これをオープン型のイヤホンとするか、またユーザーが愛用するヘッドホンやイヤホンを接続できるようにしたり、本体の仕様やデザインについては出展の反響を見ながら今後も検討を続けていくそうです。
2020年の春には日本国内でも5Gの高速ネットワークサービスの商用化が始まります。パナソニックは5G時代の新しい映像エンターテインメントの柱のひとつにVRを位置づけながら、今後も様々な用途に応用できる「高画質なVRグラス」の開発と、価値あるサービスの創出に力を入れていきたいと柏木氏がコメントしていました。本機は今年のCESで筆者が触れる展示の中でも、最も強く記憶に残るデバイスのひとつになりそうです。