雑貨・日用品
2020/11/18 11:00

出前のラップは、なぜピタッとくっつくのか……。業務用ラップフィルムの秘密

『Uber Eats』『出前館』などで、様々な飲食店の料理を自宅で楽しめるようになりました。飲食店によっては、こういったニーズに応えて、デリバリー用の容器などを用意するところもありますが、他方デリバリー食品の必需品のひとつが食品用ラップフィルムです。前述のような容器の補強にも使える上、料理そのものをラップで包んで運ぶこともあります。

 

しかし、ふと疑問が……。特に出前で使われるラップフィルムは、一般家庭用のものと違い、強度・粘着力・伸縮性いずれも高いように感じます。昔ながらの町中華の出前では料理にピタッと付いて運ばれることも多いですが、あれと同じことを家庭用ラップでやろうと思ってもできません。この「業務用」「家庭用」の違いは何なのでしょうか。そして業務用ラップフィルムが特に優れている点は何なのでしょうか。今回は多くの業務用ラップフィルム製品をリリースする三菱ケミカルにお邪魔し、その秘密を分かりやすく解説していただきました。

↑三菱ケミカル・高機能フィルム部門包装フィルム本部、布施 誠さん(左)、中務喜友さん(右)

 

ピタッと被せるラップの材質は「塩ビ」だった

ーーラップフィルムとして有名なのは、家庭用では「サランラップ(旭化成ホームプロダクツ)」、「クレラップ(クレハ)」ですが、特に業務用でよく目にするのが三菱ケミカルの「ダイアラップ」という商品です。これは一般的に流通している家庭用とは、どう中身が違うのですか?

 

布施誠さん(以下、布施) まず弊社のラップフィルム製品で言いますと、「ポリ塩化ビニル製ラップ(以下、塩ビ)」と「食品包装用ポリオレフィン系多層ラップ(以下、ポリ)」という2種類の材質を使ったものがあります。

塩ビは「伸ばしやすく、破れにくい」のが特徴です。引っ張り特性に優れている一方、ピタッとくっつく性能もあります。なので、いわゆる町中華をはじめとする食店さんでは、この素材のラップを使っていることが多いんですね。ここが家庭用に市販されているいくつかのラップフィルムとの大きな違いです。実際に試していただくしかないのですが、塩ビのラップフィルムの伸びは本当に違います。歴史は古く、40年くらい前から使われている商品です。

 

ーーなぜ、塩ビが「伸ばしやすく、破れにくい」のでしょうか。

 

布施 塩ビはもともと硬いプラスチックなのですが、そこに食品衛生法でも安全と認められた添加剤を適正な範囲で加えることで、強度がありながら柔らかく伸びやすい機能を持つように設計しているからです。

↑塩ビ製の「ダイアラップ」(三菱ケミカル)。「伸ばしやすく、破れにくい」ことから町中華はもちろん、多くの飲食店で古くから使われている定番製品

 

布施 一方、もう一つのポリは、ポリエチレンという材質がメインの製品です。塩ビよりも後から発売したもので、今から25年ほど前の開発当初は、「塩ビと同等の機能を付与させるのは難しい」と言われていたものの、研究開発組成の努力をし、現在では塩ビとほぼ同じ性能を実現しています。

 

中務喜友さん(以下、中務) これらが弊社のラップフィルムに使われている2つの素材ですが、これに加え他社では塩化ビニリデン、ポリメチルペンテン製ラップフィルムが発売されています。

 

ーーでは、実は一口に「食品用ラップ」と言っても素材は様々で、「業務用」「家庭用」と簡単に棲み分けできるものではない、ということですか?

 

中務 そうです。厳密には材質面で「業務用は○○」「家庭用は○○」という明確な棲み分けはないです。ただし、日本市場では業務用として一番多いのは塩ビ、その次にポリが多いのは事実です。このうち弊社の業務用のラップフィルムは日本のシェアの35%くらいを維持しています。

↑三菱ケミカルの小巻ラップフィルム製品群。これらは主に業務用として販売されているものの、パッケージの印象は家庭用にも見えます

 

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