グーグルが最新のWear OS 3.5を搭載する「Google Pixel Watch」(以下、Pixel Watch)を発売してから約1か月が経ちました。今回は、Apple Watchユーザーの目線にも立ちながら、グーグル初の純正スマートウォッチをチェックしてみたいと思います。
軽くて装着感は快適
Pixel Watchは直径41mmの正円形ステンレスケースに、有機ELタッチディスプレイを搭載するスマートウォッチです。参考までにApple Watch Series 8の45mmモデルを並べてみました。Pixel Watchとデザインは異なりますが、りゅうずやサイドボタンの配置、着脱できるバンドなど使い勝手に関わる仕様には多くの共通点があります。
【外観フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】
質量36gの本体はとても軽く、装着感はかなり軽快。睡眠トラッキングもあまり負担を感じることはないと思います。
電池持ちは24時間だけど、たまに消耗が早い?
共通点は多いとしましたが、Apple Watchを長く使っている筆者から見て、Pixel Watchはふたつの点で使い勝手の違いを感じました。ひとつはバッテリーのスタミナで、もうひとつはワークアウトの記録です。
グーグルはPixel Watchが最大24時間のバッテリー持ちを確保したと伝えています。Apple Watch Series 8は通常使用の場合で最大18時間なので、バッテリーはPixel Watchの優位点といえそうです。実際の印象としては、平均すると朝起きてから、夜寝る前に充電するまでバッテリーは持ちます。
ただ、ときどき思いのほか早く消耗することも。バッテリーに負荷をかける使い方をしているとすれば、GPSも活用するエクササイズによる使用ですが、家にほぼ1日中こもって原稿を書いている日に、気が付けばバッテリーが早く減っているときもあります。こうしたバッテリーが早く消耗するときの条件はまだ特定できていません。
ひとつ言えることは「常に画面をON」にする機能を有効にするとバッテリーの減りは明らかに早くなります。ウォッチの設定から「電池」を選択して「バッテリーセーバー」をオンにすると、「常に画面をON」と「傾けて画面をON」にする機能を簡単に無効化できるので、対策は可能でしょう。
Pixel Watchはワークアウトを自動で記録してくれる
もうひとつの違いであるワークアウトの記録について、Apple WatchではwatchOS 5以降から、ウォッチがワークアウトを記録するかどうかユーザーに確認してくれる通知機能を搭載しています。ランニング/ウォーキング/サイクリングなど全9種類のワークアウトに対応。ワークアウトの終了通知もアラートしてくれるので、記録ミスを回避できる頼もしい機能です。正確なワークアウト記録ができると健康増進のモチベーションも持続するでしょう。
一方のPixel Watchにも一部のワークアウト(ウォーキング/ランニング/野外サイクリングなど)を一定時間実践した場合、これを自動認識して開始から終了までの成果をFitbitアプリに記録できる機能があります。ワークアウトしているつもりのないウォーキングも記録されますが、全体に自動検出・記録の精度は高いと思います。
なお、アクティビティや睡眠に関する時系列のデータをチェックするためにはFitbitアカウントを作って、Pixel Watchアプリからログインする必要があります。
Apple Watchとの違いは、ワークアウトの開始と終了を通知する機能がないことです。定期的に250歩以上のウォーキングをリマインドする「運動促進通知」の機能はありますが、同じ通知でも意味合いは少し異なります。
Pixel Watchは心拍数の測定と記録も常時バックグラウンドで行います。つまり、ワークアウトや心拍をユーザーに意識させず、自動で記録するわけです。ワークアウトの通知をしてくれるApple Watchに対して、自動記録するPixel Watchのコンセプトは好き嫌いがわかれるところかもしれません。
Fitbitアプリとの連携が便利、特に睡眠トラッカーは優秀
Pixel Watchは睡眠トラッカーとしても便利なデバイスです。冒頭でお伝えしたように、眠りながら使うことに負担が少なく、装着感が心地よいことに加え、Fitbitアプリも優秀に感じます。
Pixel WatchからFitbitアプリにログインすると、アプリから睡眠ステージや睡眠スコアの詳細なデータを見られるので、睡眠の質にも意識を高めることができます。現在はグーグル傘下のパートナーであるFitbitは、ブランドの誕生後から約14年の間に睡眠に関連する多くのノウハウを蓄積してきました。データの精度は世界の著名な学術機関や企業がリファレンスとして参照するほど、高い信頼を得ているといいます。このノウハウが、Pixel Watchとアプリによって見られる詳細なデータにつながっているわけです。
