乗り物
クルマ
2020/9/4 21:00

新世代の「アイサイトX」は何がすごいのか? 「新型レヴォーグ」で体験した安全運転支援システムの最前線

スバルは8月20日、新型「レヴォーグ」の先行予約を開始。6年ぶりのフルモデルチェンジとなる新型レヴォーグの正式な発表日は10月15日が予定されています。今回は先進安全運転支援システム(ADAS)で大幅な進化を遂げた新世代「EyeSight(アイサイト)」をプロトタイプの事前試乗会で体験して参りました。

↑新型レヴォーグの最上位グレード「STI Sport EX」

 

新型レヴォーグの進化レベルは?

まずは新型レヴォーグの概要を紹介しましょう。ボディサイズは全長4755×全幅1795×全高1500mmで、現行よりも65mm長く、15mm幅広くなりました。それでいて、立体駐車場にも収まるなど国内の使用環境に十分配慮したサイズとなっています。全体にエッジが効いたデザインで身をまとい、立体的なフロントグリルからフェンダーは斬新さを伝えながら新世代レヴォーグであることを実感させてくれます。

 

ラインナップされたエンジンは新開発の水平対向4気筒DOHC 1.8リッター直噴ターボのみとなりました。最高出力130kW(177PS)/5200-5600rpm、最大トルク300Nm(30.6kgfm)/1600-3600rpmを発生し、トランスミッションは新開発のリニアトロニックCVT、駆動方式は4WDを採用します。ラインナップは、基本グレードである「GT」「GT-H」「STI Sport」の3モデルに加え、「アイサイトX」を標準搭載した「GT EX」「GT-H EX」「STI Sport EX」の計6モデルを用意。

 

ダッシュボードはセンターに11.6インチのタテ型ディスプレイを配置し、わずかに高めにシフトしたことで包まれ感を演出。センターコンソールと両サイドのアームレストは素材を合わせ込み、シート表皮はグレードごとに違えても質感を重視した造り込みがされており、その質感は間違いなくクラス随一と断言していいでしょう。しかも、シートは単に座り心地だけにとどまらず、長時間座っていても姿勢が崩れにくくする工夫もされているとのこと。

↑11.6インチ大型ディスプレイを中心に先進的な印象が伝わってくる

 

↑内装の統一感は細部までに及び、質感か確実にレベルアップ

 

先進安全運転支援システム新世代「アイサイト」を体験

そして、ここからが今日の本題。新世代「アイサイト」についてです。本システムでは、広角化したステレオカメラに加えて、フロントバンパー左右に77GHzミリ波レーダー、電動ブレーキブースターを組み合わせたスバル初のシステム。これにより、右折時の対向車、左折時の横断歩行者、横断自転車との衝突回避を新たにサポートできるようになったのです。

↑新型レヴォーグに搭載された新世代アイサイト。スウェーデンのVeoneer社製ステレオカメラを初採用

 

↑新世代アイサイトのコントロール部。右並び中段がメインスイッチ

 

さらに、約80km/h以下では「プリクラッシュステアリングアシスト」がブレーキ制御に加えて操舵制御も行って衝突回避をサポート。前側方から車両が近づくと警報を発してブレーキ制御を行う前側方プリクラッシュブレーキ・前側方警戒アシストもスバルとして初めて搭載しました。また、「リヤビークルディテクション(後側方警戒支援システム)」では、斜め側方から近づく車両に対して音と表示で警告しつつ、それでもなお車線変更をしようとすると、電動パワーステアリングが元の車線に押し戻す力強くアシストします。

 

新型レヴォーグではこれらの機能を全グレードに標準で装備。スバルの安全思想がしっかりと反映されたと言っていいでしょう。

 

加えて新型レヴォーグでは「アイサイトX」と呼ばれる+35万円のオプションも用意しています。準天頂衛星「みちびき」やGPSから得られる情報と3D高精度地図データを利用することで、より高度な運転支援機能が上乗せされるパッケージです。その中にはナビ機能など3つの表示モードを備えるフル液晶パネルメーターも含まれます。しかし、中でももっともインパクトある機能と言えるのが“渋滞時ハンズオフアシスト”でしょう。これは約50km/h以下の渋滞時になるとステアリングから手を離しても先行車に自動追従する機能です。

