新型コロナウイルスの感染を防止するために換気の重要性が高まっていますが、窓を長時間開けたままだと周囲の音をうるさく感じることがあるかもしれません。そこで役に立ちそうなのが、シンガポールで開発された換気をしっかり行いながら室内を静かに保つ窓。未来の建物に多用されるかもしれないスマートウィンドウに迫ってみましょう。
都心部のほか、幹線道路の近くや線路沿いの場所では騒音が気になるでしょう。そのような建物では窓に防音ガラスが使われたり、防音シートを貼ったりして、騒音対策が行われています。でも、それらの対策が有効なのは窓を閉めているときだけ。換気のために窓を開けると、周囲のうるさい音が気になってしまいます。
長いこと騒音問題が持ち上がっているシンガポールは、防音性と換気性の機能を兼ね備えた新しい窓の研究に取り組んできました。シンガポール国立大学の研究チームが開発したのは、「AFVW(Acoustic Friendly Ventilation Window)」と名付けられたシステム。
このAFVWは、2枚の窓ガラスを15センチの間隔を開けて重ねており、2枚の窓ガラスの間には換気システムを設けています。さらに窓の上下2か所に格子状の通気口を設置。これによって下の通気口から外部の空気が入りこみ、窓ガラス内部にある換気システムを通って上部の通気口から室内に流れこみます。さらに遮音性を高めるために、窓ガラスには吸音材が付けられました。
空気の流れなどの検出テストで使われるトレーサーガスを用いた実験を行ったところ、窓を開放した換気法に比べて、AFVWでは汚染物質が4倍の速さで減少したことが確認されました。さらに、このAFVWにエアコンで使用されているものと同じようなフィルターを付ければ、ホコリや汚染物質の除去も可能なのだそうです。
また防音性能については、外部のクルマなどの騒音を26db下げることがわかりました。クルマの音、掃除機をかける音、トイレの水を流す音、換気扇の音などはおよそ50~60dbに相当し、人と会話するためには少し大きな声を出さないといけない状況です。一方、騒音はほとんど聞こえないか気にならない程度なのは20~30db。人は10db減少するごとに、音のうるささが半分程度に低減したと感じると言われるので、26dbを減らせるこの窓は人の感覚で騒音を1/4程度抑えられたということになります。
新型コロナに加え、環境汚染や花粉の問題もあって、部屋の換気について悩んでいる方も多いのではないでしょうか。将来はこんな高機能の窓が問題解決に役立つかもしれません。