同じダンサーであっても音楽のジャンルが違えば、異なる踊りを見せてくれるもの……。と思うのは、どうやら人間だけのようで、AIの意見は違うようです。フィンランドの大学の研究で、どんなジャンルの音楽に合わせて踊っていてもAIは正確にダンサーを識別できることがわかりました。
ダンスには、社交的なのか神経質なのか、どんな気分なのかといった人の性格や特徴が出ているらしい--そんな研究を行っているのが、フィンランドのユヴァスキュラ大学の研究者たち。この研究チームはモーションキャプチャー技術を活用して、ダンスの動きから、AIを使ってその音楽のジャンルを導きだすという実験を行いました。
音楽のジャンルを解析するために、73人のダンサーに、ブルース、カントリー、エレクトロ、ジャズ、メタルなど8つの異なるジャンルの音楽に合わせて踊ってもらい、その動きをモーションキャプチャー技術を使い分析。ダンスは特に振り付けが決まっているわけではなく、個々のダンサーが音楽を聴いて感じるままに自由に踊ってもらいました。
その結果、ダンサーが踊っていた正しい音楽のジャンルをAIが当てた確率は30%以下という低さでした。しかし、音楽のジャンルを問わずダンサー個人をAIが識別できた確率は94%という高い精度だったことがわかったのです。
つまり、ダンサーは流れる音楽の曲調にあわせてさまざまな動きを見せているつもりかもしれないけれど、AIから見ればその差はあまりないということ。むしろ、同じダンサーであれば音楽のジャンルが違っても、個々に特徴的な似たような動きが出てしまっているのかもしれません。
ただし、ヘヴィーメタルに関しては、音楽にあわせて頭を激しく上下に振るヘッドバンギングが有名で、多くのダンサーがそのような動きをしていたため、AIのダンサー識別率はやや低い結果となったそうです。
この実験結果が意味することは?
この研究チームがもともと行ったのは、ダンスの動きにあわせてAIがその人が踊っている音楽のジャンルを推測できるかという実験。しかし彼らの思惑とは裏腹に、AIは音楽のジャンルを当てることはあまりできませんでした。それよりも明らかになったのは、どんな曲であろうと、人のダンスの動きにはそれぞれ特徴が出てしまうということ。
この研究チームはAIの開発に興味を示していませんが、ダンスには個々の特徴が出てしまうということは、顔認証システムや指紋などと同じように、「ダンス認証システム」なるものが将来登場してもおかしくないのかもしれません。