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2022/10/29 20:45

合弁会社「ソニー・ホンダモビリティ」がスタート。第一弾はエンタメ重視の高付加価値車

ソニーとホンダによる合弁会社「ソニー・ホンダモビリティ」が10月13日、新会社設立記者会見を開催し、新会社として今後の方向性や商品計画が明らかになりました。そこでは新会社として今後の方向性や商品計画などが説明され、両社による新たなモビリティがいよいよ動き出すことになったのです。

 

すべては2020年1月に登場した『VISION-S』がきっかけ

↑ソニーがEVコンセプトとして発表しているSUVの「VISION-S02」(左)と、「VISION-S01」(右)

 

振り返れば、ソニーがEVコンセプト『VISION-S』を発表して世間を驚かせたのが、2020年1月に米国ラスベガスで開催されたCES2020でのことでした。この時は予告なしで公開されたことに加え、そのあまりに高い完成度から「ソニーがEV(電気自動車)を発売するのか?」「日本版テスラになるのか」などと、騒然としたのを思い出します。

 

その後、ソニーはコロナ禍でオンライン開催となったCES2021で、欧州を舞台にテスト走行する映像を公開。VISION-Sが単なるモックアップでないことを映像を通して訴え、“ソニー製EV”の誕生への期待はますます高まったのでした。

 

そして、2022年1月、事態は大きく動きます。ソニーはその第二弾「VISION-S02」を発表し、その席上でソニーの吉田憲一郎CEOが2022年中にもEVの販売を検討する新会社「ソニーモビリティ」を設立すると宣言したのです。

↑2022年1月に開催されたCES2022では、ソニーの吉田憲一郎CEOが2台のEVコンセプト「VISION-S」を前に、ソニーとしてEVの市場投入計画を宣言した

 

そして3月、新たな発表が再び世間を騒がせました。なんとソニーとホンダが新たな合弁会社を2022年中に設立し、電気自動車(EV)の共同開発と販売、モビリティ向けサービスの提供について共同で事業化することを発表したのです。この瞬間、それまで噂ばかりが先行していた“ソニー発のEV”がいよいよ現実味を帯びることとなったのでした。

 

2025年前半にオンラインにて受注開始。デリバリーは翌2026年から

↑新会社設立の目的について、そのコンセプトについて説明したソニー・ホンダモビリティ代表取締役 会長 兼 CEOの水野泰秀氏

 

では、10月13日の新会社設立記者会見で明らかにされたのはどんな内容でしょうか。まず明らかにされたのは今後の行動計画です。それによると、ソニー・ホンダモビリティが第一弾車両を発表するのは2025年前半で、同時にオンラインでの受注を開始します。そして2026年春に北米でデリバリーを開始し、日本国内向けには2026年後半を予定。その先には欧州での展開も視野に入れているとのことでした。

 

生産はまず北米で行い、状況次第では日本での生産もあり得るとのことです。ただ、ソニー・ホンダモビリティはいわゆる企画会社であって、生産はすべて本田技研工業に委託する形となるため、本田技研工業の生産計画に左右されるとのことでした。

 

気になるのは発売される車両の概要でしょう。会見に登壇したソニー・ホンダモビリティの代表取締役会長兼CEOの水野泰秀氏は、「ソニーが培ってきたネットワーク技術やエンターテイメント性を備えたかつてない高付加価値のクルマ」であると説明しました。個人的には、ソニーでいえば“ウォークマン”的な、ホンダで言えば“HONDA e”的な、よりカジュアルなモビリティの誕生を期待していましたが、そうではないようです。

 

むしろ、エンターテイメント性に高付加価値を求めるのであれば、それこそソニーが提案してきた『VISION-S』シリーズがそれに近い形なのかもしれません。VISION-Sにはダッシュボードの左右いっぱいにビルトインされたディスプレイ、360リアリティオーディオを組み込んだシートが組み込まれていました。それはまさに“動くAVルーム”そのものです。

 

走行中でもエンタメが楽しめる自動運転レベル3に対応

↑第一弾は「ソニーのエンターテイメント性を加えた高付加価値のモビリティになる」と説明するソニー・ホンダモビリティ代表取締役 社長 兼 COOの川西泉氏

 

一方、ホンダには世界で初めて自動運転レベル3の認証を受けた技術があります。レベル3を実現していれば、渋滞中などの一定条件内の利用にはなりますが、運転中にディスプレイを凝視しても構わなくなります。つまり、この組み合わせこそがソニー・ホンダモビリティが目指す“高付加価値なモビリティ”の一つの形と言えるのではないでしょうか。

 

ソニー・ホンダモビリティの代表取締役社長兼COOの川西泉氏は、自動運転のレベル3やレベル2+についても言及し、その実現のために「800TOPS以上(1秒当たり800兆回以上)の演算性能を発揮する高性能SoC(System on Chip)を採用する」と説明していました。このスペックから自動運転の性能を推察するのは困難ですが、少なくとも言及する以上は相応の高性能を発揮する状態でリリースされるのは間違いないでしょう。

 

会見が終わり、あとは記念写真かと思った時、ステージ上のスクリーンに浮かび上がったのは「January 4, 2023 in Las Vegas」の文字。これは年が明けた1月4日より米国ラスベガスで開催される「CES 2023」を指していることは明らかです。これまでソニーはこのCESでVISION-S関連の重要な発表を行ってきただけに、おそらくソニー・ホンダモビリティによる第一弾が披露されるのかもしれません。そんな期待を抱かせ、この日の会見は終了しました。

 

「ソニーモビリティ」としての別の展開はあるのか?

↑会見終了後、改めて握手を交わして記念写真に応じた川西COO(左)と水野CEO(右)

 

ただ、会見で明らかにされていない件が残っています。それは2022年1月にソニーの吉田CEOが発表した「ソニーモビリティ」の具体的な行動計画に対する言及は一切なかったこと。実は3月に行われたホンダとの合弁会社設立発表の際、吉田CEOは「ソニーが提供するサービスのプラットフォームをホンダ車以外の自動車メーカーにも使ってもらうこと」と発言していました。これはもしかしたら、別ブランドでの展開も視野に入れているということなのでしょうか。

 

ただ、それでもソニーが独自に展開することはないでしょう。生産を委託するにせよ、家電メーカーが自動車の販売を独自に進めることはリスクが大き過ぎるからです。あくまでエンターテイメント性を極めたプラットフォームの提供だけにとどめ、いわゆる“Sony inside”みたいな展開が インフォテイメントシステムなどを通して発展していくのではないかと考えます。

 

このあたりを担当者に尋ねてみましたが、「現状では発表できるものは何もない」とのこと。もし、ソニーのプラットフォームがホンダ車以外で展開されるのであれば、個人的にはここでこそウォークマン的なモビリティを期待したいところです。いずれにしろ、まずは来年のCES2023での展開に注目していきたいと思います。

 

 

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