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2020/6/29 18:30

「マルチタスク」はネガティブな感情を引き起こすことが判明

複数の仕事をスピーディにこなせるマルチタスクの能力は、社会人なら多くの人が求められるスキルのひとつです。例えマルチタスクが得意ではなくても、ひとつの仕事をしながら、別の仕事の依頼を受けたり、クライアントから電話を受けて対応したりすることもあることでしょう。

 

でもそんなマルチタスクで仕事を行っていると、怒りや悲しみのようなネガティブな感情が生まれるという研究結果が発表されました。効率的に複数の仕事をこなすためには、どうしたらいいのでしょうか?

↑頼むから少し放っておいてくれ……

 

ヒューストン大学とテキサスA&M大学の共同研究チームは、マルチタスクで人の感情がどのように変化するか実験を行いました。実験は26人の被験者に対し、50分間で小論文の執筆と8通のEメールへの返信という2つのタスクを課しました。被験者はランダムに2つのグループに分けられ、1つ目のグループは8通すべてのEメールが開始10分で届き、最初の5分ですべて返信しなければならないという条件。

 

2つ目のグループは、1つのメールを返信すると、それから4分後に次のメールを受信し、受信から10秒以内に返信文を書き始めなければならないという条件を与えました。1つ目のグループはEメールの返信を最初にまとめて行い、その後に小論文の執筆に集中する時間を確保。一方2つ目のグループは、Eメールの対応で小論文の執筆が何度も中断されたこととなりました。

 

研究チームはこの実験の間、被験者の表情をカメラで撮影し、アルゴリズムで解析しながら、それぞれの人がどんな感情でいたかを割り出しました。その結果、1つ目のグループは実験の間、ニュートラル(中立)な表情でしたが、2つ目のグループは1つ目のグループに比べて、悲しみの感情を多く抱いていることが判明しました。

 

マルチタスクを行っていると精神的なストレスを生み出し、それによって悲しみの感情が生まれたと見られます。また恐怖の感情も同時に起きていることが観察され、自分が集中していたのにEメールで中断されたことで、次に起こる中断に対して恐怖の感情が潜在的に生まれていたものと考えられます。

 

マルチタスクをこなすためのヒント

マルチタスクの得意、不得意にかかわらず、社会人なら複数の仕事に対応しなければならないシーンは誰でも遭遇するもの。では精神的に大きな負担を負うことなく、マルチタスクを行うのなら、どうすればよいでしょうか?

 

この研究チームでは、あるひとつの仕事とメール対応の2つのタスクを行うときは、実験の1つ目のグループと同様にメール対応をまとめて行うことが有効だと述べています。この場合は、あるひとつのタスクが中断されてネガティブな感情が生まれても、あまり長く影響しないだろうとのことです。

 

仕事ではマルチタスクの能力が求められるかもしれませんが、いつもマルチタスクを行って精神的に疲れてしまっては意味がないはず。在宅勤務ともなれば、そこに家事や育児も絡んでくるでしょう。そんな状況で最も効率的に仕事をするには、できるだけ1つのことに集中できる時間を作るようにすることかもしれません。