「空飛ぶクルマ」の時代が始まろうとしています。近年、国内外で空飛ぶクルマのロードテストや試験飛行成功のニュースが相次いでおり、クルマに乗ったまま道路を走って上空を飛行することが現実味を帯びてきています。次世代の乗り物になりそうな空飛ぶクルマを3つチェックしておきましょう。
カップラーメンができる間に……
スロバキアのKlein Vision社が手がける「AirCar」は先日、試験飛行に成功したばかりです。5世代目となるこのクルマは、2人乗りでBMWの1.6リッターのエンジンを搭載。航続距離は1000キロ、離陸時には時速200キロまで到達するそう。見た目はレーシングカーのように車体が低く横幅が広い印象ですが、一般的なオフィスやホテルなどの駐車場に駐車できる大きさのようです。
このAirCarの魅力は、走行モードから飛行モードに短時間で変えられることにあるでしょう。後方に収納されていた翼が伸びて、わずか3分以内に飛行の準備が整うのだとか。これなら自宅からAirCarに乗って飛行場に向かい、別の飛行機に乗り換えることなく、そのまま空へ飛び立つことが可能になるかもしれません。
官民一体で取り組む日本
日本でも空飛ぶクルマの開発が進んでいます。それを牽引するのが、若手技術者などを中心とした有志団体CARTIVATORのメンバーが2018年に創業したベンチャー企業のSkyDrive。「空飛ぶクルマを作ろう」というミッションを掲げる同社は、2023年度の実用化を目指して、空飛ぶクルマの開発を行っています。今年8月には初めての公開有人飛行を実施し、成功しました。
このとき公開された有人試験機「SD-03モデル」は、1人乗りで合計8個の電動モーターで飛行します。自動車というより、1人乗り用の小型飛行機のような見た目。しかし同社の空飛ぶクルマの特徴は、滑走路を必要としない垂直離着陸ができること。そのため、離島や山間部など郊外での移動手段としてだけでなく、災害時の搬送などにも利用できると期待されています。将来的に一般的な駐車場2台分に収まるよう、車体のサイズは高さ2m×幅4m×長さ4mにする計画とのこと。
ドローンを活用した物流サービスの試みが始まろうとしている日本では、空飛ぶクルマのプロジェクトも国が支援しています。官民が協力して取り組むべく、国土交通省と経済産業省が2018年から「空の移動革命に向けた官民協議会」を開いており、SkyDrive代表も構成員として参加しています。
一歩先を走るオランダの空飛ぶスポーツカー
再び海外に目を向けると、オランダには2012年にプロトタイプの試験飛行を実施したPAL-V社があります。同社はその後、「PAL-Vリバティー」と名づけられた空飛ぶクルマの開発を開始。イタリアのデザイン企業とコラボしたという高級感あふれる外観はスポーツカーを彷彿させるデザインです。2人乗りで、走行モードでは時速最大160キロ、フライトモードでは最大180キロで飛行可能。この空飛ぶクルマは、厳しいことで知られるヨーロッパの道路許可証を得たので、ナンバープレートを付けて公道を走ることができるそうです。
しかも、PAL-Vリバティーは世界で90台限定のパイオニア・エディションを予約販売中。同社のウェブサイトによると、日本ではエグゼクティブエディションが75万ドル(約8000万円)、スポーツエディションは49万9000ドル(約5300万円)で購入できます。今後は耐久テストなどが実施される予定とのことですが、同社は一歩先を進んでいるように見えますね。
世界各国で続々と登場しつつある空飛ぶクルマ。現在、自動車などのモビリティー業界は大変革のときを迎えていますが、将来は自家用車のまま空を自由に飛ぶ人もいそうですね。