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2022/1/16 17:30

パーツを組み替えて最適化! お馴染みのシャーペン「Dr.グリップ」の重心と重量をカスタムできる新モデルの仕組みを詳説

「低重心」が、2021年下半期の文房具トレンドワードだった。これまで、文房具マニアしか気にしてこなかった“筆記具の重心バランス”が、ここまでフィーチャーされるとは。300円帯ボールペンをはじめ、重心バランスをポイントにした製品が立て続けにここまで発売されるとは。なんとも驚かされたものである。

 

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正直なところ、見た目のデザインやインク色と違って、筆記具のバランスというのは実際に手に持って書いてみないと分からない。体感的というかフィジカルな部分であるため、作り手であるメーカーや我々のような紹介記事を書く側も、その利点を伝えるのがなかなか難しいのだ。

 

……というのは、単に文房具ライターとしての愚痴であって。一人の文房具好きとしては、重心バランスが筆記具の良さを語る論点としてあらためて持ち出されたことは、素直に嬉しいのである。書き味を構成する上で、とても重要なパラメータなのだし。

 

そこで今回は、そんな重心バランスがテーマの新しいシャープペンシルを紹介したい。

 

重心のポイントと重量を自分で決められる「ドクターグリップ CL プレイバランス」

パイロット「Dr.Grip(ドクターグリップ)」は、2021年に発売から30周年を迎えた。人間工学に基づいた握りやすい太軸+疲労を軽減するシリコングリップの組み合わせで、発売当時から現在までずっと高い人気を誇るシリーズだ。

 

ここで新たに登場したのが、グリップに重心位置変更ギミックを搭載したシャープペンシルモデル「ドクターグリップ CL プレイバランス」である。

パイロット
ドクターグリップ CL プレイバランス
0.3mm/0.5mm
各770円(税込)

 

基本的には、筆記具は低重心の方が安定して書きやすい。確かに、高重心(ペン後端に重みが片寄っている)では、ペン先がふらついてコントロールしにくかったり、長時間筆記で疲労が出やすかったりというデメリットはある。

 

とはいえ、低重心でも先端だけが重すぎるようだと、これはこれでコントロール性が下がるし、疲れも出る。また、個人それぞれのペンを持つ好みの位置というのもあって、これが重心的にバランスの良いところと一致するとは限らない……こういう部分が難しいのだ。

 

「だったらもう各々が好きに調整すればいいじゃん」というのが、重心位置変更ギミックというわけ。

 

グリップの内部構造とカスタマイズの仕組みは?

↑重心位置変更ギミックの核となる金属パーツ×3とシリコンパーツ×3。これを本体に3つ組み合わせて装着する

 

「ドクターグリップ CL プレイバランス」は、グリップが二重構造になっている。まず表面にあるのがシリコン製の外グリップで、これはペン先を外して下に引っ張ると、簡単にスポッと抜ける。その際に外グリップの中に残っているのが、内グリップパーツ。購入時はシリコンパーツ×1と金属パーツ×2の構成になっているはず。

 

この計3つの内グリップパーツの順番と組み合わせを変更することで、重心位置がカスタムできる仕組みなのだ。

 

↑シャープペンシルは重心が低すぎないほうが好みの筆者は、前にシリコン×1、後ろに金属×2の構成がお気に入り

 

最初から軸に搭載されているのに加えて、パッケージ内にはシリコンパーツ×2と金属パーツ×1も同梱されている。つまり各素材とも3つずつパーツが揃っているので、これを組み合わせてみよう。

 

まず、最も重くなるのが、当然ながら金属×3の組み合わせ。金属パーツは1つあたり約2.9gでシリコンパーツが約0.4gだから、シリコン×3の組み合わせよりも全体重量が約7.5g重くなる、という計算だ。

 

↑設定次第で重心位置・全体重量ともにかなり変わる。体感的にかなりの差を感じられるので、いろいろ試してみると楽しい

 

普通にずっしりしたペンが好き、という人であれば、シンプルに金属×3で解決だろう。重心位置も60mm以下で、この状態がもっとも低重心になっている。これでは全体的に重すぎるが、重心位置は低い方がいいというのであれば、前側に金属×1か2が良さそう。重心位置は1mmほど上がるが、かなり軽く動かせるようになるはずだ。

 

パーツ交換の手順は?

↑パーツ交換は、まず口金を外すところから。下向きに作業しないとタンク内の芯が軸内に落ちるので、そこは注意だ

 

↑あとは外グリップごとスポッと抜く。中のパーツはトントンと衝撃を加えれば取れる

 

↑装着時は先にパーツを軸に通してから、外グリップ・口金の順で戻す

 

パーツ交換は、まず口金をねじって芯タンクごと引き抜く。あとは外グリップを引き抜けば、内グリップパーツもそれについて抜けるはずだ。外グリップ内に残ったパーツは、口を下に向けて何度か軽くトントンと机に落とせば、順番に落ちてくる。奥の方にあるシリコンは摩擦でなかなか取れないかもしれないが、無理せず根気よくトントンするのがコツ。

 

装着する際は順番に軸側にパーツを差し込んで、外グリップを被せればOKだ。

 

グリップの重心と重量を変えるとどんな変化があるのか

↑重心が移動すると、筆記角も変わる。まずは自分がどういう握りで、どういう角度で書くのがラクか、を考えたい

 

重心位置が変わると、握りやすい位置も変わる。であれば当然の話、筆記角度も変わってくる。低重心で低い位置を握ればより紙に対して立った状態に。高重心で高い位置を握れば寝た状態になるというわけ。つまり重心位置は「自分はどういう角度で筆記するのが快適か」を考えながら調整すると、目安が付けやすい。

 

ちなみに、一般的にシャープペンシルは50~60度で書くのが正しいとされているが、それも絶対的な正解と言うわけではない。あくまでも、自分の書きやすさを中心に考えるべきだろう。

↑上下に振ると内蔵のオモリが移動することによって芯を出す“フレフレ機構”。ノックするたびに集中力が途切れる、という人にもおすすめ

 

シャープペンシルそのものの機能としては、やはりパイロット自慢のフレフレ機構がとてもありがたい。ノックノブを押さずに軸を上下に振るだけで芯が出るため、筆記時の芯の継ぎ足しが一瞬で済み、快適。一度これに慣れてしまうと、もうフレフレ機構のないシャープペンシルを使う気になれないほどに便利なのである。

 

自分にベストな重心バランスさえ確定できれば、このフレフレ機構の快適さと相まって、長時間の筆記もかなりスムーズにできるはずだ。

 

 

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