巨大ショッピングモールが日本各地に点在し、日本全国どこでもオシャレなブランド品が手に入るようになった昨今。また大手量販店が独自ブランドを開発・展開し、国内外のファストファッションのお店も増えて、一般消費者にとって便利な世の中になりました。しかし、いわゆる「流通革命」が進んだおかげでモノの均質化が進むと、今度はなかなか買えない「自分だけの物」を欲しがる人が出てきます。大資本の量販店が君臨し、昔ながらの個人商店が少なくなったいま、自分だけの物を手に入れるのは難しいようにも思えますが、実は意外と簡単に、しかも大量に「自分だけの物」を買える場所があります。それが問屋街です。
【関連記事】
展開地域や品揃えは様々! 代表的「ホームセンター」4選
問屋街といえば、大阪の船場や松屋町、名古屋の明道町などが有名ですが、今回は東京の問屋街を取り上げます。現存する東京の問屋街は、主に6ヶ所。食器具やキッチン周り、飲食店用のプロ用品を扱う浅草のかっぱ橋道具街。はきもの、靴、スリッパなどを扱う浅草・花川戸のはきもの問屋街。生地や布を扱う日暮里の繊維街。玩具メーカーが多く、中にはおもちゃのデッドストックばかりを売る店もある蔵前のおもちゃ問屋街。アクセサリー材料、装飾資材などが多い浅草橋駅界隈。そして、衣料品の総本山、馬喰町問屋街・横山町問屋街。
各問屋街に共通していえるのは、「大型流通に乗っていない物が買える」こと。つまり「自分だけの物」が手に入るわけですが、そこにあるお店は、元々がプロ向けのお店ばかり。一般消費者が「物を買う」にあたっては、各街ごとの「暗黙のルール」が存在します。これを知らないと、無礼にあたったり、思うように物が買えないこともあるので要注意。そこで、今回は各問屋街の概要と、一般購入のハードルの高さ(★が少ないほど買いやすい)、購入のルールとコツを解説していきます!
その1
◎浅草・かっぱ橋道具街
<概要>
浅草観光の一つとして組み込まれることも多い問屋街。特に手に入れたいのは、各店の店頭に無造作に置かれたワゴンの食器類。食器という性格上、割れることも加味して多めの数を取り扱うことが多く、ハンパに余った端数の食器が信じられないほど安い値段で売られています。シンプル・イズ・ベストなものも多く、「自分だけの物」散策には楽しい街です。
<一般購入の難易度>
★⇒ほとんど購入可能
観光スポットに近いこともあるからか、一般消費者であっても、まずほとんどの店で購入可能です。ただし、同じ商品でもお店ごとに値段の付け方が違うので、ある程度見回ってから買うのが良さそうです。
<購入のルールとコツ>
プロ用商品も数多く扱っていることから、極端に大きな食器具だったり、見慣れないプロユースの商品も多数。つい触れてみたくなるのが人の性ですが、触りたくなる気持ちを抑えてクールに見過ごすのが賢明です。
その2
◎浅草・花川戸はきもの問屋街
<概要>
浅草寺の東側一帯の地域・花川戸には、小規模のはきもの問屋が点在。世の中に出回る日本製の下駄はほとんどが、ここを経由して市場に出回っているというだけあり、特に注目したいのは和物のはきもの。一般市場よりも安く、種類も豊富にあります。
<一般購入の難易度>
★⇒ほとんど購入可能
かっぱ橋同様、一般消費者であっても、ほとんどの店で購入可能です。また、毎年の暮れには「花川戸はきだおれ市」が開催され、普段以上に安くはきものを購入することが出来ます。
<購入のルールとコツ>
問屋街と言えど、各店は意外と点在しているので注意。買うべきはきものに悩んで、何度もお店と出たり入ったりするのも禁物。小売りはしてくれますが、店員さんは元々はせっかちな江戸っ子気質。礼儀正しく買い物をしましょう。
その3
◎日暮里・繊維街
<概要>
生地という生地、繊維という繊維、皮という皮が街中にヒラヒラ揺らめく問屋街。一見、縫製・手芸などの用途がなければ無縁とも思えますが、うまく活用することでお得な面も多々あり。また、近隣には大手ジーンズメーカーなどもあり、地元向けのガレージセールなどもあるので、チェックしておいて損はありません。
<一般購入の難易度>
★★⇒購入のハードルは低め
こちらもほとんどの店で購入可能。ただし、素材が中心の問屋街なので、目的を決めずに行くと買う物は限られます。ただし、例えばカーテン、テーブルクロスが必要になったとき、量販店のオーダーコーナーで購入するより便利な場合も。豊富な種類の素材の中から、より安く作ってくれるお店もあります。まさに「自分だけの物」を作るにはうってつけの街といえるでしょう。