ただし、Fitbitの最新スマートウォッチ「Sense 2」や「Versa 4」であれば、1か月間に渡ってデバイスが記録した睡眠データを元に、ユーザーの「睡眠プロフィール」を生成できますが、Pixel Watchではこの機能が使えないので注意が必要です。
Pixel Watchは通信や決済で有利、Fitbitはヘルスケア系が強い
では、Pixel WatchとFitbitの最新スマートウォッチで悩む場合、どちらを選ぶべきなのでしょうか。まず、FitbitのスマートウォッチはiPhoneとの組み合わせに対応しています。血中に取り込まれた酸素のレベルを測定する血中酸素ウェルネス、不規則な心拍の通知などをしてくれるヘルスケア系、あるいは睡眠トラッキングの機能もFitbitのデバイスがより充実しています。
一方で、LTE通信にFitbitのデバイスは対応していません。加えて、独自のFitbit Payによるタッチ決済には対応していますが、使えるデビットカードやサービスがまだ限られています。
その点、Google Payに対応するPixel Watchの方がもう少し融通が利きます。ただ、Pixel WatchのSuicaがスマホのモバイルSuicaよりも使い勝手に制約がある(定期券・Suica グリーン券・おトクなきっぷは非対応。JRE POINTからのチャージは不可など)点には気をつけたいところです。
ヘルスケア機能に特化したFitbitと、LTE通信や決済に利点があるPixel Watch。スマートウォッチで優先すべきポイントを考慮したうえで、この違いを把握して選ぶと失敗がなさそうです。
手軽に試せる完成度の高いスマートウォッチ
Pixel WatchはKDDIとソフトバンクが4G LTE対応モデルを取り扱っています。4G LTE+Bluetooth/Wi-Fiモデルの価格は4万7800円(税込)。参考までにApple Watch Series 8の41mm/Wi-Fi+Cellularモデルは7万4800円(税込)です。
Wi-Fi/Bluetoothのモデルであれば3万9800円(税込)から買えるので、Android 8.0以上を搭載するAndroidスマホをお持ちの方は気軽に試せるでしょう。
たとえば、BluetoothイヤホンをペアリングしてYouTube Musicアプリで音楽コンテンツを聴いたり、サムスンがWear OS向けに提供するブラウザーアプリを使ってYouTubeをPixel Watchで再生しながら、ラジオのように音声を聴いたりして楽しめます。
LTEに対応していると、さらに使い勝手の幅は広がります。Pixel Watchは日本語入力に対応するソフトウェアキーボードを搭載。メッセージやメール系アプリの本文を正確にタイピングできるので、LTE対応モデルであればスマホを持たず近所に外出しても、不意を突く連絡に応答ができて便利です。
当然、YouTube MusicやYouTubeのコンテンツは事前に転送することなく楽しめるので、利便性の高さを感じられます。
iPhoneユーザーにも魅力的なPixel Watchになってほしい
課題があるとすれば、Pixel WatchがiPhoneとの組み合わせでは使えないこと。Apple WatchもAndroidスマホに対応していないので「おあいこ」なのですが、後発のPixel WatchがApple Watchに対抗してシェアを伸ばすために、今後は「iPhoneでも使えるPixel Watch」になることが不可欠です。
もうひとつ、Pixel Watchをフォーマルな装いにも合わせやすいエレガントかつ親しみやすいデザインにまとめたところはさすがグーグルですが、腕時計としての存在感はやや物足りなく感じるところもあります。高級腕時計メーカーであるタグ・ホイヤーやモンブランなどが、グーグルのWear OSを採用するハイエンドスマートウォッチを既に発売しているので、このあたりとうまく組み合わせられるといいのかもしれません。
さらにPixel Watchシリーズに活路があるとすれば、やはりFitbitとのコラボレーションによる便利なヘルスケア・フィットネス機能が使えるところだと筆者は考えます。カジュアルに楽しめるスポーツ系のPixel Watchが充実してくれば、Apple Watchにとって強力なライバルになりそうです。
いずれにせよ、Pixel Watchの初代機が好調に立ち上がり、今後もシリーズとして継続するのであれば、さまざまなバリエーション展開にも期待できると思います。
【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】