伊吹有喜氏の同名小説を映画化した『今はちょっと、ついてないだけ』(4月8日(金)公開)で、過去に脚光を浴びたネイチャリング・フォトグラファーを演じた玉山鉄二さん。「もう一度、人生をやり直そう」と、シェアハウスでの生活をスタートさせる40代の元カメラマンを演じた玉山さんに、作品への意気込みや現場でのエピソードをお伺いしました。また、玉山さんの家電に対する熱いこだわりも。
【玉山鉄二さんの撮りおろし写真】
道の真ん中ではなく、端を歩いているような、どこか愛おしいキャラクター
――本作の出演を決められた理由は?
玉山 日本の社会って、一回ミスしたら這い上がるのが難しいし、なかなかセカンドチャンスを与えてもらえないような気がしていました。特にコロナ禍になったことで、さらに40代以上がリスタート切るのがしんどかったり、諦めてしまったりすることが明確化されたと思うんです。そんななか、僕はこの作品に関わることで、そういう人たちにもう一度スイッチを入れ直したり、新しいことに取り組んだり、もっと向上心を持てるように、背中を押せる存在になりたいと思いました。
──玉山さんと同じ40代の立花という役を、どのように捉えて、役作りされましたか?
玉山 立花は誰もが持っている要素がある人間。なので、そこを増長させながら、希望の光があった20代の時とは違って、道の真ん中ではなく、端を歩いているような、どこか愛おしいキャラクターにしていきたいと思いました。個人的にドキュメンタリーのような人間のえぐみや本質を見ることが好きなので、そういうふうに映ればいいと思いつつ、独特な緩さを出すことで、観る方にほっこりしてもらいたいという気持ちもありました。
──そんな立花がシェアハウスで共同生活する、音尾琢真さん演じる宮川や団長安田さんが演じる会田との空気感や距離感については?
玉山 20代が集まるキラキラした群像劇とは違って、「言わなくても分かりますよ」という気遣いだったり、励まし合う時の言葉がちょっと恥ずかしくなる感じだったり、どこか生々しさを出すようにしました。各地での撮影でしたが、あえてお互いあまり関与しなかったですね。コロナ禍ということもあり、撮影後に一緒に食事する機会などなかったので、僕は各地でサウナばっかり行っていました。そこでサウナ好きな団長さんとお会いすることが何度かありましたが(笑)。
手作り感みたいなものが、とても心地良かった
──音尾さん、団長さん、瀬戸役の深川麻衣さんらシェアハウスのメンバーとのエピソードを教えてください。
玉山 音尾さんとはクルマの話やキャンプの話をしました。とても変わっている方で、長野ロケの時では前乗りされて、一人キャンプされていたそうなんです。団長さんはCM、朝ドラに続き、3度目の共演でした。初日に緊張されていたのか、芸人役なのに、妙にカッコつけられたんですよ。なので、めちゃめちゃイジり倒して、ほぐしてあげました(笑)。深川さんが1人だけおじさんたちに囲まれていたので、できるだけおっさん感を出さないように、気を付けながら探り探り……。そのため、あまりしたこともない料理の話をしていました(笑)。
──本作は共同製作事業体として、千葉県茂原市・長野県千曲市・愛知県幸田町・長崎県島原市がクレジットされていますが、ロケ地での思い出は?
玉山 この映画はいわゆる大作ではないこともあり、各地の役所の方がいろいろとご協力してくださったんです。この作品が良くなるための手作り感みたいなものが、とても心地良かったですね。デビュー直後の現場のような懐かしさもありましたし。また、カヌーをするシーンがあり、撮影前日に練習したんですが、僕のだけ、浮力が少ないのにスピードが出るプロ仕様だったことも印象深かったです。
──立花はカメラマンという設定だけに、カメラの持ち方や動きについてはいかがでしたか?
玉山 立花が趣味ではなくプロとしてカメラをやっているので、ファインダーをのぞく際の持ち方やしぐさ、いつでもスッと立てるように片膝を立ててしゃがむといった動作などについて、現場に付いてくださったプロのカメラマンさんに逐一チェックしてもらっていました。
各メーカーさんの特色を把握しつつ、下調べして掘り下げる
──話は変わりますが、玉山さんは家電や電化製品がお好きだと伺いました。
玉山 テクノロジーというか、新しいモノ好きで、「ここまで進化したんだ!」「昔はこんなんじゃなかったぞ!」ということを感じたいんです。特にTVとレコーダー、あとは白モノ系。また、有線からWi-Fiで飛ばすようになって、アンプが必要なくなったスピーカーにもハマっていました。あまり買い替えとかはしないのですが、自分でチョイスする際、ミスジャッジをしたくないので、各メーカーさんの特色を把握しつつ、いろいろなサイトで下調べして、掘り下げることが当たり前になっています。さすがに家電芸人さんほどは詳しくないですが、友達には「何でも知ってるね」と言われます(笑)。
──最近、現場に持っていく電化製品はありますか?
玉山 ゴルフを一緒にやっている人から勧められたマッサージガンは、ちょっとスゴすぎてハマっています。ここ最近リチウムイオン電池の性能が上がりすぎたことで、小さいサイズでも実現できたと思うんですよね。あと、最近買ってスゴいと思ったのは、スコープ付きの耳かき。あれもWi-Fiで飛ばして、耳の中を見るんですけれど、お値段が安くて驚きました。今はエアコンもWi-Fiと繋がってるし、家の鍵もスマホと連動しているので、いろいろと目が離せませんね。
今はちょっと、ついてないだけ
2022年4月8日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次公開
(STAFF&CAST)
原作:伊吹有喜「今はちょっと、ついてないだけ」(光文社文庫・刊)
監督・脚本・編集:柴山健次
出演:玉山鉄二、音尾琢真、深川麻衣、団長安田(安田大サーカス)/高橋和也
(STORY)
人気カメラマンとして脚光を浴びるも表舞台から姿を消した立花(玉山)はある日、シェアハウスで暮らし始めることに。そこには、失職した元テレビマン・宮川(音尾)、求職中の美容師・瀬戸(深川)、復活を望む芸人の会田(団長安田)ら不器用な人々がいた。ゆったりとした時間が流れる中、彼らは“心が本当に求めるもの”を見つけ出そうとする。
【映画「今はちょっと、ついてないだけ」よりシーン写真】
(C)2022映画『今はちょっと、ついてないだけ』製作委員会
撮影/干川 修 取材・文/くれい響