<購入のルールとコツ>
生地、繊維の問屋街という性格上、手芸熱がハンパないオバサンたちが多数。渡り合う覚悟は持っていきましょう。
その4
◎浅草橋駅界隈(アクセサリー問屋街)
<概要>
問屋街としての正式名称はなし。浅草橋駅界隈に無数に存在するビーズなどのアクセサリー素材、皮素材の問屋街です。
<一般購入の難易度>
★★⇒大量購入になる
ほとんどの店で購入可能ですが、アクセサリー素材なので自ずと大量購入になります。ただ、大半のアクセサリー素材のなかで皮のハギレを扱っている店では、1点ずつ売ってくれます。アイディア次第ですぐにアクセサリーを作ることも出来そう。
<購入のルールとコツ>
こちらも日暮里の繊維街同様、一般消費者の大半はアクセサリーを作る女性ばかり。また、アクセサリー素材ということで小さな商品が多く、それなりの根気と目的を持って購入するのが基本。
その5
◎蔵前・おもちゃ問屋街
<概要>
玩具・和人形・花火・装飾の問屋街。近隣には玩具メーカーも数多くあり、散策だけでも十分楽しめますが、基本的には「小売りはしない」という姿勢のお店が多く、それなりのルールが存在します。また、デッドストックのオモチャばかりを扱う小さな問屋も数軒あり、タイムスリップしたような気持ちが味わえます。
<一般購入の難易度>
★★★⇒一定のロット数なら購入できる
「小売りはしない」という姿勢でありながらも、一定のロット数であれば、一般消費者でも購入できるお店が大半です。また、デッドストックのオモチャ問屋では、商品そのものが1点モノだったりするので、こちらは1個単位で購入することが出来ます。
<購入のルールとコツ>
「商品で遊んじゃうから」という理由か、どのお店も原則的に子どもは入店不可。保護者同伴であってもダメという点に注意しましょう。
その6
◎馬喰町問屋街・横山町問屋街
<概要>
「日本最大の現金問屋街」として知られ、東京の中心にあるにも関わらず、一般的には馴染みの浅い馬喰町問屋街・横山町問屋街。2つの問屋街は隣合わせにあり、大半は衣料品、バッグなどを取り扱っています。難点は、9割がたのお店が一般消費者への小売りを行っていないこと。ただし、年に二回、地元が主催する「大江戸問屋祭り」では、一般消費者に小売りをする目的で、毎回1万人以上の人が来場するそうです。
<一般購入の難易度>
★★★★★⇒原則的に素人さんお断り
原則的に「素人さんお断り」。プロ向けの店ばかりで、一定のロット数の商品を買うことが基本という敷居激高の街です。また、たとえ一定のロット数であっても、店ごとに独自のルールも存在し、「入店カード(取引先である証)」「他問屋との取り引き伝票」がないと、売ってくれない場合もあります。ただし、店頭のワゴンなどではサンプル、アウトレット、端数の商品が単品として数百円から叩き売られていることがあり、コツを掴めば購入することが出来ます。
<購入のルールとコツ>
「一般消費者には売らない」という理由はいくつかあるようです。「一般消費者にも卸し値で販売することで、一番の取引先である小売り店に迷惑をかける」「一般消費者に卸し値で販売すれば、周囲の問屋からヒンシュクを買う」等が大きいようです。とはいえ問屋さんも少しでも多く商品を売りたいのは正直なところ。真っ正面から「素人ですが、売って欲しい」と言うのは絶対ダメで、大勢で観光気分で訪れるのもダメ。「お金を払うんだから、プロも素人も関係ない」という態度はもっとダメ。「まだそれほど取り引きはないんですが、少し勉強をと思って来てみたんですけども、少し売っていただけませんでしょうか」という低姿勢で行きましょう。問屋側の「素人にも売っていることが知れたらマズい」という事情も汲み、曖昧なところは曖昧にし、静かにサッと買って、買ったあとも公言しないのがルールです。
問屋街では、街ごとの特性を把握しておかないと思うような買い物は出来ませんが、個性的な品を求める人にとってはうってつけ。様々な店が立ち並び、散策自体も面白がってもらえると思います。
ただし、念を押すようですが、どのお店も元々はプロ向けの問屋さん。観光気分で訪れたり、知ったかぶったり、偉そうにするのはもってのほか。謙虚に静かに、「自分だけの物」を探す意志を秘めて、問屋街を巡ってみてはいかがでしょうか。