スポーツ
2020/3/6 18:00

世界最強ランナー・上田瑠偉が教えるトレイルランニングに必要な装備とその理由

トレイルランニング(トレラン)は、マラソンと同じ走る行為ですが、マラソンが舗装されたアスファルトの上を走るのに対し、トレランは山の中。大会では給水所が設けられているマラソンに対し、トレランの水分補給は自前が基本など、環境が大きく違います。そのため、トレランならではの装備も必要です。そこのところを、日本最強のトレイルランナー・上田瑠偉選手に教えてもらいました。

 

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↑普段とは違う環境のため、あらゆる状況を考えた装備が必要

 

山ならではの状況に備えたウェアと専用シューズ

トレーニング中に急に雨が降ってきた場合、マラソンなら屋内に駆け込むこともできますが、トレランではそうはいきません。そして、マラソンで主に走る舗装された道とは違い、トレランのコースは岩場や木の根、滑りやすい土の上など、起伏に富んでいるため、専用のウェアやシューズが必須なのです。

 

↑ウェアは防寒にプラスして、雨を通さない防水性の高い素材が理想

■防寒着

「山の天気は本当に変わりやすいので、いつ雨が降ってくるか分りません。もちろん天気予報はチェックしますし、天気図が読めれば対策はできると思います。基本的に標高が上がれば上がるほど気温も下がってきますし、トレランは常に走っているわけでもないので体温が下がるときもありますから防寒着は必須です。夏場でも必ず携帯しましょう」

 

 

↑専用シューズは土の上でも滑りにくい突起や、異物から足裏を守る厚底などのソールが特徴

■シューズ

「山を走るうえで、まず土の上を走ったりしますので、滑りにくくするためにクリップ(突起)がついてます。一般的なランニングシューズのソールは、まっ平らだったりするのですが、突起がついているのが一番大きな特徴ですね。それと、石の上を走ったり木の根っこの上に足を置いたりするので、厚めのミッドソールや衝撃を吸収するテクノロジーが入っています。トレランは推進力よりも足の保護が目的ですから、カーボンが内蔵されたミッドソールとは違います」

 

大会によっては、街中で走るようなランニングシューズでの参加を禁止しているところもあります。トレラン専用シューズは、最近はスポーツ量販店よりも登山用品店のほうが品ぞろえも充実している場合が多いそうです。

 

自分の身を守る装備をトレラン専用ベストに収納

もしものことを考え、その対策をしたうえで山に入る。けがをしたとき、道に迷ったとき……。どうして自分の身を守るかという観点から、そろえるべき装備を教えてもらいました。

 

↑専用ベストで携帯する、左からヘッドライト、ファーストエイドキット、GPSウォッチ

■専用ベスト

「水や小物を入れるベストは必須です。リュックサックでもいいのですが、トレラン用は走る目的で作られているので揺れにくかったりしますので、そういう物を用意したほうがいいかと思います。防寒着も背中のポケットに収納することができます」

 

■ファーストエイドキット

「一般的な救急箱のような、包帯までは入っていませんが、絆創膏やガーゼなどが入ったセットで、登山用品店などで取り扱っています。骨折などの大けがには対応できませんし、ほとんど使うことはありませんが、携帯することで安心できます」

 

■GPSウォッチ

「山道では道迷いもよくあります。登山地図のアプリは何種類かありますが、このGPSウォッチを持っていれば、スタート時に作動しておくと迷ったときにスタートした地点まで案内してくれます。経験談ですが僕自身、こういうデバイスを知らなかったころは、適当な道を行って、わからなくなるとスタート地点まで戻っていました」

 

■ヘッドライト

「山道とロードでは同じ20kmでもタイムは倍ぐらい違います。それと、自分の体力を把握していないうちは、思ったより下山時間が遅くなり日が暮れてしまうこともあります。ハンドライトでもいいのですが、ライトを持っていくことをオススメします」

 

↑左から1.5Lのハイドレーションシステムと、450ml、600mlパック

■ハイドレーションシステム

「ハイドレーションシステムがあれば、ベストの背中部分に大容量のパックを入れて、手を使わずにチューブで走りながらでも簡単に水分補給できます。メリットは、たくさん水を運べることですが、デメリットはどれだけ減ったかわからないこと。小分けのパックはベストの前ポケットに入れて携帯します。ペットボトルのようにキャップを回す手間がなく、中身がなくなったらコンパクトに畳めます」

 

最初は経験者と一緒かグループランに参加しよう

最初のころはどのような装備が必要なのか、ピンと来ません。そのため、最初は経験者と一緒かショップなどが主催するグループランに参加することを上田選手はススメています。

「経験者がいると、コースをどれくらいの時間で走り切ることができるか、道迷いのリスクも減ってきます。初めから装備を全てそろえるのも大変ですし、経験者がいることで安心感も生まれます。最近は登山用品店にトレランのコーナーがあり、そこでよくグループランを開催していますので、そういったところから始めるのもいいかと思います。

 

初めての方にとって、面倒臭いなと思われるようなことを言ってしまいましたけど、最初だからこそ知っていてほしいんです。けがやトラブルなくトレランを楽しむためにも、しっかり守ってほしいと思います」

 

トレランは転倒や滑落などの危険性が高いだけに、安全面の注意は欠かせません。十分な装備を用意して、自分の体力に合わせて無理せず楽しみましょう。

 

↑シリーズ最終戦も優勝で、年間チャンピオンに輝いた上田選手

 

【プロフィール】

上田瑠偉(うえだるい)

1993年10月3日生まれ。長野県大町市出身。コロンビアスポーツウェアジャパン所属。小学生からサッカー。中学で陸上を始め、駅伝の名門・佐久長聖高校に進学。早稲田大学では陸上同好会に所属。10代最後の思い出レース「東京・柴又100km」でコロンビア モントレイルにスカウトされトレイルランニングを始める。2014年ハセツネCUP最年少&大会新記録で優勝。16年「ウルトラトレイル・デュ・モンブラン CCC(101km)」準優勝、「スカイランニングユース世界選手権」優勝、スカイランニングの「アジア選手権」優勝。19年「MIGU RUN SKYRUNNER WORLD SERIES」年間総合優勝。

 

撮影/中田悟

協力/コロンビアスポーツウェアジャパン 写真提供/Sho Fujimaki

 

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