秋から冬にかけてのこの時期になると、耳にする機会が増える「ヒートショック」。急激な温度の変化によって、人体へ強い影響をおよぼすというものです。しかし、この詳細な実態と防止策について、正しく理解している方は少ないかもしれません。ここでは「STOP!ヒートショック」プロジェクトを主宰し、ヒートショックの正しい理解を広める啓発活動を行う東京ガスで、同プロジェクトを担当している都市生活研究所の髙橋愛美さんに分かりやすく解説していただきました。
全年代に起こりうるものだが、特に多いのはやはりお年寄り
ーーまずヒートショックは、どういった場面で起こりうるものなのでしょうか。
髙橋愛美さん(以下、髙橋) 例えば、冬場に暖かい部屋から、寒い部屋への移動などをした際、急激な温度の変化によって起こります。人間の体は、環境温度の変化を受けて、血圧が変わるのですが、急激に温度が変化すると血圧も急変動します。このときに目眩が起きたり、失神したり、心臓発作を起こすこともあり、こういったことが入浴事故の要因の一つであると言われているんですね。
ーー入浴事故は、特にお年寄りの方に多く起きるように思います。
髙橋 そうですね。「高齢者は特にヒートショックのリスクが高い」と言われていまして、やはり加齢とともに体温調節機能が低下する傾向があることと、血圧変動も起こしやすい。だから、環境温度の急激な変化には特に注意していただきたいです。
しかし、「若者なら安心」というわけではありません。特に高齢者の方に注意をはらっていただきたいですが、どの年代の方にも起こりうることなので、ヒートショック対策を多くの人に取り入れていただきたいと思っています。
入浴時の、7つのヒートショック対策ポイント
ーーそのヒートショック対策、どういったことを講じれば良いですか?
髙橋 特に「入浴」の面で言いますと、下記の7つのポイントにご注意いただきたいです。
■入浴時の対策ポイント①入浴前の湯はりの際に浴室を暖める
急激な温度差を避け、入浴前に余裕を持って浴室を暖めておくことがポイント。お風呂を沸かす際などに、浴室暖房乾燥機があれば、こういった機能をONにするのも良いです。
■入浴時の対策ポイント②脱衣室も事前に暖めておく
前もって脱衣室も暖めておきましょう。脱衣室に暖房がない際は、安全性のある暖房器具を揃えると良い。
■入浴時の対策ポイント③お風呂の温度は41度以下にする
自動お湯はり機能がある給湯器なら、リモコンで41度以下に設定します。その機能がない場合は、温度計を使って自分でお湯の温度を調整。家族の中に「高い温度でお風呂につかりたい」という人がいた際は、「ヒートショック対策のため」として理解してもらうようにしましょう。
■入浴時の対策ポイント④入浴前に水分を多く取る
入浴中は意外と汗をかくもので、例えば長時間熱い湯船につかっていると、熱中症になる恐れもあります。これを避けるためにも、麦茶、牛乳といった体にやさしい飲み物を事前に多くとっておくことが大事です。
■入浴時の対策ポイント⑤入浴時は家族に知らせる
家族の誰かが入浴しているのに、周囲がそれを知らなかった場合は、ヒートショックを起こしても気づかないこともあるため、入浴前には家族に必ず声をかけましょう。また、離れて暮らす家族がいる場合は、入浴の前後で電話やメールで連絡と取り合うのも良いですよ。
■入浴時の対策ポイント⑥かけ湯をしてから湯につかる
入浴する際は、いきなり湯舟に入らず、必ずかけ湯をしてから入りましょう。湯舟のお湯やシャワーで、手足からお湯をゆっくりかけ、体の準備を整えてから入浴することを心がけて下さい。
■入浴時の対策ポイント⑦冬場の入浴は10分以内
冬場の入浴は長くなりがちですが、10分以内に制限しましょう。このことでヒートショック、熱中症双方の防止に役立ちます。
髙橋 これらが入浴時の対策ポイントですが、一方、お家全体の対策では、「お家全体の温度のバリアフリー化」を提唱させていただいています。特に築年数が長いお家ですと、部屋ごとに温度差が激しい場合がありますよね。こういったお家でもヒートショックを起こしやすいので、できる限りお家全体の温度が均一になるようにするのが良いです。玄関、廊下、トイレといった特に居室ではない、寒くなりがちな空間を暖めておくこともヒートショック対策の一つです。