Vol.102-1
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは、「Chromebook」。登場から10年が経つ昨今、日本でも急速に知名度を上げている理由とは何なのか?
一大需要を呼び込んだGIGAスクール構想
Googleが提供するプラットフォームである「Chrome OS」を使った個人向けコンピューター、「Chromebook」が日本でもシェアを伸ばし始めている。近ごろ、広告や記事などでも、Chromebookの新製品を見かけることが増えた……と感じる人は多いのではないだろうか。
Chromebookが好調な理由はシンプルだ。教育市場向けの供給が劇的に増えたからである。日本の場合、「GIGAスクール構想」に基づき、小中学生に「一人一台」学習用の端末を供給する計画が進行中であり、そこへ向けた端末として、iPadや低価格なWindows PCと並んで、Chromebookが選ばれることが多くなってきているのだ。
なお、このGIGAスクール構想向けの端末としては、重要な要件が2つある。
一つは、児童・生徒が学びやすく、端末の管理がしやすいこと。機材が壊れたときや必要な学習情報を提供するときなど、現場では統合管理が必須の要件となる。Googleはこうしたシステムが得意で、これが海外でも教育市場向けにChromebookが支持される理由の一つとなっている。アップデートにかかる時間もその管理もシンプルであることが大切。「OSのアップデートがかかったせいで授業が滞る」なんてことが起きては本末転倒だ。
二つ目の要素は「コストパフォーマンス」だ。GIGAスクール構想向けの端末の予算は限られている。国からの予算と地域での特別予算を合わせても、端末1台にかけられるコストは4万5000円しかない。ハイエンドCPUや大容量メモリを搭載した製品は選べない。特にWindowsでは、この価格で「快適な性能」を得るのは難しい。iPadの場合、性能面では問題ないが、要件的にキーボードを追加する必要があるのがネックになる。一方でChromebookは、3,4万円で手に入るハードウェアでも十分な性能が発揮できて、最初からキーボードが付いている。このように、教育現場へ導入しやすい条件が揃っているのだ。
教育市場の巨大需要が個人市場にも波及する
こうして、日本の教育市場に、一気に数百万台単位というChromebookのマーケットが生まれた。そうなると、その流れは個人市場にも押し寄せる。教育市場向けに調達した製品の一部が個人市場でも売られることになり、低価格なChromebookの新製品が一気に増える……、そういう仕組みになっているのである。
Chromebookは、アメリカ市場でのスタートから10年が経過し、日本市場への投入開始からも7年目を迎えた。これまでは製品自体が日本の販売店に並びづらかったが、その状況は変わりつつある。低価格で使いやすいなら、教育市場だけでなく、一般市場でも売れる可能性は高い。筆者も使ってみているが、「気軽にネットを使えるキーボード付き端末」として、完成度は非常に高い。
では、Chromebookは仕事にも使えるのか?懸念点は?Googleの狙いは?そして、マイクロソフトなど他社の対抗策は?そのあたりはウェブ版で解説しよう。
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