世界にあるサンゴ礁の面積は60万平方キロメートルと、地球全体の表面積約5.1億平方キロメートルから見ると、わずか0.1%にすぎません。しかし、サンゴ礁には9万種以上の生物が住んでいると言われています。最近の研究では、そんなサンゴ礁に沿岸地域での洪水を防ぐ働きがあることがわかりました。
サンゴ礁がもつ沿岸洪水(沿岸域での洪水事象)を防止する機能の価値を調べるため、米国・カリフォルニア大学サンタクルーズ校とアメリカ地質調査所は、海上の波や嵐のコンピュータモデルを地質学や生態学などと組み合わせながら、フロリダ、ハワイ、グアム、プエルトリコ、バージン諸島らにおける沿岸洪水のリスクを分析し、サンゴ礁の沿岸における洪水防止機能の価値を評価しました。
その結果、サンゴ礁が沿岸地域を沿岸洪水から守る効果を価値に換算すると、年間18億ドル(約1970億円)以上に上ることが判明。さらにサンゴ礁が1m低くなると、沿岸洪水の発生確率が1%の地域が23%増え、その被害者数は62%、住宅や建物などへの被害は90%以上増加し、被害総額は53億ドル(約5800億円)になると予測しました。
また、フロリダとハワイでは、沿岸洪水を予防する効果が特に高いサンゴ礁が距離にして325kmも確認され、その予防価値は1kmあたり100万ドル(約1億円)以上になるそうです。ハワイのオアフ島を例に挙げると、島の周りを取り囲むようにサンゴ礁があり、その価値は島全体で約5億7800万ドル(約633億円)。多くの住民が暮らし、ハワイの政治やビジネスの中心地となっているホノルルや、主要観光スポットのひとつであるワイキキ沿岸にもサンゴ礁が存在しており、沿岸地域を洪水から守っているのです。
今度は人間がサンゴ礁を守る番
サンゴ礁がある海では、しばしばラグーン(環礁に囲まれた浅い海)が見られます。サンゴ礁が防波堤のような役割を担い、外海からの強い波を弱め、沿岸地域への洪水を軽減すると考えられています。
しかし近年、温暖化のために海面が上昇し、その影響でサンゴ礁がもつ沿岸洪水を防ぐ力が弱まる可能性が考えらえます。それと同時に、サンゴの白化現象が進んでおり、サンゴの壊滅も懸念されます。
海の生態系だけでなく、人間自身を沿岸洪水から守るためにも、サンゴ礁が担う役割とその価値は、計り知れないほど大きいのかもしれません。
※1ドル=約109円(2021年5月31日時点)
【出典】Reguero, B.G., Storlazzi, C.D., Gibbs, A.E. et al. The value of US coral reefs for flood risk reduction. Nature Sustainability (2021). https://doi.org/10.1038/s41893-021-00706-6