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2021/7/21 18:00

僕はなぜ走るのか――南スーダン陸上選手アブラハムの物語 特別マンガ連載「Running for peace and love」第1回

来る7月23日(金)、東京2020オリンピック・パラリンピックが開催されます。2020年から一年、未曽有の危機に遭いながら世界中の人々と選手たち、全ての人たちが様々な思いを抱えながらこの日へとたどり着きました。

 

世界各国の選手たちがここ日本の地で熱い競技に挑んでいきます。そんな中、この日に向けて2019年から「南スーダン共和国」の選手たちが日本で事前合宿を行ってきていたのをご存じでしょうか? GetNavi webでは、昨年末に前橋市でトレーニングを積む選手たちに、オリンピック・パラリンピックに向けたインタビューを行いました。

 

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そして今回はグエム・アブラハム選手の生い立ちから昨年のオリンピック開催延期の時の心情、そして今に至るまでを、GetNavi webオリジナルのマンガ4回シリーズで描きます。「世界で一番新しい国」と呼ばれる南スーダンのこと、そしてアブラハム選手のオリンピックへの思いを描いた物語、ぜひご覧ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陸上競技と出会い、南スーダン初の試みとなる「ナショナル・ユニティ・デイ」に挑むアブラハム。初めての他の民族出身の選手たちとの交流、まだ見ぬ選手たちとのレースはどんな結果になるのか?  よりマンガを深く楽しむためにアブラハム選手、南スーダンについて紹介したいと思います。

 

グエム・アブラハム選手について

 

フルネームはグエム・エイブラム・マジュック・マテット。今年で21歳になります。オリンピック出場競技は1500mで、南スーダン共和国の記録保持者です。2000年前後に、南スーダン独立以前のスーダン共和国で生まれ幼少期を過ごし、隣国のウガンダで教育を受けた際、陸上競技で走りの才能を発揮。ウガンダ国内で活躍するなどの実績を積みながら、第1回ナショナル・ユニティ・デイに参加することになりました。

 

現在、アブラハム選手は東京2020オリンピックの本番直前。8月3日(火)に行われる男子1500mに出場。本作でアブラハム選手の陸上に懸ける思いに触れながら、ぜひその雄姿を見届けてください。

 

南スーダン共和国におけるスポーツの重要性

写真提供:久野真一/JICA

 

南スーダン共和国は、2011年にスーダン共和国から独立。スーダン共和国時代から南部で採掘された油田を巡る南北対立が続くなど、その歴史は度重なる内戦に紐づいたものでした。独立後の南スーダン共和国において、争いの起因となっているのは、油田を巡る争いや政治・宗教・人種の違いが大きいですが、それだけではありません。そもそもは、スーダン共和国、南スーダン共和国が多くの異なる民族で構成される多民族国家であること、その多くが遊牧民であることが関係しています。

 

水源を求めて民族移動する際に、他民族の土地・テリトリーに入り、そこで家畜の奪い合いを発端とした争いが生まれる。そうした状況が常態化してしまっていることも、数多くの武力衝突や対立を生み出す起因となっていると言われています。

 

南スーダンの独立以降も、国際協力機構(JICA)は、長年の争いや民族間及び政治的対立の和平プロセスの遅れによる影響で、いまだ不十分な橋梁などの基礎インフラや、教育・農業・水供給などの基本的な社会サービスの整備に向けた協力を進めています。そして同時に、対立が起きやすい構造、民族間のわだかまりを解決する施策として「スポーツを通じた平和促進」にも力を注いできました。スポーツ競技で民族間交流の促進を図ることで、相互理解から恒久的平和を導こうという施策です。

 

第2回の舞台となるナショナル・ユニティ・デイで、アブラハム選手はどんな走りを見せ、どんな経験をするのでしょうか? 現在、南スーダン国民にとって「平和の象徴」と言われているイベントが誕生したその興奮を、アブラハム選手の目を通して描きます。