先日、上野に用事があったのでそのついでに……と東京国立博物館へ初めて行ってきました。軽い気持ちで入館しましたが、あまりの面白さに閉館間近まで滞在。教科書で見たことのあるような日本美術のホンモノがたくさん展示されており、「友の会」に入会するか本気で悩んでいるところです!
もっと美術や歴史について学びたい! そしてその知識とともにアート作品を楽しみたい! でも難しい本は無理……と思い手にしたのが、『ヘンタイ美術館』(山田五郎、こやま淳子・著/ダイヤモンド社・刊)。西洋美術入門としても楽しめる一冊でした。
なんで「ヘンタイ」なの?
『ヘンタイ美術館』は、評論家の山田五郎さんとコピーライターのこやま淳子さんによるトークイベントをまとめ、2015年に書籍化されたもの。台湾、韓国、中国語にも翻訳され、アジアにも「ヘンタイ」の波が広がっているようです!
しかし、なぜ『ヘンタイ美術館』という名前になったのでしょうか? 冒頭にこんなことが書かれてありました。
こやま こむずかしく考えがちな西洋美術も、ヘンタイでどうかしちゃってる美術家たちの側面から見ていくと、とてもおもしろくわかってくる。当美術館は、そんなヘンタイ斬り口から西洋美術を見ていこうという、ちょっと変な美術館です。
山田 オレは最初、このネーミングには反対だったんですよ。ホンモノの変態に失礼だから。
こやま そう、もちろん性的倒錯など、ホンモノな方々も美術家にはいらっしゃいますが、ここではもっとライトに、ちょっと変わった美術家さんのキャラクターにスポットを当てていこう! という趣旨です。
(『ヘンタイ美術館』より引用)
美術作品って周りの評価や歴史が深すぎて「素人が簡単には立ち入ってはいけない感じ」となんとなく思っていましたが、ヘンタイと言われると「何?」と気になってしまう(笑)。そんな気になる部分から作品を紐解いていくと、ハードルが下がり美術作品を気軽に楽しめるようになるはずです。
そして何より『ヘンタイ美術館』は、わかりやすい! 知識豊富な山田五郎さんの解説と、読者目線で素直な疑問を投げかけてくれるこやま淳子さんとの掛け合いが最高なのです。クスクス笑いながら読み進めていくうちに、美術の知識も身についている! そんな一冊です。
合計12名のヘンタイが登場!
一言に「西洋美術」と言ってもその歴史は深く、どこから誰の作品を見始めたらいいのか、正直わかりません。超素人な私は「モナ・リザって、ダ・ヴィンチだよね?」「ムンク展は行ったよ!」くらいの知識しかありませんでした(汗)。
『ヘンタイ美術館』は私のような低レベルでも全然ウェルカムな一冊です。4つの時代にそれぞれ3名の芸術が登場し、歴史と作風が「ヘンタイ」目線で紹介されていきます。
CHAPTER1の「ルネサンス3大巨匠」には、ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロが登場。CHAPTER2の「やりすぎバロック」には、カラヴァッジオ、ルーベンス、レンブラントの3人。CHAPTER3では「理想と現実」というタイトルで新古典主義のアングル、ロマン主義のドラクロワ、写実主義のクールベが紹介され、最後のCHAPTER4「2文字ネーム印象派」に、マネ、モネ、ドガの3人、合計12名が登場します。
ちなみに、表紙で描かれている『グランド・オダリスク(1814年)』もこの12名の中にいるひとりの作品。この作品が登場した当時は「背中が長すぎる!」「腰椎が3つ多い」などと酷評だったそうですが、一体だれの作品だかわかりますか? ぜひどんなヘンタイだったのかは、本を読んで確かめてもらえればと思います。
「モナ・リザ」は、レオナルド・ダ・ヴィンチが常に持ち歩いて描いていた作品だった!
有名な「モナ・リザ」。どんな絵かは、頭の中にパッと思い浮かびますが、どうしてこれだけ評価されているか、そしてどれくらいの時間をかけて、どんな技法で描かれた作品かって実はあまり知られていないですよね。
この「モナ・リザ」を拡大してみると、どこからがまぶたの線なのか、輪郭なのか、色の境目が曖昧になっています。これは「スフマート」という技法だそうで、イタリア語で「煙らせる」という意味があるのだとか。何度も丁寧に絵の具で重ね塗りをして、ふわっともわっとした表情になっているところが評価されている理由のひとつになっているとのこと。
山田 科学調査してみたら、20回以上塗り重ねられていたそうですよ。油絵の具って乾くのに時間がかかるんです。だからダ・ヴィンチはこの作品をずーっと持ち歩き、暇を見ては塗り重ね続けていた。
こやま もはや趣味だったんですね。これを直すのが。
山田 そこまでやったからこそ、究極のスフマートが実現できた。『モナ・リザ』が名画と呼ばれる理由のひとつは謎の微笑にあるといった意味、わかったでしょ?
(『ヘンタイ美術館』より引用)
ちなみにこの「モナ・リザ」は未完説もあり、もしかするとまだ塗りたかったのかも……と思ってみるとレオナルド・ダ・ヴィンチのヘンタイっぷりも楽しめますね(笑)。他にも「モナ・リザ」がすごい理由や、ダ・ヴィンチのヘンタイエピソードが満載なので、続きは『ヘンタイ美術館』でお楽しみください!
この本を読んでいると、もっと美術のことを知りたくなります。今回紹介しているのは12名の美術家ですが、日本にもヘンタイな美術家はいたはず! ちょっとアートは苦手だな、と思っていた人も、新たな一面を知ることでもしかしたら美術が好きになれるかも。まだまだおうち時間も続きそうなので、新たな趣味のひとつとしてアート鑑賞を取り入れてみるのはいかがですか?
【書籍紹介】
ヘンタイ美術館
著者:山田五郎、こやま淳子
発行:ダイヤモンド社
この「ヘンタイ美術館」は、美術評論家・山田五郎さんを館長に見立てた架空の美術館。美術に興味はあるけれどよくわからなという方々に向けた西洋美術の超入門書。「ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロ。一番のヘンタイは誰?」教科書的な知識より、こんな知識の方が実はビジネス会話でも使えたりするのです。