車中泊やキャンピングカーを楽しんでいる人たちの間で、昨今広く聞かれるようになっているキーワードが「VAN LIFE(バンライフ)」。その名の通りバン(クルマ)で暮らすライフスタイルのことで、欧米を始め世界で大きな広がりを見せています。試しにInstagramやTwitterで「#VANLIFE」のハッシュタグで検索してみてください。何百万という投稿を目にすることができるはずです。日本でも少しずつ市民権を得てきているこの言葉、実際にバンライフを送っている人に取材し、そのライフスタイルを垣間見てみましょう。
自分好みのバンをDIYで車中泊仕様に
海外のバンライフを覗いてみると、旧いバンをベースに思い思いのカスタムをDIYで施すのが基本スタイル。元々の内装を剥がしてウッド素材を貼り付け、ログハウスのようなインテリアになっているものも少なくありません。このスタイルに憧れるのは筆者だけではなかったようで、近年は複数のキャンピングカーメーカーから、ウッディーな内装のバンライフを謳ったモデルがリリースされています。
バンライフを語る上で欠かせない存在が、元はラルフローレンのコンセプトデザイナーだったフォスター・ハンティントンという人。仕事に追われる忙しい生活を捨て、生活に必要な最小限のモノだけを自分のバンに詰め込んでバンライフを始めました。そして、その生活の中で出会った人たちや仲間の写真を集めた「HOME IS WHERE YOU PARK IT」という写真集を出版。この本は、世界中のバンライファーたちのバイブル的な存在となっています。
ログハウスのような内装をDIYで実現するのは、ちょっとハードルが高そうですが、自分の手でバンを快適な車中泊仕様に仕立てるのは工夫次第で何とかなるかもしれません。今回紹介する矢井田さん夫婦は、昨年から自宅を引き払い車中泊生活を送っているガチのバンライファー。生活の拠点としているのは、トヨタ「ハイエース」をDIYで車中泊仕様とした「サニイ号」です。
結婚した当初から「クルマで世界を旅する」ライフスタイルに憧れていたという矢井田さん夫婦。はじめはキャンピングカーに惹かれていたとのことですが、費用やサイズなどのハードルが高く、あきらめかけていたところで海外のバンライフを楽しんでいる人たちの存在を知り、中古の「ハイエース」をベースに自分たちで車中泊仕様にカスタムすることにしました。
コンセプトは今まで暮らしていた家で使っていたものを、極力そのまま持ち込むこと。メーカーが仕立てたキャンピングカーとは異なるスタイルですが、確かに自宅にいるような雰囲気で絶妙に落ち着く空間に仕上がっていました。断熱などの加工も基本的にDIYで行っているので、よく見ると手作り感が伝わってきますが、新たにかけた費用は数万円ということでキャンピングカーに比べると圧倒的に安価で”住めるクルマ”を導入できます。
カスタムする際には、穴を開けたり車体への加工は一切行っていないとのこと。これは、中古の「ハイエース」は高値で取り引きされているので、手放す際にも買い手がつきやすいようにという配慮です。このクルマでバンライフを始めてから、寒冷地でも車中泊したそうですが、それでも凍えるようなことはなかったとか。自宅で使っていた家具をできるだけそのまま使うという手法も、費用を抑えるためには有効そうです。
バンライフの魅力、そして仕事はどうする?
”移動できる家”を手に入れ、バンライフを始めてから季節に合わせて気持ちのいい場所に移動したり、絶景スポットで泊まってその中で目覚めるというように、生活ごと移動できるライフスタイルを満喫している様子。一番の魅力は、いろんな土地を訪れて様々な人と出会えることだとお2人は口を揃えます。コロナ禍の影響で、現在は旅を控えているようですが、収束後は再び移動を開始する予定だとか。
気になるのは、バンライフを送りながら仕事をどうしているのかということですが、裕左さんは当初リモートワークで会社に所属していたそうですが、今はフリーランスでウェブデザイナーやライターとして活動中。千秋さんも同じくデザインやライティングの仕事をしています。2人で運営するブログ「道なき未知」は、バンライフでの経験を活かして車中泊で役立つ情報やグッズなどが紹介されています。なかなか内容は濃くて、家を引き払うところまでいかなくても車中泊を楽しむ上でも参考になるはずです。
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