日本で1000万人近くの人が悩まされていると言われる片頭痛。一度痛みに襲われると、薬を飲んだり休みをとったり、さまざまな対処が必要になりますが、そんな片頭痛を軽減させるのに緑色の光が良いという研究結果が今年発表されました。緑色の光にはどんな力があるのでしょうか?
片頭痛の頻度や痛みが約60%軽減
日本と同様にアメリカでも片頭痛を抱える人は多く存在しています。この国では、およそ4人に1人が繰り返し訪れる痛みに見舞われており、音や光に敏感になったり、めまい、嘔吐、しびれが伴ったりすることもあるそう。片頭痛は薬による処方が一般的ですが、副作用の心配があるため、別の方法も研究されています。そこで考えられているのが光による予防治療。
アリゾナ大学ヘルスサイエンスセンターの医師らは、緑色の光を使った臨床実験を行いました。この実験には、さまざまな治療を受けても望ましい成果が見られなかった片頭痛患者29名が参加。患者たちは片頭痛が起きたときの痛みレベルを0~10で評価しました。
しかし緑色のライトを照射すると、平均で60%の人に片頭痛が起きる頻度が減少。痛みレベルについても、平均で8から3.2までおよそ60%下がったのです。さらに痛みが生じる時間が短くなり、片頭痛が起きても睡眠や家事、仕事を継続できるなどの改善も見られました。
臨床実験の最後には、被験者に今後も緑色のライトの照射を受けたいか聞くと、29名のうち28名が「引き続き照射を受けたい」と希望したそうです。ちなみに光を浴びたことによる副作用はなかったとのこと。
この実験を行ったイブラヒム医師は以前から、緑色の光を使った治療について研究を行っており、数年前にはラットを使用して緑色の光に痛みを軽減する効果があることを発表していました。同氏は線維筋痛症やHIVの患者に生じる痛みにも緑色の光の照射が効果的な治療法のひとつになる可能性があると考え、別の実験も行っており、今回と同じように痛みを緩和させる結果を出していました。
今回の実験で使われた緑色の光は、光の強度や波長を調整させたもので、残念ながら一般の方が同じような効果を得ようと自分で再現するのは難しいとのこと。ただイブラヒム医師は、以前行われたメディアのインタビューで「自分が頭痛になったときは、近くの公園に行って木の下で20〜30分過ごしている。すると、痛みが少しずつ良くなっていくんだ」と答えています。
私たちの現代の生活はパソコンやスマホなどの強烈な光に囲まれており、これらの強い刺激によって身体に痛みが起きているとも言われています。緑色の光による頭痛の予備治療が確立されるのはまだ少し先のことになりそうですが、頭痛が起きたときは、木々の緑がある場所で心を休ませてあげることが、いまできる対処法のひとつかもしれません。
【出典】The University of Arizona Health Sciences. (2020, September 9). Shining a Green Light on a New Preventive Therapy for Migraine. https://uahs.arizona.edu/tomorrow/shining-green-light-new-preventive-therapy-migraine