東南アジア諸国が参加する「Southeast Asian Games」というスポーツイベントをご存知ですか? 日本では「東南アジア競技大会」と呼ばれており、英語では「SEA GAMES」としばしば省略されます。日本では知らない人も多いかもしれませんが、同大会は東南アジア諸国で熱狂的な人気を誇ります。2021年は第31回大会が11月下旬から12月上旬までベトナムの首都ハノイで開催される予定。熱戦を待つ現地からSEA GAMESについてレポートしましょう。
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東南アジア版のスポーツの祭典
SEA GAMESは、東南アジアで2年に1度開催されます。ベトナム、タイ、マレーシア、ミャンマー、ラオス、 シンガポール、フィリピン、インドネシア、ブルネイ、カンボジア、東ティモールの11か国が参加し、サッカーをはじめ、水泳、ゴルフ、バドミントン、ボクシング、空手、柔道、ボウリングなど計40種目の競技で争います。このSEA GAMESは「東南アジアのオリンピック」とも言われていますが、ベトナムではオリンピックよりも高い関心を集めます。
コロナ禍のため2022年に延期する可能性も出てきていますが、そんな中でもベトナムの代表選手たちは着々と準備を進めています。昨今、ベトナムでは健康意識の向上により、スポーツを始める人が増えており、近隣のライバル諸国を相手にどこまで結果を残せるか多くの人が興味を持っています。
ベトナムは経済同様にスポーツでも新興国であり、オリンピックで表彰台に上がれるほどの実力を持つ選手はほとんどいません。逆にSEA GAMESには自国の選手が多く出場するだけでなく、表彰台にも手が届くとあって、ベトナム人の関心はとても高まるのです。
経済成長と共に強くなる
SEA GAMESにおいて、ベトナムは強豪国として知られていますが、以前はそうではありませんでした。経済的に貧しかったベトナムではスポーツ選手を取り巻く環境の整備が遅れ、サポートや教育体制も十分ではなかったのです。
しかし、近年のベトナムは経済成長と共に、スポーツの国際大会でも良い成績を収めるようになっています。代表選手が国際大会で活躍することは、国民を結束させるだけでなく、世界に向けたベトナムのアピールにもなるため、政府や企業がスポーツに注目し、力を注ぐようになりました。具体的には、ベトナム政府が外国人監督やコーチの招集を手掛け、才能ある選手を発掘し、若いうちからエリート教育を実施しています。大手企業は優れた選手に報奨金を提供するなど、官民が協力してベトナムのスポーツ界を底上げしているのです。
2019年にフィリピンで開催された前回のSEA GAMESで、ベトナムは合計288個のメダルを獲得し、総合順位2位に輝きました。総合順位1位は計387個のフィリピンで、3位はタイ、4位はインドネシアと続きます。ベトナムは2011年大会から4大会連続で総合順位3位でしたが、ついにその壁を破りました。今大会ではホーム・アドバンテージを生かして、より多くのメダルを取り、総合順位で1位になることが期待されています。
前回大会でベトナムは男女ともにサッカー競技で優勝しました。サッカーはSEA GAMESで最も人気がある競技。ベトナムの優勝は60年ぶりの快挙であり、試合後には国旗を掲げて優勝を祝うサポーターによるパレードが起こりました。筆者は当時もハノイにいましたが、有名観光地のハノイ旧市街周辺は過激なサポーターであふれており、迂闊に近寄ってはいけないと注意されたものです。
SEA GAMESで注目のベトナム代表選手
ベトナムはサッカーだけでなく、水泳や空手、体操、ボート競技でも優れた成績を収めています。ベトナムで大きな注目を集める選手を3人を紹介しましょう。
【サッカー】ダン・ヴァン・ラム
現在27歳で、2021年1月よりセレッソ大阪に所属しているベトナム代表の正ゴールキーパーです。ベトナム人の父とロシア人の母を持ち、身長188cmの大柄な選手です。6月10日にはJリーグデビューも果たし、今後の活躍が期待されています。
【競泳】グエン・フイホアン
21歳の男子競泳選手で、2019年のSEA GAMESでは400mと1500mの自由形で優勝しています。東京オリンピックにも出場しました。
【ボート】ルオン・ティ・タオ
22歳の女性ボート選手。ベトナムには川や入り江が多くあり、小舟を日常生活で使う人も多いことから、ボートは人気が高い競技の1つ。東京オリンピックにも出場した彼女はまだ年齢も若く、ベトナムのボート界を引っ張っていくことが期待されています。
コロナ禍で試合が延期されたり、練習の時間や場所が制限されたり、どの競技の選手もコンディション調整に苦労しているようですが、ベトナム国民はSEA GAMESで代表選手が活躍するのを楽しみに待っています。
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