↑オプションの「アイサイトX」で装備される12.3インチのフル液晶メーター

 

使ってみればその時の快適さは格別なものでした。停止しても10分以内なら先行車に追従して発進してハンズオフ走行が再開。渋滞時だけなの? と思う人もいるでしょうが、渋滞中こそ運転のストレスはたまりやすいわけで、その低減にこの機能は大きな効果を発揮するのは間違いありません。ただ、スマートフォンを操作するなどして、視線を前方から外すとこの機能は解除されてしまいます。この機能は自動運転を実現したのではなく、あくまで運転の責任がドライバーにある自動運転レベル2のカテゴリーに入るものだからです。

↑「渋滞時ハンズオフアシスト」では、前方を見ている限り50km/h以下でハンズオフで走行できる

 

↑渋滞時ハンズオフアシスト走行時のメーター内表示。左下のアイコンでドライバーの視線を捉えていることが分かる

 

3D高精度マップには料金所や道路カーブの情報まで収録されており、衛星で測位した高精度な位置情報とリンクして、この時の制御も自動化しました。試乗会では料金所に見立てた場所を用意していましたが、ここに近づくとメーター内にその表示を出して約20km/hまで自動的に減速していきます。カーブでは同じようにカーブがあることを示すアイコンを表示した後、そのコーナーに応じて最適かつ安全な速度で走行するということです。

↑料金所として設定した場所では、メーター内にそれを表示して自動的に最適な速度に減速していく

 

アイサイトXでは、24GHzのマイクロ波レーダーを使った「アクティブレーンチェンジアシスト」も搭載されました。ドライバーがレーンチェンジをしようとウインカーを操作すると、レーダーが斜め後方の車両の存在を検知。システムが安全と判断すると自動的にレーンチェンジへと移行します。この時ドライバーはステアリングに軽く手を添えておけばOK。レーンチェンジが完了すればウインカーは自動的に停止します。このメリットは公道でぜひ試してみたいですね。

↑「アクティブレーンチェンジアシスト」はアイサイトXに装備。70km/h~120km/hの車速域で利用できる

 

↑アクティブレーンチェンジアシストの作動状況はメーター内にCGで反映される

 

見逃せないのが「ドライバー異常時対応システム」の搭載です。これはダッシュボード中央上部に備えられた赤外線カメラでドライバーの表情を捉え、一定時間、顔の向きがそれたり、ステアリングから手を離し続けたりしていると(ハンズオフ走行時を除く)音と表示で警告を発し、それでもドライバーが反応しない場合には緩やかに減速しながらハザードランプを点灯。約30km/hにまで減速するとホーンまでも断続的に鳴らして周囲に異常を知らせ、停止に至るというものです。

 

ここで注目すべきが停止する場所で、この機能では路肩に寄せることはせず、そのまま同じ車線上で停止します。理由は道路状況を把握できてないまま路肩に寄せたり、車線を跨ぐとなれば危険性はむしろ高くなってしまうからです。そのため、このモードに入ってもカーブでは減速したままで停止せず、車線を維持しながら走行を継続。先が見通せる直線路に入ってから停止する仕様としています。後続車の追突を最小限に抑えながら、ドライバーの異常を知らせる最良の対応を果たしたというわけです。

 

「ドライバー異常時対応システム」の動作状況

 

これまでADASは事故に対する機能アップを中心として続けられてきました。それが新世代アイサイトでは、“X”でドライバー自身に発生するかもしれない異常にまで対応するようになったのです。ドライバーに異常が発生すれば別の事故を誘発する可能性は高く、2030年までに死亡事故ゼロを目指しているスバルにとっては、この問題を避けて通るわけには行かなかったのでしょう。先進技術で着実に安全性を高めているスバルの動向には今後も目が離せそうにありません。

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】