乗り物
2022/10/19 20:45

次世代型シニアカー「WHILL Model S」に試乗!運転免許返納後の近距離型モビリティとしては最適だ

次世代型電動車椅子を手掛けるWHILLは9月13日、“歩道を走れるスクーター”と銘打った「WHILL Model S」を発表し、同日より先行受注を開始しました。価格は21万8000円(非課税、送料調整費別)から。デリバリーされる時期を店舗に問い合わせたところ、2022年12月頃を予定しているとのこと。

↑「WHILL Model S」。カラーはオプションのガーネットレッド

 

自由に出かけたくなる伸びやかなデザインを採用

高齢化社会が急速に進む中で、自動車運転免許を返納する人の割合も高まっています。WHILLによれば、ここ数年は返納率は収まっているものの、それでも年間60万人前後が返納しているとのこと。返納するとその後の“足”をどう確保するかが課題となります。

 

これまでは電動アシスト自転車やシニアカーなどが候補となってきましたが、前者はバランスの取り方に不安が残り、後者は介護用としての印象が強いのが正直なところです。そうした概念を打ち破るべく登場した近距離モビリティが「WHILL Model S(以下Model S)」なのです。

↑サイズは全長119㎝×全幅55.3㎝×全高92㎝。カラーはオプションのラピスブルー

 

Model Sが持つ最大のポイントは、電動車椅子としてはかつてない優れたデザインを実現していることにあります。従来よりも全長を長めにし、それに伴ってホイールベースを延長しています。加えて車体重量を従来のWHILL製品よりも重い63kg(バッテリーあり)とし、これがロングホイールベースとも相まって、クルマのような感覚で乗れる高い走行安定性をもたらしたのです。

 

これまでシニアカーといえば、あくまで足腰が不自由な人の乗り物という印象が強く、そのため車輪を小さくして乗降性を重視したデザインとなっていました。しかし、それが却って乗り物として軽快感に欠けるデザインとなり、運転免許を返納した人が直後に乗るには抵抗を感じる人も少なからずいたようです。

 

その点でModel Sは車輪を大きめにし、ハンドルとつながるカウル部分も自転車のような細めのデザインとすることで、電動アシスト付き自転車を4輪にしたようなデザインとしました。そんなスタイリッシュな乗り物で、いつでも思いついたところへ自由に出かけられる、Model Sからはそんな開発意図が伝わってくるのです。

↑「WHILL Model S」は、免許なしで誰でも乗れる

 

特に違いを実感させるのが操作系です。WHILL社プロダクト・サービス企画室の赤間 礼さんは「長年クルマを運転して来た人にも違和感なく乗れるよう、操作系には徹底してこだわった」と話します。そのこだわりとはクルマやスクーターのハンドルをイメージした横に長い楕円状のステアリングです。これにより、電動車椅子のイメージを一新しようというわけです。

 

切れ角が大きいハンドル操作は狭いところで楽に扱える

実際に試乗してそのフィーリングを試してみましたが、違和感なく運転できる扱いやすさには驚きました。曲がるときはクルマやスクーターと同じように、このステアリングを少し傾けて前輪を操舵します。また、ステアリングの切り角はとても大きく、最小回転半径は148cmとなっていて、これなら狭い通路でも簡単に方向を変えられそうです。

↑ハンドルをイメージした横に長い楕円状のステアリングを採用

 

前進と後進はステアリングの中央にあるシーソー式レバーを使って行い、右側の「D」を手前に引けば前進、左側の「R」を手前に引けば後進となります。注目なのはこのシーソー式レバーの「D」と「R」が1本のシャフトでつながっていること。つまり、いずれかを手前に引くともう一方は必ず奥側に傾きますから万一の誤操作も防止できるというわけです。

 

しかも、このレバーは引きしろに余裕があって、微調整も簡単。ゆっくりとした速度で走るのもできますし、大きくレバーを引けば速度は上がっていきます。一方で、レバーを離せばすぐにブレーキがかかり、操作パネル上にあるダイヤルを設定しておけば不用意に速度が出てしまうこともありません。この安心感は大きいですね。ちなみに最高速度は前進が6km/hで、後進が2km/hとなっています。

 

走破能力もWHILL全モデル中、ナンバーワンの実力で、最大登坂能力は10°、路面の段差は最大7.5cmまで対応できるとのこと。車体重量が63kgもあるModel Sにとって、この対応は頼もしい限りです。歩道といっても様々なシーンが想定されますし、一度でもスタックを体験すると、次はどうしても億劫になってしまいますからね。このあたりは電動車椅子で経験が深いWHILL社ならではの配慮だと思いました。

↑最大7.5cmの段差も乗り越えられる高い走破性を持つ。カラーはオプションのシルキーブロンズ

 

↑ヘッドライトやテールライトを装備し、夜間でも走行できる

 

電源はクルマのエンジンをかけるように鍵を挿して回せばすぐに起動します。走行可能距離は33km(満充電)と長めの設定ですが、キーホールの下には充電口もあり、万一、電欠となった場合もすぐに対応できます。また、バッテリーは脱着可能なので、自宅に持ち込んで充電できるのも便利だと思いました。ただ、鉛バッテリーを採用したことで重量は15kgもあります。この重さを運ぶのは高齢者にとって少々キツイかもしれませんね。

↑ステアリング下に用意された電源キーと充電用端子

 

↑バッテリーは着脱式だが、重量は15kgと高齢者には少々きつい

 

Model S専用プランとして「WHILL Premium Care」を用意

ボディカラーは、ステアリングシャフトとなる部分に計4色を用意しています。基本カラーのアイコニックホワイトに加え、オプションカラー(1万5000円・非課税)のシルキーブロンズ、ガーネットレッド、ラピスブルーの3色を揃えます。ちなみに、これまでWHILLではボディカラーをホワイト、レッドというふうに呼んでいましたが、この呼び方はまさにクルマ風。ここにもクルマを長く乗ってきた人をターゲットにしたことが伝わってきますね。

↑ボディカラーは4色。手前からアイコニックホワイトに加え、オプションカラーのシルキーブロンズ、ガーネットレッド、ラピスブルー

 

そして、Model Sだけのサービスとして「WHILL Premium Care」が用意されました。これは保険やロードサービス、メディカルアシストがセットになった「WHILL Smart Care」と、本人と家族がスマホアプリ上で車体の居場所や状態、お出かけ記録などの外出情報を共有できる「WHILL Family App」をパッケージ化したものです。これによって本人と家族が常につながるようになり、大きな安心感につながることを狙っているそうです。

↑Model Sだけのサービス「WHILL Premium Care」が用意された

 

この料金は2万6400円(税込)【月あたり2200円(税込)】でサービスインは2023年1月を予定。なお、このサービスを利用するにはIoTモジュール「WHILL Premium Chip」【別売2万5000円(非課税)】を装備した車体をあらかじめ選んでおく必要があります。

 

 

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