ワールド
2021/7/5 18:15

「ゲルマン魂」の新たな象徴! ドイツで若年層に大人気の「キャンピングカー」を詳しく解説

これまでドイツでは、キャンピングカーの旅は、時間に余裕がある高齢者や年金生活者向けのレジャーだと考えられていました。しかし、2019年に同国最大の市場調査機関が行なった調査で、「5年以内にキャンピングカーでの旅行をしてみたい」と答えた人の約56%が18~44歳であることが判明。最近では、新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、若い世代の間でキャンピングカーの購入意欲が高まり続けています。

 

新型コロナで加速

↑ミニキッチン装備のVW「カリフォルニア6.1・ビーチ・キャンパー」(写真提供/フォルクスワーゲン)

 

世界各国で、他人と接触することなく屋外を安全に旅する方法としてキャンピングカーが人気を集めていますが、ドイツも例外ではありません。

 

キャラバン産業協会の統計によると、2020年のキャンピングカーやトレーラーハウスの新車販売台数は10万7203台と、2019年と比べて32.6%も増加。特にキャンピングカーは前年比44.8%増の7万8055台と大躍進を果たしています。

 

コロナ禍が続く2021年もこの人気は衰えを知らず、4月の新車販売台数はキャンピングカーが前年同月比92.7%増の8510台、トレーラーハウスは同50.6%増の2588台と、それぞれ驚異的な伸びを見せました。

 

ドイツ人はもともと旅行やアウトドア活動が大好きな国民で、リフレッシュすることがその後の仕事の生産性にもつながると考えています。「旅行のために仕事をするのではなく、仕事を精力的にこなすために旅行に行く」という考え方です。

↑筆者の家の近くにあるキャンプ場にはキャンピングカーが押し寄せている

 

ドイツでは有給休暇の次年度繰越ができないこともあり、ほとんどの人が有給休暇を使い切ります。取得時期は職場で調整し事前に決めるので、予定が変わることはほとんどありませんが、コロナ禍では感染状況が変われば、予約をキャンセルしなくてはなりません。そのため、最近では事前予約が必要な海外旅行などを敬遠し、自由な国内旅行を選ぶ動きが増えています。

 

ドイツは言わずと知れた自動車大国。市場調査会社スタティスタが2020年に発表した調査結果によると、マイカー所有率は69%、通勤通学の自家用車使用率は63%、旅行にクルマやキャンピングカーを使用する人の割合は61%と、クルマは社会に深く浸透しています。そのうえ、通行料無料の高速道路アウトバーンが国内をくまなく結んでいるので、長距離ドライブも苦になりません。

 

2021年のキャンピングカートレンド

↑ポップアップルーフが付いたメルセデスベンツ「マルコポーロ・ホライゾン」(写真提供/ダイムラー)

 

このような背景があり、ドイツの若い世代はコロナ禍でも比較的安全なうえ、確実に旅行できる方法としてキャンプを選び、キャンピングカーを購入しているのです。また、2020年7月から12月まで景気対策として消費税が19%から16%に減税されたので、その恩恵にあやかろうとキャンピングカー購入に踏み切った人も少なくなかった模様。この動向は現在も続いており、若い世代向けの小型バンが2021年のトレンドになっています。

 

若年層には家を購入している人が少なく、都会に住む傾向がありますが、大都市ではアパートやショッピングモールの駐車場に高さ制限があり、駐車スペースも限られます。しかし、開閉可能なポップアップルーフ付き小型バンなら、車高制限をクリアすることができるうえ、特別な駐車場の確保が不要。日常的な使い勝手も良いなど、実用性を兼ね備えているのが人気のポイントです。

 

また、キャンピングカーの関連商品として、クルマの屋根に設置できるルーフテントも人気を集めています。これならクルマにポップアップルーフが付いていなくても、追加の就寝スペースを車上に確保することができます。ドイツのアパートには大抵「ケラー」と呼ばれる各部屋専用の地下収納室があるので、使わないときはコンパクトに折りたためば収納場所に困る心配もありません。

 

人気が高いキャンピング小型バンの車内

↑VWのカリフォルニア6.1・ビーチ・キャンパーに搭載されているミニキッチン(写真提供/フォルクスワーゲン)

 

ドイツの若い世代で人気が高いキャンピング小型バンを具体的に見てみると、フォルクスワーゲン(VW)の「カリフォルニア6.1」というモデルの「ビーチ・ツアー」と「ビーチ・キャンパー」、メルセデスベンツの「マルコポーロ」というモデルの「アクティビティ」と「ホライゾン」の4車種が挙げられます。

 

若年層にとってのキーポイントは、充実した装備よりも日常的な使いやすさ。「キャンプに行くときは、車内スペースに必要な道具を積めばよい」という合理的な考え方が重視されているため、この4車種には本格的なキッチンが付いていません。フルキッチンを搭載した場合、車内が狭くなるため、中で移動しにくかったり容量が減ったりするうえ、重量が増すので燃費も悪くなります。

↑カリフォルニア6.1・ビーチ・キャンパーの広々とした車内(写真提供/フォルクスワーゲン)

 

VWのビーチ・ツアーとビーチ・キャンパーの共通点は、縦200cm×横120cmのマットレス付きポップアップルーフや、車外で使える折りたたみ式のテーブルと椅子2脚(バックドアに収納可能)、回転式の運転席と助手席などが標準装備されています。両者の違いは、ビーチ・ツアーはスライドドアが左右両側に付いているため、人の出入りや荷物の出し入れがスムーズにできるのがポイント。それに対して、ビーチ・キャンパーは折りたたみ式のステンレス製作業台と1口ガスコンロのミニキッチンが搭載されており、折りたためば側面に収納することができます。

 

その一方、メルセデスベンツのアクティビティとホライゾンには、縦205cm×横113cmのマットレス付きポップアップルーフや、回転式の運転席と助手席などが標準装備されています。前者は商用車バンを、後者はミニバンのVクラスをベースとしていますが、両者ともキッチンがありません。必要最低限の装備で車内スペースを広くとっているのが、この2台の特徴です。

↑メルセデスベンツのマルコポーロ・アクティビティのポップアップルーフ内部(写真提供/ダイムラー)

 

この4車種の中ではマルコポーロ・アクティビティが最も価格が低いのですが、それでも税込価格4万9990ユーロ(約661万円※)と、若い世代にはとても高額です。それでもドイツ人には「長く使うことを前提に多少高くても納得できるものを購入する」という傾向があり、特にクルマに関しては頑丈で長持ちすることが絶対条件。「高価でも修理しながら何十年と使えば、長い目で見ると経済的」という考え方が強いとされています。この意味で、キャンピング小型バンは“ゲルマン魂”の新たな象徴と言えるかもしれません。

※1ユーロ=約131円(2021年7月2日時点)

 

↑マルコポーロ・アクティビティの車内は少しシック(写真提供/ダイムラー)

 

筆者が住むノルトライン・ベストファレン州では、2021年5月半ばに条件付きでキャンプ場が解禁されました。自宅に近い川岸のキャンプ場は、すでに多くのキャンピングカーで溢れています。今後はドイツの若い世代でも「バン・ライフ」という価値観が広く定着するかもしれません。

 

【画像ギャラリー】