映画やドラマに立て続けに主演し、第13回TAMA映画賞最優秀新進女優賞を受賞。2021年は自身にとって飛躍の年となった今注目の俳優・伊藤万理華さんにインタビューしました。演技だけでなく、芝居やアート、ファッションといった分野でも、乃木坂46時代から非凡なセンスを発揮してきた伊藤さん。そのルーツに迫っていきます!
【伊藤万理華さん撮りおろしカット】
“実はカルチャーにあふれていたんだ!”と今さらながら気づきました(笑)
──多趣味であることでも知られる万理華さんですが、そのルーツというと?
伊藤 私の場合はまず、育った家庭の影響が大きかったと思います。親の好きな服やインテリアを当たり前のように見てきて、そのお下がりをもらうことも普通で。私自身も、自然とそうなっていった感じです。
──ご実家には、具体的にどういうものがあったんですか?
伊藤 何て言ったらいいのかな…服や家具に限らず、多分においとか全体的な雰囲気が独特だったと思います。部屋にお香が焚かれていて、「サンダーバード」や「レン アンド スティンピー」の曲がずっと流れている…みたいな。映画だったら「ギャラクシー・クエスト」とか「オースティン・パワーズ」の映像がずっと流れていたりして(笑)。アニメや漫画は父親で、映画は母親の趣味なんですけど、そういったものを私も面白いと認識するようになりました。
──好きなデザインや色に関しても、家族の影響が大きいですか?
伊藤 そうですね。バンダナとかでよく見る「ペイズリー柄」も小さいころに既に認識していましたし、好きな色も小学生あたりから紫とカーキで。小学生でカーキを知っているって面白くないですか?(笑)
──小学生でカーキはあまり聞かないかもしれませんね(笑)。
伊藤 雑誌も、家にあった「装苑」とかをパラパラめくっていました。親がよく海外の本を取り寄せていたんです。ファッション誌もそうですし、フランスのインテリアをまとめたカタログみたいなものもありました。あと家にミシンの部屋があって、いろいろな色の糸やビーズがたくさん置いてあって。そういうちょっとした雑貨みたいなものが私にはお宝で、特別なものに見えたんですよね。
──そういう小物類は今でも好きですよね。
伊藤 よく集めています。石もそうですし、のみの市で売っているようない古い雑貨や、アクセサリーとか。
──そういうコレクションから、アートが好きになっていくのでしょうか?
伊藤 絵を描くことのほうが先に好きになりましたね。それが私の最初の趣味で、常に紙とペンを持ち歩いていたと思います。昔から好奇心旺盛で情報量の塊みたいな子だったので、好きな柄や漫画をまねして描いたりしていました。自分が得た情報はとにかく何かにアウトプットしたいという気持ちがあって、絵にしていたんだと思います。
──それは誰かに見せるというわけではなく?
伊藤 見せることはなくて、自分の中で完結させていました。人に見せるようになったのは、小学校に入ったあたりです。小学校って、絵を描く子ってクラスに1人いるじゃないですか。委員会のポスターとか文集の表紙とか、そういうのを全部描いていました。中学校の時もそうでしたね。小・中学生の私は、親のお下がりの服を着て、絵を描いて、みんなに「何これ?」って言われることが一番の喜びでした(笑)。あとは、クラシックバレエをやっていたので踊ることも好きでしたけど、今振り返ると昔からいろいろなことをしていましたね。
──最近、趣味に関してはどうですか?
伊藤 ファッションに関してはもうずっと好きで、切り離せないものになっていますね。あと最近ハマってきているのが音楽と映画です。最近、人から薦められた作品が実家に昔あった…っていうことがよく起きるんですよ。“私の家って、実はカルチャーにあふれていたんだ!”と今さらながら気づきました(笑)。それで懐かしくなって、まさにさっきお話ししたような昔の音楽や映画に、今夢中になっている自分がいて。親に連絡して、「昔聴いていた、あの曲のタイトル何だっけ?」って聞いて、CDを買って聴いたりしています。
──アニメや映画を見返すことも?
