アメリカ発祥で現在は世界的に認知度も上がった「ブラックフライデー」は、ドイツでもかなり浸透しているショッピングイベントのひとつです。現在ドイツは新型コロナウイルスの感染が急増していることもあり、昨年に続き街には例年のような賑わいは見られませんが、ドイツ人の購買意欲は高く、オンラインショッピングは活況。ドイツのブラックフライデーについて現地からレポートします。
ブラックフライデーがドイツに伝播したきっかけは、2006年にApple社がアメリカのブラックフライデーで提示されているセール価格をドイツにも導入したこと。Appleストアやオンラインショップで商品が特別価格で販売されたことは国内で大きなニュースとなり、驚異的な成功に多くの小売企業が感嘆しました。
その流れに乗り、2010年にはAmazonドイツが、2013年にはほかのさまざまな小売企業がブラックフライデーを開始し、ドイツでもオンラインを中心に大規模開催されるようになったのです。
2021年のブラックフライデーも11月の第3金曜日でしたが、近年のドイツでは当日だけでなく翌週の月曜日である「サイバーマンデー」や、その前後の「Black Friday Week」に、多くの企業が1週間ほどのセール期間を設けています。
さらに、ドイツの大手家電販売店では「Black November」として11月いっぱいのセールも開催するなど、ブラックフライデーに便乗したショッピングイベントが増えています。また「Take Black Friday」という名称をつけ、ブラックフライデー当日を除いた11月中にセールを実施し、客が当日に殺到することを避けた化粧品会社もありました。このように、今年はそれぞれの企業が独自の方法でブラックフライデーに挑みました。
統計市場調査プラットフォームのスタティスタは11月初旬、2021年のブラックフライデー期間にドイツの消費者は約49億ユーロ(約6265億円※)を費やし、過去6年間で最高の売上高になるとの予想を発表しました。ドイツの成人のおよそ26%にあたる推定1810万人が、ブラックフライデー期間中に買い物すると見られていました。
※1ユーロ=約128円で換算(2021年12月3日時点)
調査で意外だったのは「ブラックフライデー期間中に買い物をする」と答えた人のうち、男性が28%、女性が24%と、男性のほうが多かったこと。買い物をする理由として「お得だから」とか「退屈しのぎ」が挙げられていますが、ドイツ人がこれほど一斉に買い物する日はほかになく、この期間はクリスマス商戦も含んだ重要なシーズンと言えるでしょう。
ブラックフライデーのセール期間や内容については事前公開しない小売企業がほとんどです。しかし、ネット上には「ブラックフライデー情報サイト」が多数存在しており、どのショップがいつから、どの程度割引して、どんな商品を販売するのかなどの情報を集めて掲載しています。購入意欲が旺盛な人も、単に何かお得なものを探している人も、事前にインターネットで情報を得ることができるのです。
ブラックフライデーの1週間ほど前になると、各小売企業の広告が正式に出始めます。ただ、まだその時点ではセール対象商品や目玉商品などの情報は発表されず、2021年もセールが始まると同時に詳しい内容が公開されました。
クリスマスマーケットに行けない代わりに
ドイツの最大イベントであるクリスマスの買い物も、毎年ブラックフライデーと同じころから盛り上がりを見せます。その盛り上がりは、オンライン上だけではありません。街中のショップに張り出されるブラックフライデーのポスターや、きらびやかなクリスマスマーケットに、大勢の人々が引き寄せられるのです。
しかし、コロナ禍が落ち着きを見せている日本とは違い、ドイツでは11月に入ってからまたコロナ感染者が急増しています。感染拡大が一向に収まらないため、2021年の街の様子は昨年と同様にコロナ禍前とは異なりました。人々が2年ぶりの開催を心待ちにしていたクリスマスマーケットも、南ドイツなど一部の都市部では開催直前になってからの中止が決まったのです。
クリスマスマーケットの開催が叶った都市でも厳しい「2Gルール」規定が導入され、例年のような混雑は見られず少し寂しい光景です。2Gルールとはワクチン接種者、または感染からの回復者のみが訪問や入店できる規定で、ドイツではほとんどの都市のクリスマスマーケットやレストランで適用されています。ショッピング店舗にはまだ適用されていませんが、ブラックフライデー当日にも街の中は比較的閑散としていました。
12月に入り、オミクロン株の感染が世界中に拡大する中、ドイツはワクチン未接種の人を対象にしたロックダウン(都市封鎖)を発動。ブラックフライデーやクリスマス商戦時期であるにもかかわらず、街には以前のような賑わいが消えた一方、ドイツ人の多くはオンラインで買い物を楽しんでいると思われます。ブラックフライデーの売り上げは、来年さらに増えるかもしれません。