乗り物
クルマ
2022/4/19 19:15

太陽光×カーシェアはじまる!広島に登場した「世界初」のソーラーカーポートの正体

脱炭素化が急務な昨今、再生可能エネルギーが注目を集めています。その代表格のひとつが太陽光発電。太陽光発電といえば、家屋や工場などの屋根にパネルを設置するイメージが強いかもしれません。しかし今回紹介するのは、駐車場の屋根で発電を行い、電気自動車を充電するソーラーカーポートです。

 

日本ではまだそれほど馴染みのないソーラーカーですが、これを普及させるための実証実験が広島県で始まっています。世界初の取り組みも行われているという、その現地を取材しました。

 

太陽のエネルギーだけで車を走らせる「完全自立型」ソーラーカーポート

↑広島県に新たに登場した「完全自立型ソーラーカーポート」。広島県立広島産業会館の駐車場に設置されています。車種は、左からMAZDA MX-30 EV MODEL、日産リーフです。日産リーフから運用を始め、調整が済み次第MAZDA MX-30も加わる予定

 

今回紹介する新型ソーラーカーポートのポイントは2つあります。それが「完全自立型」「EVシェアリングサービスとの連携」です。この2つを兼ね備えるソーラーカーポートは、世界でも初となります。

 

●「完全自立型」ソーラーカーポートとは

従来のソーラーカーポートでは、太陽光だけで十分な発電量が得られない場合などのために、通常電源との接続がされていました。つまり、そこに駐車されている自動車の電源は、100%太陽光由来のものではない可能性がある、ということです。しかし、完全自立型ソーラーカーポートは通常電源に接続しておらず、電力供給の観点で文字通り「自立」しています。まだ設置されたばかりで、実証実験段階ではありますが、再生可能エネルギー普及の確実な一歩となる試みといえます。

 

●EVシェアリングサービスとの連携

すでに、普及しているカーシェアリングサービス。これと同様に電気自動車をシェアするのが、EVシェアリングサービスです。今回登場した完全自立型ソーラーカーポートは中国電力が提供するEVシェアリングサービス「eeV」と連携し、広島県の公用車として活用するほか、地域住民への貸し出しも行います。

 

↑ソーラーカーポート正面の表示板には、現在の発電量などがリアルタイムに表示されます

 

完全自立型かつ、EVシェアリングサービスと連携したソーラーカーポート設置が実現した裏には、3つの企業の連携と、広島県の熱意がありました。その企業とは、中国電力、パナソニック、AZAPA。広島県を含む4者の役割は、おおまかに下記の通りとなっています。

 

  • 広島県:実施場所の提供、EVシェアリングの法人利用、EV普及のための政策面での支援
  • 中国電力:今回の試みの中核。実証実験の企画・運用、EVシェアリングサービス「eeV」の提供
  • パナソニック:ソーラーカーポートの開発・提供
  • AZAPA:通常電源から自立した状態での蓄電・制御システム、可搬型蓄電池システムの開発、自動車以外のモビリティをソーラーカーポートに対応させるための検討
↑ソーラーカーポートのオープン式典には、広島県の湯崎知事、中国電力の清水社長が参加。テープカットも行われました。両者の力の入れようが感じられます

 

↑AZAPAが開発した、ソーラーカーポート併設の可搬式バッテリー。これのおかげで、自動車以外のモビリティにもソーラー電源を活用できます

 

EVシェアリングで、地域住民もソーラーカーのレンタルが可能に!

今回設置されたソーラーカーポートには3台ぶんの駐車スペースがありますが、運用されるソーラーカーは日産・リーフ1台。今後、2台目として、MAZDA MX-30 EV MODELもそこに加わる予定です。平日には広島県が自治体の公用車として利用するほか、民間企業・中電工も法人利用をすることになっています。

 

しかし、法人としての利用が行われるのは平日のみ。つまり、休日の利用枠が空くことになります。そこで今回の実証実験では、休日の利用枠を地域の住民向けに開放することになりました。一般開放は5月以降とのことですが、EVシェアリングアプリ「eeV」から予約が可能になる予定です。

 

住民向け利用枠の価格は、15分220円と一般的なカーシェアリングと同程度に設定されています。利用枠が設けられるのは土日祝日のみではありますが、枠が空いている限り、長時間のレンタルが可能です。ただし、設置されている車はハイブリッド車ではないため、バッテリーが切れた場合の給油はできません。今回の実証実験で使用される日産・リーフは、バッテリー容量40kWhのフル充電で約400kmの走行ができますが、長距離を走る場合は注意が必要です。

↑駐車スペースの後部下には、15分220円の表示があります

 

また、今回のソーラーカーポートには、8機の可搬式バッテリーも装備されています。1機ごとの充電容量はソーラーカーと比べると小さいですが、こちらは電動自転車や電動キックボードなどの小型モビリティへの利用を主に想定したものです。

↑可搬式バッテリーで動く電動自転車。ただし、今回の実証実験場には設置されません

 

5年間の実証実験中にも、ソーラーカーポートを増設する見込みアリ

今回のプロジェクトは、脱炭素化に熱心な中国電力が同様の試みを進める広島県に声をかけ、そこから6か月で形になったといいます。実証実験の期間は5年間ですが、パナソニックの担当者によれば、その間にも試行錯誤を続けながら、ソーラーカーポートの増設などの普及活動を続けていく見込みだそうです。

 

地球温暖化防止だけでなく、化石燃料の価格高騰への対応策という意味でも普及が待たれる太陽光エネルギー。その活用の一形態として、一般住民でも利用しやすいEVシェアリングサービスがさらに普及することに期待しましょう。

 

【現地アクセス情報】

広島県立広島産業会館

広島県広島市南区比治山本町12-18