伊藤 「レイ&スティンピー」は何で昔ハマっていたんだろうと思って、買い直して見返しました。あと父親が昔「エヴァンゲリオン」シリーズが好きで、兄がその影響を受けていたんです。私は当時そこまで興味がなかったのですが、今見たら完全にハマってしまって。今では兄のことを理解できるようになりました(笑)。
──やっぱり家系なんでしょうね。
伊藤 同じ血が流れているということなのかなって。アイドル時代もいろいろな経験をさせてもらう中で、好奇心をどんどん刺激されて。その中で一番惹かれたものが映像の世界でした。よく考えたら、自分が演じる側として表現するということは、クラシックバレエから始まったことでもあって。私の場合、そうやって趣味や好きなものの延長が今に全部繋がっているんですよね。
興味を持ったものに対して、手放さないようにすることが大事
──無駄がない人生ですね。
伊藤 “無駄にしたくない”という思いがあったのかもしれません。例えば“これは私が知らないとダメだ!”と直感で思ったことがあったら、その専門書を買うんです。すぐには読まなくても、手元に置いておきたいんですよね。服に関しても、“これは私が着なきゃダメだ!”みたいな謎の使命感にかられる時があって(笑)。お気に入りのブランドのヴィンテージものの服を探して、コレクションすることもありますし。自分が興味を持ったものには、とことんのめり込んでしまう性格だと思います。
──その趣味を分かち合える人と出会うことも?
伊藤 この前、漫画家の大童澄瞳さんと「石」をテーマに対談させていただいたんです。こういうお仕事をしてないとそういう機会ってなかなかないと思いますし、ありがたいなって。ちょっとでも興味を持ったものに対して、手放さないようにするということが大事かなと思います。見ていないもののほうがまだまだ多いので何とも言えないんですけど、私は多趣味と言ってもひと言では言い表せない性格だと思います(笑)。
──これからもどんどん趣味が増えていきそうですね。
伊藤 きっと増えちゃいますね。アンテナを張りすぎちゃって、もうパンクしているぐらい(笑)。特に2021年は、お仕事でワクワクすることが多くて。自分が体験したり、人と話したりする中で“これが好きだ!”と思う瞬間がたくさんありました。例えば“どうして私、エスニックな料理が好きなんだろう?”というところから、気づいたら現地の民族衣装を調べていて。お祭りの衣装やお面などが載った写真集を買ったりして…楽しいという気持ちが止まらないんですよね。
──どちらかと言うと、新しいものより古いものに興味がいく感じでしょうか?
伊藤 そうかもしれないです。自分が育った環境に気づいてからは、特にそうですね。家にあれだけのお宝があったのに、子供のころの私は名前も知らなくて。もしあの時そういったものとちゃんと向き合っていたら、どれだけよかったんだろうと後悔したんです。
──でも、向き合っていなくても、知らない間に根付いていたとも言えるわけで。
伊藤 そうですね。いつの間にか染みついていたものをちょっと剥がして、あらためて外側からのぞいているような感じかもしれません。音楽だけでなく、図鑑とかもそうですね。恐竜が絶滅していなかったらどうなっていたか…という、架空の世界が描かれた本があるんです。これも、ある方から薦められたのですが、家にあったんですよ。しかも兄が持っていたのが悔しくて…(笑)。
面白いと感じていただけるのならぜひ!
──すべての原点は悔しさなんですね(笑)。
伊藤 そうなんですよ! “これだけ家族や周りのみんなが知っているのに、自分はどうして知らなかったんだ!”という悔しさです。一体何と闘っているんだっていう…(笑)。いや、決して闘っているわけではなく、自分の中に引き出しをどんどん作っているような感じですね。
──もしまた新しい趣味ができたら、熱い思いを聞かせてください。
伊藤 本当ですか? 多分、無限に出てくると思いますよ(笑)。でもこうやって自分の趣味を話す機会はなかなかないので、うれしいです。誰が聞きたいのかなと思うところもありますけど、面白いと感じていただけるのならぜひ!
──最後に、年始ということで2022年の抱負をお願いします。
伊藤 決まっているもので言うと、映画「もっと超越した所へ。」ですね。原作・脚本の根本宗子さんとは2019年の舞台「今、出来る、精一杯。」で出会って、翌年の「もっとも大いなる愛へ」にも出演させていただきました。監督の山岸聖太さんは、グループ時代に何度もお世話になった方で。このゴールデンコンビで制作される映画なので、出演させていただけるだけでうれしいですし、この作品も自分にとって大きな転機になりそうな予感がしています。
──金髪のビジュアルが早くも話題になっていますね。
伊藤 はい、ギャル役なので(笑)。今回は今までの作品とは、全く違うアプローチで演じさせていただきました。共演の皆さんも熱い方ばかりで、すごく楽しい撮影でした。たくさんの方に見ていただけたらと思っています。
『もっと超越した所へ。』
2022年公開予定
出演:前田敦子、菊池風磨、伊藤万理華、オカモトレイジ、黒川芽以・三浦貴大、趣里、千葉雄大ほか
原作・脚本:根本宗子
監督:山岸聖太
製作:「もっと超越した所へ。」製作委員会
公式HP:https://happinet-phantom.com/mottochouetsu/
(撮影/中村 功 取材・文/橋本吾郎 ヘアメイク/外山友香(mod’s hair) スタリング/小山田孝司 衣装協力/kotohayokozawa)